キングオブコント2023ファイナリスト決定。地味な顔ぶれだが、大会の最高値を更新する可能性は高い

 キングオブコント2023。10月21日(土曜日)に行われる決勝戦を戦うファイナリスト10組が、今週水曜日に大会公式サイトで発表された。その栄えある顔ぶれは以下の通りだ。

 ゼンモンキー、隣人、ファイヤーサンダー、カゲヤマ、サルゴリラ、ラブレターズ、蛙亭、ジグザグジギー、や団、ニッポンの社長。

 順当か波乱かと言えば、決勝進出者の選出は概ね順当だったと言えるだろう。ファイヤーサンダー、カゲヤマ、ジグザグジギー、ニッポンの社長。少なくとも筆者がファイナリストから絶対に外せないと思ったグループは、漏れなくしっかりと選ばれたという感じだ。個人的にはそれなりに満足度の高い顔ぶれと言ってもいい。

 とはいえ、それでも準決勝視聴後にこちらが予想した決勝進出者の的中率は、10組中の5組に止まっている。予想の半分は外れてしまったわけだが、それでも特段こちらが落胆することはない。もちろん他にも決勝で見たかったグループが何組かいたことは確かだが、お笑いとは元来そういうものだと、少なくとも僕はある程度割り切っているつもりだ。
 人によって、審査員によって、それぞれ価値観や趣味は異なる。ネタの優劣を示す客観的なデータがあるわけでもない。誰を選ぶかは、大袈裟に言えば個人の好みだ。選ぶ人が変われば、少なくとも半分くらいメンバーは入れ替わる。そうした魑魅魍魎とした奥深さがお笑いの魅力であり、こうした賞レースの結果が読みにくい大きな要因のひとつだと思う。

 僕のファイナリストの的中率は5割(5組)だったとは先述したが、とはいえ、今回予想を外したその5組の顔ぶれに滅茶苦茶驚かされたかと言えば、実際はそうでもない。ゼンモンキー、サルゴリラ、ラブレターズ、蛙亭、や団。この5組が筆者が予想した(前回のこの欄で記した)10組のリストに入れていなかったグループになるが、いずれのグループも準決勝ではそれなりにウケていた印象は強く残っている。個人的な好みであえて予想リストからは外したが、少なくとも(選ばれそうな)可能性だけはたっぷり残していた。今回のファイナリストの選出が概ね順当に見えた大きな理由と言ってもいい。

 前回も感じたことだが、今回もファイナリストのなかにそれこそ別格というか、俗に言う大ブレイク中の芸人は特段見当たらない。強いて挙げるなら、今回のファイナリストのなかで最も知名度が高そうに見えるのは、男女コンビの蛙亭だろうか。だがその蛙亭とて、活躍が目立つようになったのはここ2,3年の話だ。いまや全国クラスの売れっ子芸人ではあるが、例えば霜降り明星やマヂカルラブリーのような、そこまで圧倒的な存在というわけでは全くない。なんとなく実力よりも話題性のほうが先行している面もなきにしもあらず、だ。

 そんな蛙亭の次に知名度が高そうなのは誰か。こう言ってはなんだが、蛙亭以外で全国的に高い知名度がありそうなファイナリストが見当たらない。今回で4年連続4回目の決勝進出となったニッポンの社長はそれなりに顔は知られているとは思うが、その全国的な知名度は決して高くないのが現状だろう。蛙亭に及ばないことはもちろん、それなりのお笑い好き以外で彼らの名前を知っている人がはたしてどれほどいるか、怪しい限りだ。

 今回で4年連続の決勝進出となるニッポンの社長がそのレベルの知名度であれば、その他のグループは推して知るべしというか、当然さらに低いと考えるのが自然だ。
 今回が2016年以来7年ぶりの決勝進出となったのは、ジグザグジギーとラブレターズ。ジグザグジギーは2013年と2016年に次いで3回目、ラブレターズに至っては2011年、2014年、2016年に次ぐ今回が4回目の決勝進出となる。大会の形式が現在の仕様に変わる前(2014年以前)の決勝の舞台を踏んだ経験を持つ、お笑いファンにとってはある種の懐かしさを感じる顔ぶれである。だがそんなジグザグジギーやラブレターズとて、その存在が知られているのはそれこそある程度のレベルのお笑いファンに限られているはずだ。これまで複数回以上、決勝に進出しているにも関わらず、その知名度は正直驚くほど低い(かつてのキングオブコントへの注目度がとりわけ低かった証といっても過言ではない)。
 
 残るファイナリスト経験組、や団も同様。その知名度は決して高くない。昨年に続いての決勝進出、しかも3位と言う好成績をあげながらも、その名前は知る人ぞ知る域にとどまってしまったのが現実だ。だが今回、幸運にも昨年に続いてや団は大きなチャンスを得ることになった。そうした意味でもその活躍ぶりにはとりわけ注目したい。

