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【第65回岸田國士戯曲賞候補作を読む】その2

というわけで候補作を読んでいきます。
とりあえず順番は候補者氏名の五十音順で、ということで岩崎う大さんの『君とならどんな夕暮れも怖くない』から。

候補者について

岩崎う大[いわさき・うだい]
1978年生まれ。東京都出身。劇団かもめんたる主宰。
昨年の『GOOD PETS FOR THE GOD』に続いて2度目の最終候補。

候補作について

昨年7月、劇団かもめんたるの第9回公演として下北沢・駅前劇場にて上演。

■時代、場所
 近未来、場所は不明

■登場人物
 ビルコブ 過去の世界の人間。ジャモンの所有者・中年の男性
 ジャモン 過去のヒューマノイド。過去でも古いタイプ。
 ケージー 過去の世界の人間の女性。ヒューマノイドの両親を持つ。
 モップ  過去の世界の新型ヒューマノイド。ケージーの育ての父。
 ミルカ  過去の世界の新型ヒューマノイド。ケージーの育ての母。
 ドリー  過去の世界の老婆。ビルコブの住むアパートの最上階に住む。
 ベノン  ドリーの所有するとても古い初期型ヒューマノイド。
 ガイド  現在のヒューマノイド。ジャモンが住んでいた部屋を案内。
 ケン   現在のヒューマノイドで観光客。ミニーの夫。
 ミニー  現在のヒューマノイドで観光客。ケンの妻。

■物語
 人間に取って代わってアンドロイドが普及した近未来。観光客のケンとミニー夫妻はガイドに連れられて、かつてジャモンというヒューマノイドが住んでいた部屋を訪れる。ジャモンがビルコブという中年男性の人間と暮していたことが信じられないでいる夫妻にガイドはヒューマノイドの起源について語り始める。ある日、彼らの住むアパートに新型ヒューマノイドの一家が引っ越してくる。その一家はヒューマノイドのモップとミルカが人間のケージーを育てるモデルファミリーだった。一方、最上階に住む人間の老婆ドリーと彼女が所有する初期型ヒューマノイド・ベノンが最新型ヒューマノイドに「お引越し」をする。ジャモンは自分も「お引越し」したいと言い出すが…。

総評

 ヒューマノイドが普及した社会が舞台ということで、ヒューマノイドと人間の共存、新旧ヒューマノイド間の格差といった要素は、読み終えたばかりのカズオ・イシグロさんの新作『クララとお日さま』に近いものを感じた。
 現在と過去を行き来する構成も割合うまくいっていて、ガイドから話を聞いている観光客夫婦のビルコブに対する評価の変化していくあたりもいいのだが、「ビルコブさんが泣かせるんだもん!」などと登場人物に言わせるのはちょっと野暮ったい。
 受賞の可能性はなしと見た。笑
 

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