ラヴィット!出演者を独自の視点で寸評してみた(4) 〜木曜レギュラー編〜

・NON STYLE    石田明 (吉本興業)

 木曜ラヴィットの兄貴分。その立ち位置は水曜の柴田英嗣(アンタッチャブル)とやや似ているが、柴田がMC川島より先輩及び他事務所(プロダクション人力舎)の芸人であるのに対し、石田は同じ吉本興業所属のいわゆる直属の後輩だ。その芸歴も川島と近く、若手時代は大阪での関わりも多かった馴染みの深い存在だ。そうした意味では柴田よりも金曜レギュラーのくっきー!(野性爆弾)のほうが存在的には近いかもしれない。
 コンビでは言わずと知れたM-1グランプリ2008の王者。漫才ではボケを担当するコンビの頭脳(ネタ作成者)だが、このラヴィットにおいては彼自ら積極的にボケるという機会はそれほど多くない。役割的にはほぼツッコミだ。番組内で起こる突飛な出来事に対して即座にツッコミを入れる、いわば影のMC役。最後尾からMC(川島)の手が届かないところをサポートできる頼れる存在。そんな感じだ。
 そんな石田には芸人としてではない、レギュラーとして選ばれるに相応しいもうひとつの顔も存在する。双子を含む3人の子を育てる父親、いわゆるイクメンとしての側面だ。芸人としての人気も含め、朝の情報番組にはまさにもってこいの人物。思わずそう言いたくなる。
 他のベテランや後輩の若手らとは違い、石田は決して派手な活躍が目立つというタイプではない。それでも番組全体のバランスを見れば彼の存在は効いている。白い衣装がトレードマークだが、安定感抜群のコメントで番組を下支えする優れた黒子役。たまに呼ばれる相方(井上裕介)も含め、レギュラーとして外せない、置いておきたい存在だと思う。

・ギャル曽根(ワタナベエンターテインメント)

 筆者が彼女の姿をテレビで初めて目にしたのは、かれこれ15年以上も前の話になる。テレビ東京で当時よく放送されていた大食い番組。その当初はまだ“ギャル曽根”ではなかった。曽根菜津子という、大食いが得意ないわゆる素人。タレントではなくキャラのある一般人としてテレビに出演していた姿はいまもこちらの記憶に鮮明に残っている。
 水曜日のダウンタウンをはじめ、いまやフードファイターこと大食い系タレントがテレビで活躍する姿をそれなりに見かけるが、ギャル曽根さんはその先駆者、いわば走り的な存在だ。「大食いタレント」として、これまでで最も成功した人物。現在に至るまでの活躍を見ると、迷わずそう言いたくなる。
 「大食い」というジャンルが一時テレビでブームとなったのは2007年前後。それはギャル曽根さんが一般人からタレントへと転向した時期とほぼ同じだ。当時数々のバラエティ番組に出てはその食いっぷりで周りの出演者たちを驚かせていた姿が思い出される。その年(2007年)の新語・流行語大賞で「大食い」がトップテンにノミネートされた際には栄えある受賞者に輝くなど、いわゆる時の人だったわけだ。だが、それから15年以上が経ったいまなお、彼女がタレントとして一定以上の活躍をし続けると予想した人は当時どれほどいただろうか。
 流行語大賞にノミネートされたり、一時急に取り上げられたりする人や物の場合、熱が冷めるのも早いというか、ブームはすぐに去っていく場合は数多い。その当時テレビでの露出が目立った大食いタレントはギャル曽根さんだけではもちろんない。有名どころではジャイアント白田さんなどをはじめ、その他にも確実に何人もいた。だが時が経ち大食いブームが下火になるにつれ、彼らの姿はいつしか見かけなくなっていく。ギャル曽根さんもその中で自然に消えていくものと思われた。
 ところが、そうはならなかった。大食い界から唯一、芸能界に生き残った人物。そう言い切ってもいい。その理由を探れば、ギャル曽根さんのタレントとしての魅力、および現在も活躍が続く多くの要因が目につくのだ。
 こう言ってはなんだが、本来ギャル曽根さんにタレントとして磨いてきた何かがあったというわけでは全くない。悪く言えば、元々は大食いが得意なただの素人。こういう人から「大食い」という魅力を取り除けば、残るものは少ない。他の大食いタレントと呼ばれる人は大抵そうなるわけだが、ギャル曽根さんは決してそうではなかった。ギャル曽根さんから「大食い」を除いても、他にも“武器”を持ち合わせていた。自らギャルと名乗る派手な見た目はもちろん、いまなおラヴィットで頻繁に流れる自身ほぼ唯一の持ち歌(ギャルル『Boom Boom めっちゃマッチョ!』)などもその大きな魅力のひとつと言えるだろう。
 大食いゆえ、料理をはじめとした食に関する知識に豊富そうなところ。また、現在は二児の母であり、夫は有名番組を手掛けるテレビマンであることなども、キャラと言えばキャラと言えるだろう。だがそれでも筆者がいま思う、あえて強調したい彼女一番の魅力はそこではない。「ギャル」の部分でも、「大食い」の部分でももちろんない。
 よく笑う。笑顔が似合う。ここまで活躍を続けることができた要因を考えたとき、その明るい人柄こそ実は一番にくるものではないか。少なくとも僕はそう思っている。大声を出して笑う彼女の姿はそれくらい印象的だ。
 ギャル曽根さんの特徴的な笑い方、その笑うシルエットから連想するのは、タレントの島崎和歌子さんだ。見た目は違うが、この方もギャル曽根さん同様、とてもよく笑う。憚ることなく大きな声を出して笑うその姿に、どことなく似たようなムードを感じるのだ。両者が長い間、芸能界で活躍ができている理由のひとつかもしれない。さらにこの流れでもう一人名前を挙げたくなるのは、モデルの佐藤栞里さん。いまや多くの人気番組のレギュラーを持つ売れっ子女性タレントのひとりだが、個人的に彼女の活躍が目立つのはなんと言っても「有吉の壁」(日本テレビ)になる。有吉弘行さんの横で常に明るく、そして大きな声で笑うその姿はとりわけ印象的だ。佐藤栞里さんの存在と「有吉の壁」の人気は深く関わっている。ネタの出来に関わらず、よく笑ってくれる人がいるだけで番組は自然と盛り上がる。その姿を見ていると、ギャル曽根さんがアシスタントを務める「有吉の壁」も見てみたい気がする。なんとなくハマりそうな気がするのは僕だけだろうか。
 いまや「ギャルでも曽根でもない」ことギャル曽根さんだが、このラヴィットとの相性はとにかく抜群にいい。ヒルナンデスでも活躍はできそうだが、川島や石田からイジられたりするなど、このラヴィットのほうがその面白さが断然活かされているとはこちらの感想だ。グルメ枠、女性(ママ)枠、さらには盛り上げ(お笑い)枠をも兼ね備えた、芸能界全体を見渡してもそう多くは見当たらない稀な存在。ラヴィットを観ていると、単なる大食いタレントには収まらなかった彼女がここまで生き残ってきた理由はとてもよくわかる。
 ギャル曽根さんをレギュラーに選んだのは大正解。活躍している本人はもちろん、彼女を抜擢したスタッフにも拍手を送りたい気持ちだ。