 ニッポンの社長、や団といった、記憶に新しい前回のファイナリストでさえ知名度はこの有様だ。それを踏まえると、今回決勝戦初出場となる5組(ゼンモンキー、隣人、ファイヤーサンダー、カゲヤマ、サルゴリラ)の知名度は、おそらくほぼゼロに近いのではないか。日頃からそれなりにお笑いに目を通していない限り、彼らの存在を認識することは難しいだろう。

 前置きが長くなったが、では、そんな知名度が限りなく低そうな顔ぶれで行われる今回のキングオブコント決勝がつまらなさそうかと言えば、答えはノーだ。むしろその逆。前回もそうだったが、こうした比較的地味な顔ぶれが多いときほど大会のレベルは高くなる傾向が強い。
 近年のお笑い賞レースの直前に毎度述べていることだが、当然ながら、今回も期待値は滅茶苦茶高い。ひょっとしたらそれは個人的には過去ダントツかもしれない。

 歴代最高得点が出るのではないか。大袈裟ではない。お世辞抜きにそう思う。
 ファーストステージ(1本目)の歴代最高得点は2021年の空気階段が叩き出した486点。合計得点の歴代最高は2022年のビスケットブラザーズが記録した963点。この2つの記録が今回更新されるかどうかはわからないが、可能性は高いと僕は見る。そして現行の審査方法になってからは過去にまだ誰も記録したことのない「99点」以上をつける審査員が今回現れるのではないか。発生確率はおよそ40%。個人的にはこの「99点」以上をお目にできる可能性が最も高いと踏む。

 なぜそんなそんなことが言えるのかといえば、準決勝でその可能性を感じさせるネタを目撃してしまったからに他ならない。それも1組ではない。前回のこの欄でも述べたが、最高値更新の可能性を感じさせたのは、ジグザグジギー、カゲヤマ、ニッポンの社長、この3組になる。もう少し具体的に言えば、ジグザグジギーの準決勝2日目、カゲヤマの準決勝1日目と2日目、ニッポンの社長の準決勝1日目と2日目のネタ、となる。とりわけ彼らの爆発力は凄まじかった。決勝当確はもちろん、優勝の二文字さえ浮かんできそうな、それこそ圧倒的な破壊力を見るものに見せつけた。

 ジグザグジギー、カゲヤマ、ニッポンの社長。この3組がいわゆる「3強」、今大会の優勝候補だと筆者は考える。この3組がいったいどの順番で登場するか。そしてどちらのネタを先に披露するのか。彼らの登場順が今大会の行方を左右する。できれば後半の6、8、10番辺りに1組置きで見てみたいとは個人的な願望である。

 仮にキングオブコントが競馬なら、筆者ならこの3連複(ジグザグジギー、カゲヤマ、ニッポンの社長)を狙うだろう。逆に言えば、この3組以外から優勝者が生まれるとすれば、僕的にそれは驚きに値する。だが、あながちそれが起こらないとも言い切れない。何を隠そう、前回の決勝でビズケットブラザーズがあれほどの高得点を叩き出すとは正直露も思わなかった。準決勝で彼らのネタにしっかりと目を通したつもりだったが、優勝はおろか決勝進出さえ難しいとは、1年前の準決勝を視聴した直後のこちらの見解だった。

 期待度の低いグループのネタが予想外にハマることもある。そう思わされたのが、前回のキングオブコント2022決勝だった。
 誰がハマるかわからない。そうした視点で見ると、途端に自信は揺らいでくる。どのグループも不気味な存在に見えてくるから不思議だ。「もしかしたら蛙亭の優勝もあるかも」とか、「ラブレターズが意外とハマるかもしれない」といった、余計な雑念が次々と浮かんでくる。

 今回のファイナリスト10組の中で一番の若手と呼べるのは、ワタナベエンターテインメント所属のゼンモンキー(2020年結成)。今大会唯一のメンバー全員が20歳代のグループでもある。逆にその他の9組は、いずれもがすでにその芸歴は10年を超えている。今回のファイナリストは全体的に知名度が低い芸人が多いためか、どことなく「世代交代」を感じている人も結構いるが、よく見ると実は意外とベテラン揃い。戦いのレベルが高かった理由をそこに見る気がする。
 ちなみに今回のファイナリストのなかで最年長、並びに最もベテランのグループは、今年で芸歴20年目を迎えた幼馴染コンビ、吉本興業所属のサルゴリラになる。両者ともに今年で44歳。今大会はもちろん、大会記録を更新する過去最年長のファイナリストである。

 地味な顔ぶれながら、案外ベテラン多数となった今回のファイナリスト。実力派ながら知名度が限りなく低い顔ぶれで争われる決勝戦は、例年以上に審査員の好みが結果に反映しそうだ。いずれのグループもそれぞれ持ち味は違う。独自の「色」で溢れている。はたして前回を超える大会のマックス値の更新はあるのか。決勝戦が楽しみだ。

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