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名古屋港水族館 - 私を広大かつ深遠なる海の世界へ誘ってくれた水族館

名古屋に配属された20代の頃。
実家が関西の私、もちろん友人知人はいやしない。
会社と自宅を往復するだけの日々、しかも要領悪くて残業ばっかり。

あかん、このままやったら確実に病む。
サードプレイスをつくらねば…



ある日のこと、とある施設の広告が目に刺さる。

なんですと、トーシロの私でも、海の生き物の解説ボランティアができるですと!!!







ここから、名古屋港水族館とのお付き合いが始まったのでございます。




クリーチャー; Creature

そもそも、海の生き物たちが素敵すぎる。

名古屋といったらシャチ。
尾張名古屋は城でもつ。
いやさシャチでもつ?

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ちなみに日本国内でシャチに会いたい場合、今現在は名古屋港水族館か鴨川シーワールドに行くしかない。

写真:鴨川シーワールドより、ご家族まるごとお引っ越し。母ステラの、末娘リン出産のため。これだけではトーシロの私には判断つけづらいが、たぶん左は母ステラか父ビンゴ、右はお姉ちゃんのラン。リンちゃんは右顎に黒い模様があるのですぐ見分けられる。↓



お次はバンドウイルカ。
日本屈指の巨大屋外プールで大活躍。ここ最近、繁殖活動も活発なよう。

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写真:仔のからだの真ん中へん、背びれの下辺りに縦のすじが入っているが、お母さんのお腹の中ではそのすじに沿ってからだを折り畳んでいるのでその名残り。数ヶ月も経つと消えてなくなるため、生まれた直後しか見ることができない。
生後しばらくはデリケートなので、無論なかなか一般公開されない。飼育員さんも24時間つきっきりで、授乳のタイミングや異常がないか等を観察されている。観覧用の水槽に移せるようになってからも、飼育員さんが集中できるよう水槽前に衝立が設置されるが(この写真だと下の黒い部分)、ちょうど隙間に2頭同時に顔を出してくれた、貴重な1枚。



ベルーガ(シロイルカ)やカマイルカもいますえ。
2004年7月にベルーガの日本国内初出産に成功し、その後2007年に生まれたナナに会うことができる。

もう12歳(Casa Brutus取材当時、2019年)ですと。
おーきくなったなー


カマイルカのサラが2011年6月、パフォーマンスのトレーニング中に亡くなったことは今でも覚えている。

解説ボランティアは毎年、知識のアップデートのために年間通じて研修を受けないといけない。年に1度は水族館職員の方々に付き添っていただいて名古屋近郊の磯に野外観測に行くのだが、ちょうどサラが不幸に見舞われた日が私の野外研修当日だった。
事故の報に接し、一部の方々がバタバタと、水族館へ戻っていかれた。
生き物の命を、地球から預かるということ。



忘れちゃいけないウミガメも。
初代館長の内田至さんがウミガメ研究の第一人者であったこともあり、研究のみならず繁殖にも並々ならぬ努力を注がれてきた。1995年、日本で初めて屋内の人工産卵場で産まれたアカウミガメの人工孵化に成功してから、途絶えた年もあるものの、延べ1万匹弱のウミガメの赤ちゃんを世に送り出してきたのである。
そして2020年には、名古屋港水族館生まれのアカウミガメが初産卵、繁殖2世代目が誕生したらしい。あなたは生まれてから死ぬまでを、名古屋港水族館で過ごすんやね…
ということもあってか、名古屋市内の小学校4年生の国語の教科書に、名古屋港水族館でのウミガメに対する取組みが掲載されている。




知る人ぞ知る(?)、水族館の出口出てすぐ、無料でウミガメを楽しめる場所がある。カメ類繁殖研究施設、という。

タイマイ、1歳とか2歳とかくらいかな。

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意外に口は鋭いのですよ。特にこの種はね。
他の水族館(海外含む)でウミガメに手が届きそうな水槽があるとほぼ必ず、甲羅を撫でようとする人を見かけるが、よい子のみなさんは絶対にしないように!!噛みますよ。物凄い力で。
お客さんが誤って落としてしまったガラケーやメガネが、ひしゃげている写真を見せられたことがあります。ウミガメ研修のときに。(゜-゜)

