【第65回岸田國士戯曲賞候補作を読む】その3
2作目は長田育恵さんの『ゲルニカ』。
本作はPARCO劇場で鑑賞(感想記事はこちら)。
候補者について
長田育恵[おさだ・いくえ]
1977年生まれ。東京都出身。てがみ座主宰。
第58回(2014年)の『地を渡る舟』、第61回(2017年)の『SOETSU―韓くにの白き太陽―』に続いて3度目の最終候補。
候補作について
昨年9月~11月、PARCO劇場オープニング・シリーズとして東京の他、京都、新潟、豊橋、北九州で上演。演出は栗山民也さん。
■時代、場所
1 ― ―
2 1936年8月28日金曜日 フランス・ビリアトゥ
3 1936年7月18日土曜日 スペイン・ゲルニカ、元領主コルテス家
4 同上 ゲルニカの樫の木に通じる道
5 不明 大学の廊下
6 不明 レンタリア橋近くのタベルナ・バスカ
7 不明 屋敷の礼拝堂
8 不明 金色の麦畑
9 1936年9月6日日曜日 スペインバスクの町イルン
10 ― ―
11 1936年9月23日水曜日 タベルナ・バスカ
12 同上 夜道
13 1936年10月7日 礼拝堂
14 1936年11月30日 戦場
15 1937年1月5日 タベルナ・バスカ付近
16 同上 同上
17 1937年4月25日日曜日 ゲルニカの樫の木の下
18 1937年4月26日月曜日 ゲルニカの市場
19 同日、夜 ゲルニカ
■登場人物
サラ ゲルニカの元領主の娘
マリア サラの母
イグナシオ 人民戦線軍の兵士、ドイツ軍のスパイ
ハビエル ゲルニカの住人、バスク民族党党員
アントニオ ゲルニカの住人、バスク民族党党員
イシドロ ゲルニカの住人、食堂の主人
ホセ 人民戦線軍の兵士
パストール 神父
テオ サラの婚約者
ルイサ サラの屋敷の女中
クリフ 海外特派員
レイチェル 海外特派員
■物語
1936年7月、ゲルニカの元領主の娘・サラは結婚を控えていたが、内戦が激化する中、婚約者のホセは戦場へと向かう。母マリアと衝突して家を出たサラは、イシドロが営む食堂で働き始める。食堂を訪れる人民戦線軍の兵士たちや海外特派員の戦場カメラマン・クリフ、女性記者レイチェルたちと触れあううちに各地で激戦が行われていることを知るサラ。ある日、その食堂をイグナシオという兵士が訪れる。ホセの日記を届けに来た彼はホセを射殺した当人だった。しかし、サラはイグナシオと激しく求め合い、やがて妊娠が発覚する。そんな中、ゲルニカ空爆の日は刻一刻と近づいていた。
総評
昨年は劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』、『現代能楽集Ⅹ 幸福論』、そして本作と異なるタイプの新作を発表した長田さん。
上述通り、実際の上演を観てはいるけど、改めて戯曲だけを読んでも十分に面白い。ゲルニカ空爆という結末が分かっていながらも、クライマックスにかけての盛り上げ方は見事だし、女性の自立、歴史の継承といった普遍的かつ今日的なテーマ性も持ち合わせている(女性記者レイチェルの姿は長田さん自身に重なる)。
これで3度目の最終候補だし、近年の実績などを鑑みても今回の大本命と言っていいでしょう(まだ2作しか読んでないけど)。
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