・ニューヨーク 嶋佐和也 屋敷裕政 (吉本興業)

 前回この欄で水曜レギュラーの見取り図について述べた際、僕は見取り図を7とすれば、ニューヨークは7.5だと書いた。
 番組が始まった当初はほぼ同じくらいのレベルに見えたこの2組だが、現在はニューヨークのほうが半歩程上回っているように見える。そう言いたかったわけだが、理由は両者の活躍度はもちろん、その活動内容というか、彼らが纏うムードを比較して個人的に感じたことになる。
 ざっくりといえば、余裕だ。見取り図(特に盛山)がいま現在が100というか、力一杯という感じに見えるのに対して、ニューヨークは70〜80。まだ底が見えないというか、余力を残しているというか、落ち着いているように見えるのだ。いまが旬な芸人にも関わらず、なんというか、どっしりと構えている。昨年キングコントやM-1への参加を見送ったことも、そうした余裕の表れのように僕には見える。少なくともこの先は無理に急いで売れようとはしていない。とりわけ最近のニューヨークは無欲というか、若手っぽくない大人の匂いを感じるのだ。
 もうひとつ違いを言えば、見取り図がいわゆるバリバリの関西系であるのに対し、ニューヨークはあえてどちらかと言えば、関東系。屋敷は三重県出身の関西系ではあるが、山梨県出身の嶋佐は関東系で、その出会い並びにデビューした場所は、どちらも東京だ。彼らのネタにどことなくお洒落な香りが漂う理由をそこに見る気がする。
 関西系か、関東系か。この色の違いは芸人にとってはとりわけ大きい。少なくとも僕はそう思っている。
 関西系の漫才師で、さらにはロケも得意そうなコンビ。そう言われて真っ先に想起するその代表格は言わずと知れた千鳥、かまいたちなどになるが、最近大阪から出てきた見取り図も当然、この路線上にいるコンビだと言える。それはすなわち、見取り図がいまより上に行くためには、千鳥・かまいたちに並ぶか、彼らを上回るようなそれなりの活躍が必要というわけだ。だが実際、いまの千鳥・かまいたちに並ぶのは決して容易ではない。見取り図がやや頭打ちに見えてしまう、これが大きな理由のひとつになる。
 一方のニューヨークも漫才師ではあるが、コントも得意とするいわゆる二刀流。そうした意味ではかまいたちと似ているが、先述の通りニューヨークはどちらかと言えば関東系になる。ニューヨークと芸歴が近そうな関東系の二刀流コンビ、そのライバルになりそうな芸人は意外にもそう簡単には見当たらない。強いてあげればマヂカルラブリーになるが、マヂカルラブリーとも少なからずキャラは異なる。ニューヨークがこの先進むであろう道とは、マヂカルラブリーは少し逸れたところにいる。何が言いたいのかといえば、今後ニューヨークが進みそうな道ですぐにぶつかりそうなライバルは、今のところは見当たらないということだ。それはすなわち、このまま独自のペースで歩んでいけば、その評価はこの先も自然と上がっていくことになる。さらば青春の光と似たような立場と言ってもいい。レベル8を超えるのかはわからないが、その可能性は少なからず高そうに見える。
 現在勢いのある後輩のコットンがニューヨークのライバルになるのかはわからないが、見取り図から見た千鳥のような、キャラが大きく被る直接的なライバルはいまのニューヨークの近辺にはあまり見当たらない。褒めすぎを承知で言えば、この先ニューヨークが歩みそうな道の一番先にいるのは、おそらくダウンタウンだと見る。MCとひな壇の中間的ないまのポジションからはたしていつ抜け出すのか。見ものだと思う。
 ラヴィットでの話をすれば、嶋佐がややイジられ系の役割を担い、その嶋佐を含む周りの人に屋敷が切れ味鋭いツッコミを入れるというのが、番組内での主な彼らのスタイルになる。なかでもとりわけ目立つのは屋敷のツッコミだ。同じく木曜レギュラーの石田とも役割は似ているが、屋敷のツッコミも先輩・石田に決して劣ってはいない。鋭利さや例えツッコミも含め、その腕はピカイチだ。屋敷、石田、そしてMCの川島を含め、木曜ラヴィットにはツッコミに優れた芸人が3人も揃っている。芸人ではないギャル曽根さんや横田真悠さんがバラエティ的にいい感じで活かされている要因でもある。
 芸人としての格や勢いでは、レギュラーを務める芸人のなかではおそらくニューヨークが一番高いと考える。芸人としてニューヨークがラヴィットを上回るのが先か、それともラヴィットが終わるのが先か。いい勝負ではないかとは個人的な見解である。
 

