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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その9 松村翔子『渇求』

候補者について

松村翔子[まつむら・しょうこ]
1984年生まれ。神奈川県出身。神奈川大学経済学部中退。モメラス主宰、劇作家、演出家。第62回、第63回に続いて3度目の最終候補。

撮影:HITOMI KANEKO

候補作について

昨年6月、モメラスの本公演としてKAAT神奈川芸術劇場大スタジオでの上演が予定されていたが、松村さんの体調不良により中止。戯曲は『悲劇喜劇』7月号に掲載された他、『TEXT BY NO TEXT』にも収録。

■時代、場所
一幕
 2015年12月22日 午後2時5分 郊外にあるアパートの前
 マンションの一室
 2016年2月6日 午後2時40分 一歳半健診の会場
 同日、夕方 鏡子たちの自宅
 2017年8月9日 午前10時39分 児童相談所のエントランス
 同日、夕方 鏡子たちの自宅
 同年10月16日 午前11時2分 「アサアビ会」の集会
 同年12月20日 午後8時25分 鏡子たちの自宅
 2018年8月9日 午前11時24分 「アサアビ会」の集会
 同日 公園

■登場人物
 ミノリ 自閉症スペクトラム症を抱えている
 鏡子  ミノリの母
 治   ミノリの父
 ムラタ 特殊清掃業のアルバイト。夜は「姉キャバ」のバイト
 特殊清掃員 ムラタの先輩
 保健師 ミノリの一歳半健診を担当
 児童福祉司 ミノリと母・鏡子を担当
 母   鏡子の母親
 父   鏡子の父親
 同胞1 新興宗教「アサアビ会」信者
 司祭  「アサアビ会」の教祖的存在
 アヤカ 「アサアビ会」の同胞の一人。「姉キャバ」で働くシングルマザー
 店長  「姉キャバ」の店長
 ニナ  「姉キャバ」のナンバーワン
 ナオミ 「姉キャバ」のキャスト
 客   ニナの指名客
 ハラ  ナオミの指名客
 タツキ 女性向け風俗店に勤めるセラピスト
 ユウヤ 同上

■物語
 2016年2月、息子ミノリの一歳半健診を受けた鏡子は、ミノリにまだ発語がないことを気にかける。その後、自閉症スペクトラムと診断される中、鏡子は夫・治との関係も険悪となり、自分がミノリにとってどんな存在なのかと思い悩むようになる。鏡子は藁にもすがる思いで「朝日を浴びる会」、通称「アサアビ会」に参加し、心の平穏を取り戻すが、夫と喧嘩になり一人でミノリを育てることにする。そしてミノリの4歳の誕生日、「アサアビ会」の集会に参加していた鏡子は、同胞の1人でシングルマザーのアヤカに「こんなところにいてはいけない」と連れ出され、公園に逃げ込む。その時、初めてミノリが発語するのを目撃する。

総評

 本作は上演中止になったのでもちろん未見。今回、白水社から公開されていた戯曲は一幕のみ。掲載されてきる『悲劇喜劇』を取り寄せたが間に合わず、ひとまず一幕を読んだ段階での評価となるが、まず、構成や展開、テーマ等含めて本作が受賞する可能性は大いにあると思う。恐らく、アヤカの紹介で姉キャバで働き始め、そこでボーイをしているムラタと出会うのであろうが、その後の展開も気になるところ。
 実は1年前にこんなツイートもしていたのだけど、改めて上演されることを期待したい。



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