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赤い蓮の池へ 〜タレーブアデーン〜【タイランド#11】

ラオスからタイへと陸路で国境をまた越えて戻ってきて辿り着いたウドンターニーという町。

旅に出た日に、noteのおてだまさんから1月のウドンターニーに美しい場所があると教えてもらった。


ウドンターニー?
どこなのだそこは。
タイにあるらしいけど、行く予定にはなかった。
しかし、ラオスを南下してヴィエンチャンからほど近い場所にウドンターニーがあるということを地図で見つけて、よし、その町に寄ってみて、この目でこの赤い蓮の池、タレーブアデーンという場所を、朝日が昇るタイミングで見てこようと思ったのが始まり。

調べると、なかなか一人旅では行きにくい場所らしかった。
いや、行くのは簡単である。
ネットで調べたところ、車をチャーターしたら1時間以内で連れて行ってくれるし、ツアーも2人から組めるらしい。しかしそれは、1人だと値段が倍になるパターンである。言ってしまえば、お金さえ払えば簡単に行けるということ。
こういうのがとても悔しいタイプなので、何としてでも自力で安い方法で行ってやろうと思った。
どんなに行きにくい場所に思えても、そこが有名な観光地であるなら、公共交通機関で必ず行けるはず。いつも私はそう思い込んで調査したくなってしまう。
そんな訳で、ウドンターニーで聞き込み調査をはじめた。

まず、わざわざ歩いて40分かけてツーリストインフォメーションに行ったら、ちょうど閉館。そこの受付の女の人が帰るところだったので、宿までバイクで乗せてもらうなどということをした。
よく分からない調査の始まり。

それから宿のお姉さんに「タレーブアデーンへ行きたいんだけど」と聞いたら、「2人ならツアーで往復の車とボート代込みで600B(2400円)くらい。1人だと2人分払わないといけなくなるから1200B(4800円)になるわ。
ちょうどここに泊まってる女の子が、バイクで行くって言ってたから一緒に行ったら?レンタルバイクなら400B(1600円)くらいで手配できるよ。」とのこと。
うーん。
夜明け前に出たいし、40kmの距離だと私の時速20kmの超安全運転だと2時間かかってしまう。真っ暗な中を知らない道をバイクで2時間は無謀すぎるので却下。

「そういえば、ヒッチハイクで明日行くって言ってる男の子がいたから、一緒に行けば?ヒッチハイクならタダで行けるよ」という案も出た。
確かに一番安いが、時間がどれくらいかかるか分からないのでこの案も却下。

すると、同じ宿のカナダ人のお姉さんが、「昨日行ってきたわよ」とのこと。
ナイス。そのホヤホヤの情報をちょうだい。
聞くと、前日に前乗りして湖の近くの宿に泊まって、日の出の時間に合わせて湖に行ったという。
「でもろくな宿がなくて、こんなやばい部屋だったのよ」とお姉さんが泊まった部屋や食べたご飯の写真を見せまくる時間に入ってしまった。
いやいや、その情報はいいのよ。
ある程度その写真タイムにお付き合いしてから、「ところでどうやって行ったの?」を聞くと、「ウドンターニーのバス停から湖の近くまで行くバスが出ていて、それに乗って行って、降りたところにはソンテウ(乗り合いタクシー)が何台もいてボート乗り場に連れて行ってくれるから、簡単に行けるわよ」とのこと。
よっしゃ。それそれ。
しかし、時刻表の写真も見せてくれたが、始発のバスが7:30だったので、夜明け前には間に合わない。
うーん。
バス停まで歩いて行って、聞き込み調査をしてみたら、やはりバスは7:30が始発。
どうにかして日の出の時間に湖に行けないものか、バス停でしつこく聞きまくったところ、「セントラルウドン(ショッピングモール)からミニバンが出てるからそこで聞いてみたら?」と教えてもらい、それを確かめにセントラルウドンへ。

タイ語でしか書かれていない看板と時刻表を発見。

何度かこの場所を通っていたが、ここがバン乗り場とは全く思っていなかった。
タイ語がさっぱり分からないが「タレーブアデーン?」と聞くと、「イエス」と言って時刻表を指差してくれた。
始発が「5:00」と書いてある。
よし!見つけた!
しかも70B(280円)で行ける。

こういう瞬間が、一人旅をしていて一番テンションが上がる。
貧乏性な私の性かもしれない。でも目的地にたどり着くまでの道のりがロールプレイングゲームっぽくて、楽しくなってしまうのである。

