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【第68回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その2 升味伽燿『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』


候補者について

升味伽燿[ますみ・かよ]
1994年生まれ。東京都出身。早稲田大学法学部卒業。果てとチーク主宰、劇作家、演出家。初の最終候補。

(撮影:松森モヘー(中野坂上デーモンズ))

候補作について

昨年8月、果てとチークによりアトリエ春風舎にて上演。『紙背』2023年11月号に収録。

■時代、場所
 6月〜9月。関東近郊の山間の村、神社、林、カフェ、タカサコ家、ウツミ家など
 シーン1  集合体の幸福
 シーン2 暗がりより
 シーン3 まばゆくて見えない
 シーン4 はざまのまま
 シーン5 溶暗
 シーン6 変化なし

■登場人物
 タカサコ(シミズ)ルイ(31)
 タカサコ キミタカ(31)ルイの夫
 ヒキダ(サトナカ)ミウ(31)ソラの姉
 ウツミ キリエ(34)ルイの先輩
 ウツミ マサヤ(36)キリエの夫
 ヒキダ ケイコ(55)ミウとソラの母
 ヒキダ ソラ(17)ルイの親友
 トミタ ナツ
(29)ルイの友人

■物語
 ルイとキミタカのタカサコ夫妻は、ルイの先輩・キリエに誘われてヒラヤマ大地の恵み会の畑仕事に参加する。ルイの親はかつて母恵会というカルトの信者で、ルイは宗教二世同士のソラという親友がいたが、彼女は十数年前、教祖の男性を殺し、自分も死ぬという事件を起こしていた。そんな矢先、母恵会のミミズ神社が火事で焼け落ちる。一方、ネット上では最後まで見たら呪われるという動画が話題となり、男性ばかりが死んでいく。

総評

 この作品は実際の上演を鑑賞(こちら)。その時に上演台本を購入して読み、更に今回『紙背』で読み直し、更には先日まで無料公開されていた映像も途中まで観た。
 本作は表面的には宗教二世の話ではあるが、主眼はその背景にあるミソジニーにある。ソラはカルト宗教・母恵会の教祖を殺し、その呪いが更に多くの男性を死に追いやることになるが、そういった設定がどこまで受け容れられるかが受賞できるかどうかの分かれ目かな。

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