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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その1 石原燃『彼女たちの断片』

候補者について

石原燃[いしはら・ねん]
1972年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学建築学科卒業。劇作家、小説家。演劇ユニット「燈座」主宰。初の最終候補。2020年には「赤い砂を蹴る」で芥川賞候補に。

撮影:篠田英美

候補作について

昨年3月、東京演劇アンサンブルの公演として渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールにて上演。『夢を見る: 性をめぐる三つの物語』(アジュマブックス刊)にも収録。

■時代、場所
 2021年10月の終わり。静谷晶と葉子の家。
 0 前日まで
 1 土曜日夜6時 リビング
 2 一階 居間
 3 二階
 4 一階 居間
 5 同
 6 二階 ベランダ
 7 二階 晶の部屋
 8 一階 居間 2時間後
 9 翌朝10時過ぎ

■登場人物
 静谷晶(44)グラフィックデザイナー
 天野ゆき(44)グラフィックデザイナー
 高崎涼(35)グラフィックデザイナー
 静谷葉子(70)日仏翻訳者 晶の母
 天野みちる(20)大学生 天野の娘
 多部真紀(20)大学生 みちるの友だち
 水越まゆみ(52)喫茶店店員 葉子の友だち

■物語
 大学生の多部が望まない妊娠をしてしまった。友人みちるに相談して、海外の支援団体から「中絶薬」を送ってもらって中絶することにした。みちるの母の同僚である涼にカードを借りて送金し、薬は届いた。中絶薬は二種類、2日間かけて飲む。海外では広く普及している薬だが、日本ではやっと承認申請するところだ(2021/12/22申請)。安全な場所は? と考えた末、やはり母の同僚の晶に頼んで泊めてもらうことにした。この物語は2日目の薬を飲む一夜を描く。【東京演劇アンサンブル公式サイトより】

総評

 この作品は実際の上演を観ていて(こちら)、時代遅れにも程がある日本の中絶事情について蒙を啓かれた思いがしたし、様々な年代、立場の女性たちが連帯する様に感動もしたのだけど、改めて戯曲として読んでみると、やや説明的かなという気がしてしまった。この作品のテーマ上、ある程度説明的になるのは仕方ないと言えば仕方ないし、上演を観ているから尚更そう感じただけなのかもしれないけど……。
 余談ながら、36ページで同じやりとりが重複してしまっている。突然みちるが「中絶薬がどういうものか、見られてよかった」と言う涼に対し、「楽しい」と返すからびっくりしてしまった。

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