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熊についてしっかり学んだのに…【初めての上高地⑨】

私は危機管理のみ意識高い系キャンパー、別名:ビビりで好奇心旺盛人間なので、上高地のビジターセンターで熊についての講習を無料で行っていると聞いて、講習を受けることにした。

参加者は私を入れて3名。
スクリーンの前にはツキノワグマの剝製が置かれているという、シュールな会場。昨年の小梨平での熊による人身事故もあり、ちゃんと熊について学ぶべきだわと意気込んでいる私とその他2名。

熊について私が知っていることと言えば、熊が好きだった写真家の星野道夫氏が「どうぶつ奇想天外」のロケでヒグマに襲われて無残な形で亡くなったこと。

そして、何故か夜中に急に定期的に思い出して、Wikipediaを何故か何度も読んで、怖くて眠れなくなってしまうあの事件のこと。そう、それは北海道の恐ろしい三毛別熊事件のこと。(眠れない夜には、ぜひ三毛別熊事件のwikipediaを読んでみてほしい。)

また、ディカプリオが熊にむちゃくちゃにやられて、普通なら絶対死んでるやろというレベルの傷を負っても生きていた映画「レヴェナント」のこと。

大きく分けてこの3方面から熊を学んできた私。
あとは、子熊がいたら絶対に近くに母熊がいて、子熊を守るために全力で襲ってくるぞとか(これもレヴェナントで学んだ)、熊が一回人間の味を覚えたら舞い戻ってくるぞとか、死んだふりは通用しないとか、森の中で出会っても一緒にラララ…と言って踊ることはできないことなどなど。私が熊について知っているのはその程度の情報である。(偏りが激しい)

そんな恐ろしい熊のイメージを覆すような、穏やかな男性の語り口で優しいレクチャーが始まった。

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まず、津軽海峡でキレイに境界線があって、北海道にはヒグマ、本州にはツキノワグマしかいないことを学ぶ。本州にヒグマの化石が発掘されていることから、昔は本州にもヒグマがいたらしいが、現在はほぼほぼ黒いツキノワグマしかいないらしい。
私の抱いている恐ろしくて巨大な茶色い熊のイメージはヒグマのようだ。
上高地はツキノワグマの生息地で、普通にそこら中にいるらしい。話をしているお兄さんもこれまでに10回以上このすぐ近くで熊に遭遇していると言う。
ツキノワグマの体長は大きくても120㎝くらいと聞いて、何だ大したことないな、と思ってしまった。
それなら大きい野良犬くらいじゃないか。横っ腹を思い切り蹴っ飛ばしたら勝てるかな、とか調子に乗って想像する。しかし体長は胴体の長さだと言うから、ややこしいサイズ感だった。
また、体重が40㎏~120㎏と、かなり幅があると言う。これも正直、曙くらいかと思いきや舞の海くらいか、となめてかかっている私。本当に舞の海だとしたら砂をかけたって私に勝ち目はないし、そして私の思い浮かべる力士が絶妙に古い。
冬眠明けの熊は空腹の極限状態なのでガリガリらしく、夏から秋が、熊が最も活動して食べまくるシーズンであり、そのシーズンに、熊と人間とが遭遇する機会も断然多いとのこと。
しかし、40〜120kgとは、リバウンドの女王と王様である私と香取慎吾もびっくりの体重の振り幅である。熊は意図的に体重を増減させているならば、それはもうマシュー・マコノヒーか鈴木亮平レベルだろう。役作りと無関係に体重を増減させている我々と彼らは質が違う。それはさておき、ダイエット中の私の精神状態を考えると、空腹の状態の熊に出会ったらヤバイだろうなと危機感を改めて高めた。
そして熊は雑食で、木の実を結構食べるから、よく木の上にいたりするとのこと。上にも注意しないといけないとは知らなかった。
何度かここのnoteでも書いてきたことがあるが、私のサバイバルスキルは、アメリカのドラマ「ロスト」から少しと、ほとんどを「ウォーキングデッド」で学んでいる。私が自然の中に身を置く時は、常に今ゾンビが出てきたらどう戦うかを頭に思い浮かべる癖がついている。
ウォーキングデッドでは、ゾンビが木の上に登るということはしないため、そこは盲点だった。今後は、油断せずに木の上の物音も気を付けていこうと思った。「知ることは動揺を鎮めること」だと、オードリー若林が本で書いていたが、本当にその通りだといつも思う。私はどんどん、色んなことに動じない人間に近づいている気がする。熊の習性も学んだし、必要以上に怖がることもないと思って、落ち着いた。

