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26. 人材を尊重し自律的な貢献を引き出す

■Keynote

アドラー心理学では、人を育てるには「上から評価して褒める」のではなく、「横から勇気づける」ことが有効だと考える。褒めることの正体は依存心を育て自律性を奪うという意味で「勇気くじき」にほかならないわけだが、では、人はどんなときに最も勇気が湧くかといえば、組織や共同体への貢献を「横から感謝された」ときである。
By 小倉広(一般社団法人 日本コンセンサスビルディング協会代表理事)

■従業員に対し、権利と責任を果たす

最も重要な経営資源である“人”が最大限活躍し、事業の成長に貢献してくれるようにするためには、人の持つ尊厳に極めて敏感であり、かつ大切にすることが求められる。人の尊厳とは、例えば、差別をされない、公平で丁寧に扱われる、自分の倫理観に反する仕事を無理やりさせられないなどの権利に加えて、自分のやったことには責任を持つなど、人間である限り全ての他者から期待される必要最低限の責任も含まれる。
人が快く企業に貢献できるよう、経営者として、従業員の権利を守り、自身の責任を果たすことで信頼を築き上げていき、その結果として従業員一人ひとりの自律的な貢献を引き出したい。

■「選択の機会」を提供し「納得感」と「自律性」を引き出す

とはいえ、企業は組織として目標を掲げて事業運営をする以上、個人の希望と組織の目標を調整し折り合いをつける必要がある。その意味で、従業員に完全な自律性を認めることはない。企業が従業員に用意できる選択肢の数自体が限定されるケースも多いだろう。
しかしその場合でも従業員が、限られた選択肢から「自分は何をするか」を納得して選択していれば、その決定は自分のものとなり、社員の自律性を引き出すことにつながるであろう。従業員自身が納得して受け入れるというプロセスが欠かせない。

■納得感を高める4のポイント

従業員の納得感を得るためにポイントとなる点は上記の「選択の機会」に加えて「公平」「説明」「聴取」「感謝」がポイントとなる。
「公平」とは、扱いが他の人や他の状況と大きく異ならないこと
「説明」とは、その意志決定がなされた背景や基準を明確に伝えること
「聴取」とは、意見や不満を聞き、次の意志決定に反映させること
「感謝」とは、日頃の活躍に謝辞を伝えること
これらを経営陣の側から継続的につみ重ね続けることで、従業員の心に「組織に所属」し、「組織に貢献できている」という実感を持ってもらえるようになる。

殊に、利益を最大化する経営を追求すると、“人”をも単なる“資源”として扱ってしまう傾向があるように思われる。だが社長には、企業の中で人間の尊厳を守る最後の砦として、従業員の納得感を高める役割が求められる。

■Let’s Think!

□ 人事は、そして自社の経営者は、従業員の権利に応答できているか?

□ 人事は、そして自社の経営者は、従業員に対し果たすべき責任を果たせているか?

□ 自社の従業員は、必要十分な納得感をもって仕事に取り組めているだろうか?


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