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高校野球とその報道の在り方

先日、以下の記事を目にした。

記事内では

骨折が完治していない手負いのエース田仲陽稀投手(3年)が139球の熱投。

傷だらけの体で勝利に導いた。腰の疲労骨折など計3カ所を骨折し、いずれも完治はしていない。それでもエースとして痛みをこらえながら結果を残した。

などと書かれている。この件に関して3点記したい。

① まず、記事の内容が本当だとして、監督はこのピッチャーを投げさせるべきではない。この選手がこの後どうなってしまうのか?その責任を監督は取れるのか?これからの人生の方が長い。その子のその先の人生についてまで考えているのだろうか?

② 報道の仕方。記事では「熱投」「傷だらけ」「痛みをこらえながら」などと綴られている。いわゆる「美談」だ。令和に入って未だにこんな昭和風の美談記事を書くスポーツ紙記者がいるとは信じられない。下手したらこれは「虐待」にあたる行為だ。逆に「何で怪我してるピッチャーを投げさせたんだ」という批判記事を書くメディアがいないのにも驚く。

③ こういう事を書くと必ず「選手は自ら望んで投げたくて投げてるんだ」というご意見を頂戴する。では、大人は子どもがやりたいという事を何でもやらせて良いのか?それでは大人の責任を放棄しているのと同じだ。

少し話は逸れるかもしれない。私が外国人選手の通訳をしていた時の話だ。7回まで好投していたある外国人ピッチャーにピッチングコーチが寄って来て「次、行けるか?」と聞いてきた。そのピッチャーはもちろん「YES」と答えた。しかし、8回につかまりマウンドを降りる事になった。ベンチ裏でこの選手は激怒していた。「おれはアスリートだ。「行けるか」と聞かれれば「行ける」と答えるに決まっている。俺が8回にマウンドに行くかどうかを決めるのは俺じゃない、監督だ。」と。打たれたことの言い訳にも聞こえなくもないが・・・苦笑

ここで言いたい事は、選手の起用の責任は監督にあるのだ、という事。ましてや、18歳以下の選手の起用に関しては、目の前の勝利だけでなく、その選手の将来の事も考えた起用をする責任がある。

ユニセフでは「子どもの権利とスポーツの原則」というものを発表している。

この中には

・スポーツを通じた子どものバランスのとれた成長に配慮する

・子どもをスポーツに関係したリスクから保護する

・子どもの健康を守る

・子どもの権利を守るためのガバナンス体制を整備する

などの項目が含まれている。日本における「熱投」「痛みに耐えて頑張った」的な発想は世界的に見たら「虐待」にあたる可能性が大いにあると考えている。日本のスポーツ界もそろそろこの事に気づいて様々な行動を起こす時期に来ている。


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