それから、ツキノワグマが撮影された動画などを見て、落ち着きのあまり、優しい口調のお兄さんの声で絶妙に眠りに誘われ、気づいたらレクチャーは終わっていた。

終わってから、お兄さんが「ぜひ熊の剥製を触ってみてください」と誘うため、触りに行った。熊の剥製の毛はゴワゴワしていた。そして、爪が結構な獣感を醸し出していた。まるでキン肉マンのウォーズマンだ。あ、ウォーズマンの必殺技はベアクローである。なるほど、ベアー=熊ということに気付いて嬉しかったが、本物のベアーのこれで引っかかれたら、ウォーズマンレベルで肉がごっそりそがれるなと思った。
そして、日本アルプスにいるツキノワグマが本当に黒い野良犬みたいだなあと思った。茶色い熊はヒグマで、ツキノワグマは黒なのねと学んだ。

その時に、ふと私の子供の頃のことを思い出した。
昔、祖母が飼っていた超凶暴な黒くてバカでかい雑種犬の名前が「クマ」だったのだが、4歳下の弟は小学校6年生の時に、「おばあちゃんは熊を飼っている」と思い込んでいて、学校でもそう言いふらしていたらしい。ある日、クマが熊ではなく単に犬につけられた名前だと知り、「え?あれ犬なん?!」と驚いた弟がかわいくてバカで大笑いしたのだが、果たしてあれは本当に犬だったのだろうか…と疑念が持ち上がる。
とにかく恐ろしい熊のようなクマで私は怖くて近寄れなかったし、吠え方も獣で異常だった。
もしかしたら弟が正しかったんじゃなかろうか。
祖母はどこかでクマを拾ってきたらしいが、どこだろう…。
リードも、あの時代はただの太い縄だったような記憶だし、クマのエサの量も大人の晩ごはん以上をあげていた記憶。(昔なので、本当に人間の晩ごはんと同じものを食べさせていた。)
40年前、貿易の仕事をしていた知人から、多分違法な形で譲ってもらった小さい猿を、部屋の中で飼っていた(よく肩に乗せていた)祖母だ。クマの真相は闇の中である。


そんなクマの思い出に浸りながら、キャンプ場に戻り、晩御飯をサクッと食べて、日が暮れた後の河童橋の様子を見に行きたくて、散歩に出かけた。
人気のなくなった薄暗い森を歩くのが怖かったため、熊が出てこないように熊鈴代わりにiphoneでダイアンのラジオを流しながら歩いていたが、前の方から人がやって来たので、コテコテの大阪弁トークが恥ずかしくなり、ボリュームを落とした。
すると、前からリヤカーを引いてやって来ていたおじいさんがよろけたため、手伝ってあげようかなと近寄ってみたら、私に気づいたおじいさんが、「ぎゃーーー!」と大声をあげて、私もその声に驚いて「わーー!!」と大声をあげた。薄暗い森に響き渡る大人2人の叫び声。
おじいさんが、私をしっかりと見て、「人間か!熊かと思ったよ…」とへなへなっと脱力されてしまった。私も心拍数がうなぎのぼりでおさまるのに時間がかかった。
私は改めて自分の姿を見たが、風呂上がりだったこともあり、黒のパーカーを着てエミネムのようにフードをすっぽり被っていたし、黒のスウェットパンツを履いていた。全身黒。そして黒のリュック。身長170㎝くらいで、体重が40㎏~120㎏でビンゴ。
なるほど。
どこをどう見ても私はツキノワグマ・ルックであった。
リヤカーを引いていたおじさんは、河童橋のところで上高地の絵を描いていた有名なおじさん(渡辺画伯)で、おじさんは、「小梨平のキャンプ場に住んでいた時に熊にテントを襲われたことがあってな」と話してくれた。私は、実際に熊に襲われたことのある人に、本物の熊と間違えられたのである。
「びっくりさせてすみません。」と言って笑い合った。
自分が熊に遭遇しないように気を付けるだけではなく、自分が熊と思われないようにも気をつけなければいけなかった。他者への思いやりの視点が足りなかった自分を反省。
みなさんも、森を歩くときは、熊に出会わないように、そして、熊に間違えられないように、全身黒色(北海道では茶色)の服を着て日が暮れた後に森を歩くなどしないように気をつけましょう。

そんな、日が暮れた後の河童橋。
iPhone11proで撮った写真と、RX100で撮った写真と。

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続く…


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