宿に帰って70Bのバンでタレーブアデーンに行けることを見つけたと皆んなに報告したら、拍手をもらった。ヒッチハイカーの青年も「僕も明日それで行こうかな」と言い出したが、朝早い時間と知って諦め、5時発のバンに乗ろうという人は私以外いなかった。
宿のお姉さんに時刻表を見せたら、「うーん。これは多分Kumphawapiまでしか行かないよ。そこからトゥクトゥクに乗らないといけないけど、まあ、行けるでしょ。Try!」という気になる言葉をもらったが、その日は早く寝て翌朝4:30に起きて、ダウンジャケットを羽織ってセントラルウドンまで行き、バンに乗り込んだ。

そして。
やはり、宿のお姉さんの言う通りKumphawapiまでしか行かなかった。
「着いたよ、クンパワピ、降りな。」
「クンパワピ?」
どこそれ。
タレーブアデーンじゃないんかい。
湖に行きたいって言いましたよね私。
夜明け前からやっている市場の前で、降ろされた。
Googleマップで見ると湖の近くには来ているが、まだかなり離れており、徒歩で1時間以上かかる。
5:40頃で空も明るくなってきた。
「ねえ、ここからタレーブアデーン行けるの?」とバンの運転手に言ったら、運転手が近くのおじさんたちに何やら色々話して頼んでくれて、「話は通しといたから」みたいな感じのタイ語を私に言い残して、バンは去って行った。

不安すぎる。
おじさんたちが言うには、6時にソンテウが来るからそれに乗ったらいいから、みたいなジェスチャーとタイ語。何もかも定かではない。

しかし6時になっても、何も来ない。
ねぇ、夜が明けるんですけど。
おじさんたちに空を指さして伝えまくったら、おじさんの1人が、自分の車で送ってあげるよと名乗り出てくれた。
それなら早くそうしてよ、と思わなくもなかったが、おじさんとおばさん2人が乗る車に乗り込んだ。

大丈夫かな、この人たち。
私の不安を察したのか、おばさんは誰かに電話をかけて大きな声でタイ語で話し始めて、いきなり電話を代わられたら、電話の相手が日本語で「モシモシ、ダイジョブデスヨ」と言っている。
どうやらおばさんは、日本語を勉強している姪っ子に電話して、自分たちは怪しい人間じゃないから信用していいよと姪っ子に日本語で言ってもらおうとしていたらしい。
早朝からありがとう、姪っ子。
良かった、いい人たちで。

もう今にも日が昇りそうな6:30頃。
湖じゃなくおじさんの家に着いた。
「コーヒーでも飲も。」
いや、なんで。
日の出を湖で迎えたいのよ。
だから急いでんのよ私は。

「コーヒーはいらないから、頼むからボート乗り場に連れて行って!早くー!太陽が出ちゃう!」と強めに頼んで、「え?そうなん?」という反応をされながらまた運転してくれるおじさん。
そして私はコーヒーは飲めないからね。
おじさんにぶっ飛ばしてもらい、何とか日の出前滑り込みセーフで船着場に着いて、150B(600円)で小さいボートに乗り込んだ。
手に汗握る道のりであった。

その後のことは、以下の写真でご覧ください。

バン
下ろされた場所、クンパワピ
iPhone
ボートのおじさんには見慣れている景色


タレーブアデーンはRed lotus lakeと呼ばれているが、蓮の花が真っ赤に見えるのは、昇ったばかりの朝日に照らされた時間帯のみだと分かった。
その後は可愛いピンク色。
太陽の当たり具合によって、花の色が違って見えた。
日がもっと昇ると、蓮の花は閉じてしまうらしい。
また、事前に見た写真では分からなかったけど、たくさんの鳥たちのさえずりが、美しい景色をさらに引き立てていた。
旅ではよく朝日が昇るのを見るのだが、夜明け前は凍えるほど寒くて震えていたのに、太陽が昇った途端に暖かくなっていく時、いつも私は太陽の底力を感じてしまう。
夜明け前に何とか滑り込めて本当に良かった。
簡単に行けてしまうのではなく、道中、苦労して行くと、その分見える景色の美しさが増す気がする。
達成感がプラスされるのかもしれない。
もしかすると変わらないのかも知れないけど、ちょっと悔しいから私はそう思うことにしている。



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