・横田真悠 (エイジアクロス)

 ドラマをあまり見ない筆者にとって、彼女の姿を見た(タレント・横田真悠を知った)のは、何を隠そう、このラヴィットが初めてだった。それなりにテレビには出演しているようだが、少なくとも僕はラヴィット以外の番組で彼女の姿を見たことがない。筆者がよく目にする(ラヴィット以外の)番組に横田さんは出演していないと言うべきか。つまりこれから記す横田さんについて言えることは、このラヴィットで見た印象がほぼ全てということになる。
 まもなく24歳を迎える、モデル及び俳優でもある女性タレント。期間限定のシーズンレギュラーやゲストのアイドルなどを除けば、レギュラーの女性タレントなかではほぼ唯一の若手だ(彼女の次に若いのは33歳の近藤千尋さん)。いわゆる可愛い系、キレイ系というわけだが、その活躍度と存在感は、正直なところレギュラーの女性タレントのなかでは最も低いとは、これまで2年近く継続的にラヴィットを観てきたこちらの率直な印象だ。
 その印象が薄い一番の要因は、独自のキャラがないこと。これに尽きる。他の曜日のレギュラーと比べるとわかりやすい。丸山桂里奈さん、ぼる塾、若槻千夏さん、矢田亜希子さん、近藤千尋さん。それぞれが強烈な個性や独特の匂いを放つ、キャラが際立ったタレントたちだ。一見キャラがなさそうな矢田さんにさえ、最近では「高貴キャラ」がつきつつある。モデルの近藤さんは芸人の妻らしい、少しはっちゃけたキャラクターが番組ではしっかりと根付いている。共演している夫(ジャングルポケット・太田博久)との夫婦ネタも鉄板だ。
 このメンバーのなかに入ると、横田さんの存在感はとりわけ弱く見えてしまうのだ。
 ルックス以外、特段これといった武器が見当たらない。モデルならそれで十分かもしれないが、このラヴィットレギュラーとしてはいささか物足りない。筆者がプロデューサーならば真っ先に手を加えたくなるところ、将来入れ替わりがあってもおかしくない枠に見える。
 若いので力量や活躍度で劣るのはしょうがないと言えばそれまでだが、例えば横田さんと同年代の伊原六花さん(全曜日でロケに出演するグランドスラム達成者)のほうが、少なくともキャラの濃さという点では横田さんを上回る。その頑張り次第ではもっと自分らしさ、存在感を出すことは十分可能。少なくとも僕はそう思っている。
 ひと言でいえば「地味」。華のある見た目ながら、芸風はあまりにも普遍的だ。ラヴィット以外の番組で目にする機会が少ない、これが理由ではないかと思う。はたして今後のラヴィットでどれほどその個性を発揮することができるか。それと彼女の活躍の幅とは深い関わりがある。筆者がその姿をラヴィット以外の場所で目にする機会が訪れることを期待したい。

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