見出し画像

「えがおの駄菓子屋」運営してる君は誰?#2

全てはテコンドーで強くなる為に生きた20代後半

#1の続きです。
すっかり適性年齢過ぎた25歳から極めると誓ったテコンドー。
その想いのきっかけもフランス外人部隊でした。
数少ないお休みの日だったと思います。
フランス外人部隊といっても、新兵の段階ではフランス語を喋れる外人は、ほぼ居ないので、同じ言語や文化圏の人同士で集まる事が多いのですが、僕の部隊はアジア人・英語圏含め僕一人。
たまたま隣の部隊に韓国人が3人いたので話しかけてみました。
忘れもしない、リーさん、キムさん、チョイさん。
キムさんがかろうじて英語を話せたので、簡単なコミュニケーションをとっていた矢先!
身長190センチはあろうかという屈強なフランス人が

「チンチョンチャンチンチャー!チャー!」


とパーフェクトアジア人差別を撒き散らしながら近づいてきます。
あ〜沢山いたな〜こういうの、とみんなで無視してました。

構っていたらキリないし、何よりマジ強そうだ。
しかも横にフランス版スネ夫みたいな奴までいる。
無視無視と思っていたら…英語もフランス語も全く話せないリーさんが、落ち着き払った顔の中に静かな殺し屋の目をしていました…
生まれて初めて感じた殺気かもしれません!
頼む、やめてくれ!
そう思った僕の願いも虚しく、ゆっくり近づくリーさん…その瞬間!
右中段、上段、後ろ蹴りを本当に相手が動く間もなく全て寸止めで繰り出したんです!
そして、韓国語で一言ボソッと何か言ってまた座りました。
そのフランス人は漫画みたいにワナワナ…と目を丸くしながら立ちすくんでおりました。
おおおおおおおお!なんじゃこりゃ!
リアルブルースリーや!嘘じゃろ!見ちまった!

男の憧れのブルース・リー

勿論、僕はリーさんは一体何者だとキムさんに聞きました。
リーさんは韓国陸軍テコンドー教官で韓国のマフィアに追われて外人部隊に逃げてきたと言ってました。
なんじゃそりゃ!そっちも漫画かい!
でも、二十歳そこそこで、ブルースリー、ジャッキー、ユンピョウ、サモハン、ジェットリー世代の僕には強烈過ぎる!
いつか、必ず極めると自分に誓わせるには充分なインパクトでした。

世の中、大体の事は4か月でいける!

アジア横断の旅から帰国した僕は、海外で出会った友達の多い愛知県に住みました。
幸いにも東海は在日韓国人の方が多いので、テコンドーは盛んな地方。環境の良さげな道場を探して入門しました。
テコンドーに必要なのは、とにかく柔軟な身体。
股開きで胸、腹がつかない人が強くなる事はないので、蹴りの基本より股開きを真剣にやりました。
ところが僕の身体は硬くて、股開きなんて頭が下がる程度。

そこからは生活の全ての空き時間が股開き笑!


ご飯食べながら、TV見ながら、本読みながら、歯を磨きながら、全て股開きに注ぎ込んだ結果、4か月で胸とお腹がベタっと床に付くようになりました。
フランス外人部隊、股開き、「えがおの駄菓子屋」大体なんでも
4か月本気になれば行けます!

血が騒ぐってこういう事か!

股開きが終われば基本蹴り。
基本すら習得してない僕は、とにかく試合出てみるか?と誘われ、大したルールも知らないのに試合に出る事になりました。
正直、フランス外人部隊で培った根性があるので、何も怖くない。
ただ、本気出して人を倒す、倒される経験がないのでどんな気持ちになるか楽しみでした。
初めての試合、鮮明に覚えてます。
本気で人に蹴られる痛み、蹴る快感、蹴り合って分かり合える感情、相手の心が折れた瞬間の顔、自然と出てくる咆哮!
おおっ!生きてるぜ!血が騒ぐ!
そして、あっさり初心者の部で優勝した僕はもっと強くなりたいと更に修行します。

出来るだけ足で生活する!

テコンドーはどれだけ正確に隙間を縫って蹴りを当てれるかって戦いです。
イコールどれだけ自在に自分の足を動かせるか?
なので、股開きの次に本気だったのは足を自在に操る事。
蛇口を捻る、本を読む、ドアを開ける、物を取るなど、足で可能な物は全て足で生活しました。
基本の蹴りは道場で、応用は生活の中で修行を重ねた結果、東海地方ではほぼ負ける事が無くなり、全国大会に出場!そして、あっという間にボコボコにされました笑笑!

現役引退のキッカケ

負けたが故にまだ強くなれる!
その後も修行を続け、黒帯になり、またあまり負ける事が無かった僕は、大きな大会で1人の高校生と試合する事になりました。
その子は僕がテコンドー始めた頃に小学生ながら既に有名でヤンチャな子どもでした。
師匠から試合前に一言「あいつ今オリンピック候補だぞ、油断するな」
返した言葉が「ふっ、大人の怖さ教えてやりますよ!」
……

ぎゃああー!

瞬きで蹴りが来た!スピード、感性全部上や!
身体に染み込んでる!最後のあがきや!
俺の殺人キック喰らえ!かわされた!
僕の右顔面に蹴りが当たった…このやろっ…
左顔面に蹴り……や、り、か、え、し、て、や…
終了!

こんな蹴られ方は無いです(笑)

僕と相手の得点差が大きく開き、ゴールド負けでした。
試合後、記憶を噛み締めていたので言葉があまり浮かびませんでしたが、
師匠に言われたのが、「おまえ、清々しい顔してるな笑」でした。
圧倒的な力に立ち向かってボコボコにされるのは清々しいんだと、変な学びを得た僕は、テコンドーの選手から指導に道を切り替えます。既に、30歳を過ぎていました。

テコンドー界とのお別れ

後進の指導に当たり、師匠から道場を引き継いだ僕は、総勢30人以上の師匠になります。
勿論、仕事をしながらです。
道場一本で食べていくには100人くらいの生徒が在籍しなくてはならないです。
さて、どうしようかな?と考えていたら師匠から道場返して欲しいと…??
どうして?モチベーション下がるわ。
その話を聞いて、僕は7年も心血注いだテコンドー界から身を引く事を決めました。
この話の詳細も別記事でお話ししようと思いますが、格闘技界がいつも分裂を繰り返すのを身をもって分かりました。
みんな俺強いって思ってるから譲らないんです…

さぁ人生どうしよか?となりました。
「えがおの駄菓子屋」運営してる君は誰?#3へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?