見出し画像

シェールオイル・シェールガス動向について

シェールオイルやシェールガスという言葉が世の中に定着して随分になると思います。当初は、非在来型と呼ばれていましたが、今や米国陸上のメインプレイといっていいのではないでしょうか。シェール開発が米国の石油ガス生産量を押し上げ、世界最大の生産国に上り詰めました。国内生産量の増加を受けて米国原油指標であるWTIも北海Brentに対して2017年以降割安、価格差は拡大を続けています。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)はシェール開発について、専門家を招聘してセミナーを開催しています。そのレポートではシェール開発の動向が上手くまとまっております。

ここから、特に地質技術者のスコット氏の講演内容から、要点を抜粋したいと思います。

1980年代後半から90年代前半にか けてさまざまな技術が開発されました。特に シェールガスや炭層メタンのような非在来型資 源開発に投資した場合には5割の控除を受ける ことができるという税制上の恩典の後押しもありました。しかし、この頃のシェール開発は深度1キロ と浅かったため、地層圧が元来低く、相当量の水を圧入 しても天然ガスが出てくるペースが遅く生産性の低いも のでした。生産量も米国全体の1%程度に止まっていました。
大きな変革が起きたのは1990年代の後半にMitchell Energyという小さな企業が水平掘削技術をテキサス州 で大規模に使うようになったときのことです。このがノースダコタ州のバッケンというシェールオイルのプ レイで使われたのが「シェール革命」の始まりでした。実際に「革命」と認知されるまでには何年もかかったのです が、これは初めの頃多くの石油会社はシェール開発には 商業的な発展の可能性がないと考えていたからです。
採収率(RecoveryFactor)についても触れて おきたいと思います。採収率は水圧破砕技術の 進歩により3~4%から6~12%に改善して おり、将来的には10~20%まで上昇すると考 えられています。
中東や ロシアでは水圧破砕や水平掘削は不要なのでバ レル当たり15~30ドルで生産できることを踏 まえると、パーミアンが30~50ドルのレンジ で生産できるというのがなかなかの競争力であ ることが分かると思います。また、今後10年 単位の時間軸で、技術革新により生産性はまだ まだ改善の余地があると見られます。
資源の枯渇について、掘削するペースが速す ぎると枯渇してしまうのではないかという懸念 はあります。今後何十年にわたって低コストの 資源がシェールからは生産されると予想されま す。しかし、プレイのなかで近いうちに枯渇す ると思われているのが、テキサス州イーグル フォードのシェールです。イーグルフォードは 10年ほど前に発見され、集中的に開発され、 油井も非常に狭い間隔で造られました。そのた め、近いうちに枯渇すると予想されますが、パーミアンではそのような心配はありません。
2030年にはパーミアンの生産量は日量700~800 万バレルになると予測しています*3。このため、油価は 長期間低い状態が継続し、50~60ドルで安定し、あま り高くはならないだろうと思われます。他方、技術改善 の余地は十分にあり、シェール開発のコストも抑えられ るでしょう。北米以外にもさまざまなシェール資産があ りますが、50余りの技術革新意欲に優れた企業が競っ ている米国以外で開発が進むことはなかなか期待できないかも知れません。

なかなか興味深いレポートです。回収率が6-12%というのは私もここで初めて知りました。地層の特性上、回収率を増加させる事は容易ではないと思います。しかし、9割前後取りこぼしがあると思うと、技術革新が起これば、米国の生産量は更なる高みに上るのではないでしょうか。

サポート頂けると励みになります。また、こういう記事がよみたい!というリクエストもあると嬉しいです。