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私はウミガメの中ではタイマイ推し。甲羅が見事。特にこれくらいの、若い個体のがめっちゃうつくしくて。
べっ甲細工の原材料ですな…

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こっちがアカウミガメ。年頃も同じで1歳か2歳。目つき…
ガメラのモデルだとか、ダイバーさんのブログでも「ガメラ出現」とかって言われてるくらい。


産卵観察会という、夜の水族館に泊まり込み産卵の様子を観察するイベントに参加したときの体験も、忘れ難く記憶にある。もちろん、確率の高い日が選ばれるが当日母ウミガメが産む気になるかは運次第。

この夜はラッキーなことに、観察することができたのだった。感謝。
翌朝、屋内産卵場から孵化専用施設に移すために卵を掘り返すのだが、そのときに触った卵のあたたかさ、やわらかさ。生命のしなやかさ。脆さ。



ペンギンでも特筆すべき点がある。
コウペンちゃん(コウテイペンギン、もしくはエンペラーペンギン)を飼育していること!!!日本では今のところ、名古屋港水族館と南紀白浜アドベンチャーワールドでしかお目にかかれない。
世界を見渡しても、公に飼育してるのって片手で数えられる程しかないはず。北米だったと思う。
それなのにエンペラーペンギンを見に行ける施設が2ヶ所ある国、日本。

エンペラーの他にも南極に住むペンギンに特化しており、ジェンツーペンギン、ヒゲペンギン、アデリーペンギンの繁殖に成功している(ヒゲペンギン、アデリーペンギンについては日本初)。

ジェンツーペンギンと言えば、”走る”。( *´艸`)

ヒゲペンギンと言えば、”ちっせぇくせに気性が荒い”。
(実はそうでないという説も。鳴き声がうるさいだけ?)

アデリーペンギンと言えば、PinguかSuica。


南極に関連してもうひとつ。ナンキョクオキアミという、世界で唯一ここでしか見ることのできない生き物も飼育・展示している。

ああそうさ、地味なんだが、南極の生態系を支えているめちゃくちゃ重要な種。「鍵種」とも。こやつらがいないと、クジラだってペンギンだって、魚だって、南極で生きてくことは難しいんだぜ。




プロフェッショナル; Professional

水族館の裏側、バックヤードなんて、解説ボランティアになる前は終ぞ知らなかった。これ程までに、世界の最先端技術を結集した分野があるとは。


そもそも、海の生き物を陸上で展示すること自体、無理がある。
その生き物が生息する環境そのままを、陸の上で再現する必要があるから。
水温、水圧、酸素量、光量、水質…
そこにどれくらい高度な技術が要るだろう?
私たちがスキューバダイビングで海に潜るときと同じ。空中と水中、全く異なる環境下では生きられないからだに、つくりに、なってしまっているから。
しかも我々人類が、海の生き物たちの生態をどれ程知っているかといったら?


そんな不確実な世界で、何百種何千何万匹という生き物を飼育展示するという壮大な挑戦に日々挑む飼育員さんたち。

カッコよすぎるでしょ。

深海生物に憧れる新米飼育員の日常が描かれた、お気に入りマンガ。↑
水族館そのものが深海にあるという架空の設定だけど、もし実現したら絶対行きたい。品川から”しんかい線”に乗っていけるそうです笑




ボランティア; Volunteer

やっとこさ”人”の話に到達…


はてさて我々ボランティア、一体何名いるのでしょうか?

ざっくり200名前後であります。

下は、水族館で働きたい!飼育員になりたい!という大学生や専門学校生。
上は、日本スキューバダイビング界のレジェンド他、超個性的なメンツを取り揃えております笑


日本人中心の集団ゆえ、国籍や宗教の多様性はないものの、年齢、性別、職業は多種多様な方々が集っている。自分史上初、様々なbackground を持つ人たちと出会う楽しさを教えてくれた場所。


ボランティアであるがため金銭を介した利害関係が生まれないのもめちゃくちゃ心地いい。
しかもみなさんそれぞれに、名古屋港水族館や、海の生き物が大好き。忘年会やら、研修後の打上げやらで飲み会なんてやろうもんなら、名古屋港水族館愛、海の生き物愛が止まらない。むしろ止めることなんて不可能。



3000文字以上書き連ねている私も、やっぱり同じ穴の狢ということで。
(これでも足りぬー)


はー、マレーシアに名古屋港水族館がないのたいくつ…



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