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近自然森林業の先端「リューベック・モデル」 —自然にほとんど気づかれないくらいに自然を利用する

現在中欧の森林業で推奨され実践されている近自然的森林業は、古くは山奥の農森家や共有地森での択伐施業の実践などに起源があり、学術的にはおよそ100前に、メラーやガイヤーといったパイオニアが基礎をつくりました。

今日では、枯死木や倒木を意図的にそのまま残すなど、自然のプロセスを最大限に活かして、森の複合生態的なバイタリティとレジリエンスを高め、より一層、エコロジーとソーシャル、エコノミーのバランスが取れた森づくりへと進化しています。

その最先端を行くモデル森林が、北ドイツの港町リューベック市にあります。広葉樹主体の市有森で、近自然的施業を進化させた自然森施業が30年以上行われています。GreenpeaceやBUNDといった環境団体も称賛し、原生森のような空間で市民にも愛され、尚且つ経済的にも成功しているこの森林事業体の森林マネージメントは「リューベック・モデル」として有名で、世界中から見学者が訪れています。

この地のパイオニアは、ドイツ統一前の80年代半ばから2010年までリューベック市有森の署長として働いたルッツ・フェーザー博士(Dr. Lutz Fähser)。フェーザー氏が自然森施業(Naturwald-Bewirtschaftung)を始めたきっかけは、森林経営学に関する博士論文に取り組んでいるときでした。彼は次のように言っています。

「このテーマの研究をしていて気がついたことは、森林経営学でモデルや手法として教えられていることは、森の現実(実際)に合致していないということ。森はとても複合的で、まだまだ究明されていないことがたくさんあり、究明し尽くせるものではなく、だから私たちは、森林マネージメントにおいて、解析的・機械的な手法とは別のやり方を探さなければならない、ということだった」

フェーザー氏は、研究機関や環境団体とも共同し、人が手を入れず、自然の遷移に任せるという区画を設定して、そこでの観察から様々な有用な知見を得て、自然森施業を構築していきました。「Naturwald Akademie (自然森アカデミー)」という民間のシンクタンクもリューベックに設立されました。

パイオニアのフェーザー氏が引退したあと、2010年に署長職を継いのはクヌート・シュトゥルム(Knut Sturm)氏。90年代半ばから民間コンサルタントとしてリューベック市でのフェーザー氏の森づくりに同伴していた人物です。彼はリューベックモデルの核心を次のように表現しています。

「施業のアイデアは、自然にほとんど気づかれないくらいに自然を利用すること。森には、いくつかの明確な森林エコロジカルな目標が必要だ。それら目標は談判交渉が不可能なもの。そうすれば、サスティナビリティの3つの柱(環境・社会・経済)は自ずと建立されてくる」

参考ビデオ「リューベック市の自然森施業」
https://youtu.be/owWrBfFwvq0

南ドイツに住んでいる私は10年前から、いつか北の果てのリューベック市の森を訪問して現地で話を聞きたいと思っていました。先日、思いつきでNaturwald Akademie (自然森アカデミー)にメールしたところ、すぐにシュトゥルム氏から電話が来て、とんとん拍子で5月半ばに視察セミナーをやろう、という話になりました。ハノーファーで開催されるLIGNA(国材木材加工機械見本市)に日程を合わせました。

ドイツ視察セミナー 2023年5月15〜19日
【北ドイツ・リューベックの自然森施業と木材加工流通 —環境、社会、経済の融合】 
- ハノーファーの世界木材加工機械見本市LIGNA
- 広葉樹の自然森施業「リューベックモデル」
- 広葉樹材の地域加工・流通
- ハンザ都市ハンブルク

詳しい案内はこちら:
https://note.com/noriaki_ikeda/n/nb29e7c147f41

オンライン説明会を2回開催します。テーマ、企画に興味がある方、お気軽にご参加ください。

説明会① 3月12日(日)19時より
https://luebeck-naturwald.peatix.com/view

説明会② 3月14日(火)16時より
https://naturwald-luebeck2.peatix.com/view






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