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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その3 加藤拓也『ドードーが落下する』

候補者について

加藤拓也[かとう・たくや]
1993年生まれ。大阪府出身。興国高等学校卒業。劇団た組主宰、劇作家、演出家。2021年放送のドラマ『きれいのくに』で市川森一賞を受賞。初の最終候補。

撮影:小笠原真紀

候補作について

昨年9月〜10月、劇団た組の本公演としてKAAT神奈川芸術劇場大スタジオにて上演。

■時代、場所
 2010年代後半。都内各地。
 1 現在
 2 現在 線路沿い
 3 現在
 4 3年前 巣鴨のカラオケボックス
 5 同上 少し後
 6 巣鴨のビジネスホテル
 7 同上
 8 同上
 9 中野の中華屋
  10 経堂の一軒家(夏目家)
  11 西武線沿いのアパート(信也の部屋)
  12 同上
  13 新宿のカラオケボックス
  14 同上
  15 新宿歌舞伎町の路上
  16 中野の中華屋
  17 湘南の海
  18 新宿 小田急デパートのトイレ
  19 新宿 九州料理の居酒屋
  20 高円寺 小さなライブハウス
  21 現在 3の続き
  22 1年前 新宿の路上
  23 高円寺の公園
  24 新宿のカラオケボックス
  25 新宿
  26 夏目の部屋
  27 数日後
  28 現在の少し前 渋谷
  29 現在
  30 現在

■登場人物
 信也 イベント制作会社兼ライブハウス勤務
 夏目 芸人
 庄田 ほぼ同期の芸人
 山中 放送作家
 鯖江 夏目の先輩芸人
   夏目と同期の芸人
 大江 地下アイドル
 藤野 信也の元恋人
 青鬼 相席居酒屋の客
 芽衣子 夏目の妻
 沙良 夏目のバイト仲間
 坂本 バイトリーダー

■物語
 イベント制作会社に勤める信也と芸人の庄田は芸人仲間である夏目からの電話に胸騒ぎを覚える。三年前、夏目は信也や友人達に飛び降りると電話をかけ、その後に失踪していた。しかしその二年後、再び信也に夏目から連絡がある。夏目は「とある事情」が原因で警察病院に入院していたそうで、その「とある事情」を説明する。それから信也達と夏目は再び集まるようになったものの、その「とある事情」は夏目と友人達の関係を変えてしまっていた。【劇団た組公式サイトより】

総評

 この作品は劇場で鑑賞(こちら)。候補になるとしたら、鶴屋南北戯曲賞の候補にもなった『もはやしずか』だと思っていたので本作が選ばれたのはちょっと意外。
 タイトルにある「ドードー」は絶滅した飛べない鳥のことだが、アメリカ英語は「間抜け、役立たず」という意味もある。どちらにせよ、夏目のことを指しているものと思われるが、統合失調症を患って苦悩する彼と周囲の人間を重くなりすぎず軽くなりすぎずに描き出している点は好感が持てる。
 ただ、現在と過去を行き来する構成はあまり効果的とは言えなかった(特に21はなくてもよかったように思う)。


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