愚者、推理小説を語る

「愚者の戯れ言」シリーズ(?)第2弾です。
私は自分の言うのも愚かしいが、推理小説狂を自認している。なんちゃって推理小説を書くこともある。最近の推理小説は全く読まないが、大正・昭和に書かれた推理小説(探偵小説)はよく読んだ。最近の物を読まないのは、文章の軽さが1つの要因かもしれない。こんな表現しかできないことで理解できるように、私は言うほど本を読まない。だから文章の軽さを説明できない。しかし、このテキストは文章の軽さを語るテキストではない。
私が好きな作家(推理小説家)を日本国内外で5人挙げてみたい。
まずは国内から。1人目は日本推理小説界の巨匠・横溝正史だ。初めて彼の本に触れたのは中学の時。たしか『獄門島』だったと思う。謎が解かれて行く中でミステリーの醍醐味を何となく理解した。動機は理解不明だったが、子ども心に作品の重苦しさは感じられた。探偵の存在こそ、横溝ミステリーの唯一の救いだと思っている。自分の思うベストは『仮面舞踏会』。謎が完全に解決されない気持ち悪さ、
「舞踏会」という華やかさのイメージを打ち砕く程の重さ。横溝正史の魅力あふれる作品と思う。
2人目は江戸川乱歩。彼の小説を初めて読んだのは大学受験を終えて(私は学校推薦組だったので、受験勉強はさほどしていない)だから、高3の2月くらい。明智小五郎物は面白かった。大学の時に初めて少年探偵団にハマった。日本において初めて「探偵=ヒーロー」という型を作った作家だろう。横溝正史のような、おどろおどろしい作品はさほどなく(一部除く)、読者を楽しませる文章テクニックを駆使した人だ。自分の思うベストは「何者」。ホワイダニット(なぜ殺したのか?)物の傑作だろう。犯人は直感的に分かったが、動機に驚かされた。時代背景を知らないと作家の仕掛けた罠に引っ掛かる。
3人目は高木彬光。知らない人も多いだろう。私の父の持っていた戦後5人衆の1人だ。高木彬光の文章は私にとっては「嫌い」な部類に入るが、トリックや舞台設定の細かさがいい。自分の思うベストは『人形はなぜ殺される』。
4人目は松本清張。社会派ミステリーの巨匠で、『砂の器』など、その多くがドラマ化映画化されている。どちらかというと、純文学的な推理小説家かもしれない。『点と線』や『砂の器』もいいが、読んで驚いたのは「絵はがきの少女」「拐帯行」「一年半待て」だろう。特に「絵はがき~」は読んでいて残酷な物語に泣けてきた。 近頃流行りの「イヤミス」かしら。
5人目は連城三紀彦。最近亡くなられて、悲しかった。彼は松本清張以上に純文学的。叙述ミステリーの巨匠だろう。読んでいて騙される、その快感を教えられた。自分の思うベストは「依子の日記」。結末に唖然。他にも鮎川哲也「達也が嗤う」や小栗虫太郎「完全犯罪」も面白かった。

さて、国外といきやしょう。
1人目はクリスティ。語り手が犯人とか探偵除く皆が犯人とか、数々の名トリックを生み出した女流作家。特にポワロやマープルは彼女の生んだ有名な名探偵だろう。私の思うベストは『五匹の子豚』。『オリエント急行』も好きだが、過去の事件を探偵が追うという推理小説はたぶんこの作品で初めて読んだ。
2人目はカー。横溝正史のように、舞台設定が上手い作家。言わずと知れた不可能犯罪のスペシャリスト。リアリティーはないが、斬新なトリックの楽しめる作家だろう。私の思うベストは『曲がった蝶番』。話が面白かったために、現在の日本を舞台に翻案(?)小説を考えたこともある。未だに作品にならず。
3人目はチャンドラー。初めて読んだのは大学生の頃。たしか行きつけの古書店に100円で買った。『長いお別れ』だった。初めてハードボイルドを読み、その世界観にはまった。「ギムレットには早すぎる」「さよならを言うことは、わずかの間死ぬことだ」いやぁ、台詞に震えました‼言わずもがな、私の思うベストは『長いお別れ』。ハードボイルドを書いたこともあるが、パロディとして『永いお別れ』という推理小説を書いた。はっきり言う。これは駄作。
4人目はヴァン・ダイン。本格ミステリーを読みたい方には持ってこいの作家だ。ただ、探偵の知識量が怖い。しかし、純粋に謎が解かれて行くという推理小説の醍醐味を味わえる作品が多い。私の思うベストは『僧正殺人事件』見立て殺人を題材にし、江戸川乱歩も絶賛した名作だ。
5人目は作家じゃないが、コロンボ物。アメリカの推理ドラマの刑事だ。所謂倒叙ミステリーである。犯人の側から物語が描かれ、探偵がどう犯人を追い詰めていくかを楽しむ内容になっている。私はドラマはほぼ観ていない。二見から出ていたノベライズ版を古書店で買い、読んでいる次第。全く優れた刑事に見えないコロンボだが、見た目に惑わされる勿れ、わずかな犯人のしくじりを鍵に論理的に解決させていくのだ。私の思うベストは『13秒の罠』。

とまあ、以上国内外の好きな作家を挙げてみた。
推理小説の醍醐味だとか偉そうなことを言っているが、私が口だけの人間ということは、私の書いている『ピエロ』を読んでみれば分かるだろう。
駄文拙文、申し訳ない。

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