大金星

三題噺
『相撲、勝ち負け、星』


何本かの記事について題名を変更した。
せっかくなので積極的に記憶の方を改竄していきたい。

以前、オセロの遊び方について言及させてもらった。
本心では、64−0の完封以上に33−31の2石勝ちを求めてしまう。
本音は最後まで遊んでいたい。
囲碁で言うところの整地を数え終わる瞬間まで、遊んでいたいのである。
(漫画『ヒカルの碁』で登場した、陣地改竄のイカサマおじさんも本来の実力を自分自身でごまかすという意味で良いと思う、おじさんらしい生き方がある)

子どもとのしりとり遊びをイメージしてもらいたい。
ここでわたしが思い描く完封勝ちは、とにかく同じ文字を相手に使わせる遊び方だ。
しりとりの「り」、リンボー、ボウリング、グラボ、ボラ、ラボ、ボス、すぼ、ボレーシュート、トンボ、僕、窪、ボボボーボ・ボーボボ……ボルボ。

「る攻め」なる必勝法はある。
楽々勝てる、「る」から始まる言葉群のプール、コールルールもどうなるかを聞いてはいる。
でも、その子がどんな単語(とある人は辞書と明示した具合に)を使うのか、覚えたのか、知るのか、あの子とどんなしりとりで遊んで欲しいのか、そんなことばかり常日頃に思い描くのだ。
ナポレオンさんとのしりとりで「不可能」を言わせたいがために、わたしは「ふ攻め」を選ぶのだ。

「フランス語には不可能を指す言葉が無いんですよ」
ナポレオンさんが明かす。
それならわたしは、「よ」で始まり「ふ」に終わる養父のヨセフあたりで様子を見やうと思ふ。
「ふ、はもう私の辞書には無いんすよ。不十分です」
ナポレオンさんとわたしは一礼を交わした。
「ありがとうございました」と締めくくられた。


これだけ均衡の拮抗に信仰をおこうとも、大相撲の15日制であれば話は変わってしまう。
8-7よりも15-0、それどころか白鵬の60連勝超えも諸手を挙げて手放しに喜ぶ。
拍手を打って握手を求める。
手と手を合わせていただいてしまう。
ごっつぁんです。
それどころか。
最早伝えたい体裁も伝わって欲しい前提も、何もかもを取っ払って深掘りすると、ルールが8勝先取だった場合では8勝0敗の完勝ではなくて8勝7敗を望む。
これらはどういうことなのだろうか。

相手を重んじているのだと思う。
100%を出し切れた相手を上回りたい。
そういうことだと思う。
相手の100%を受け止めたら101%でも120%でも200%でも良いから全力で迎えたい、ということだと思う。
それを超えては102%に、121%に、201%に。
限界を超えた相手に、「負けました」と頭を下げる。

「Inadéquate(不十分)」を告げたナポレオンさんと、わたしは一礼を交わして、メルシー、メルシーボクゥと締めくくるのだ。
これは、もう、題名どおりの大金星だ。


『金星』
女王蜂



ありがたうございます。
次回予告にござります。

20190912『酒と
20190913『酒と宴
20190914『他家

『ボレロ』
『アラセツ』
『恋話』

ボレロ、アラセツ、恋話

八月踊り回をお楽しみください、それではまた明日。


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