The son 息子 丘の上の本屋さん 男の子たちのお話(気持ち)が知りたくて

 映画評を頼りに、思春期の男の子の心の中を垣間見れるかも、宣伝のポスターも軽やかな感じなのでどんな家族もの、どんな男の子が出てくるのだろうと、軽い気持ちででThe son 息子( 2022年。監督: フロリアン・ゼレール )を観に映画館へ。堪えました。寝込む寸前!

 監督がフランス人なので、フランスは元より欧米ではありがちのシチュエーション、お父さんとお母さんは離婚していて、お父さんは再婚していて若い妻の間には子供が生まれたばかり。シングルマザーの元妻と息子ニコラス
17歳は、共にお父さんに捨てられたという気持ちの収めどころがずっとないまま、ニコラスは不登校に。元妻のお母さんも、もう自分だけではニコラスを手に負えず、ニコラスも義理の弟のいるお父さんの元に行きたいと、お父さん、若妻、赤ちゃんと暮らすことに。ニコラスが繊細な子供といえばそれでくくれることかもしれないけれど、思春期のニコラスの壊れかけている心を懸命に立て直そうとするお父さんのピーター(ヒュー・ジャックマン)と元妻お母さん(ローラ・ダーン)、若妻だって我慢してニコラスに寄り添おうとしている。子育ての難しさに加えて、ニコラス自身でも自分の気持ちの持っていき所がわからず苦しくなるばかり。大人たちの温かい気持ちはあれど、上手くはいってくれない。

 よくもこんなに人の気持ちがわかるのか!フロリアン・ゼレース監督自身の戯曲を脚色した映画。余韻が強すぎて、こんな映画を作ってしまうゼレース監督、2020年に「ファザー」でアカデミー賞2部門に輝いていた。見逃していた!次回作も期待して是非是非観に行きたい。俳優陣もどれも適役で、ピーターの父役のアンソニー・ホプキンス、画面に出てきた一瞬でその役、毒親に見えてくるから、あの域に到達している俳優をスクーリーンから感じるだけで一つの喜び。ヒュー・ジャックマンもローラ・ダーンも息子への父、母の思い、言葉、表情ってああなるんだろうな、と、とてもよかった。胸に切り込まれる、心の深くに残り続ける作品に出会えた。まだ余韻に浸ってる。

 丘の上の本屋さん(2021年。監督・脚本: クラウディオ・ロッシ・マッシミ)もポスターに惹かれて、息子(8歳)と観に行く。イタリアの美しい村の丘の上の古本屋の主人リベロと移民の男の子エシエンの友情をメインに、古本屋を訪れる様々な人々と古本屋隣のカフェで働くギャルソンとその恋愛事情などを織り交ぜての、美しい石造りの村での出来事を側から垣間見ているようなお話。いち母としては、古本屋の主人リベロが移民の男の子エシエンに(10歳くらいか)どんな本を勧めたのが1番知りたかったけれど、リベロの年の功で諭し導きながらも、年齢が離れていても、リベロとエシエン、リベロとギャルソンの間の男の友情に心打たれた。リベロが、昔のある女の人の日記を読む時に、オルゴールをかける場面も好きだった。

 大江健三郎さんがおっしゃるように、「小説の大切な役割は、人間をいかに回復させるか」ではないけれど、正に、人間を回復へ向かわせてくれる力を与えてくれる本、そして映画。本にも映画にも、もう何回救われ助けられたことか。まだまだ映画にハマっていきたい。


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