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Airbnbに学ぶ世界観のデザインとラベリングの工夫

@norinity1103です。今年から頑張りすぎない程度に、普段仕事で考えているデザインのコトもショートコラムで投稿していこうと思います。

最近の仕事ではサービスにおけるブランド設計や「世界観づくり」というテーマで取り組む機会が増えてきたので、学び直しとして備忘録を残します。

ざっくり「世界観づくり」といっても要素分解しないとセンスというカジュアルな言葉に依存して再現性がなくなるので、今回はビジュアル要素としての配色やタイポグラフィ切り離した「ラベリング」について注目したいと思います。

世界観のあるサービスは「言葉」に配慮している

サービス設計における「言葉」とは、企業のWebサイトやアプリ、公式のSNSなどサービスのあらゆる成果物のライティングやメッセージを通して伝わる表現のことです。広義にこれらのテキスト要素を設計する作業を情報設計におけるラベルデザインといいます。

例えば、単にブランドロゴのから由来するカラーリングでスタイルガイドを作ったり、ボタンなどの機能的な要素を整理したガイドラインがあったとしても、サービス側から発せられるメッセージ性が成果物(WebサイトやLP、SNS)ごとで異なると、とても違和感を覚えます。

これがいわゆるボイス&トーン(Voice & Tone)「声」と呼ばれるもので、サービスとユーザーが対話する上での人格のようなものです。文章を通して表現される「口調」は、リアルな人間のコミュニケーションの温度感や距離感のように無意識に伝わってしまうものなので、ある程度の統一的な人格を設けなければ不信感を覚えてしまいます。分かりやすい例としてゲームなどストーリーの没入を重視する世界で、キャラクターがいきなりシステマチックなメッセージで対応してきたら驚きますよね。

これらは一部の例外を除いてサービスのあらゆる体験の一貫性を保つためにますます重要視されて来ました。

ゲーム「キングダムハーツ」のキャラクターメッセージ
普段は砕けた口調なのに対してアイテムの売買のシーンで急にシステム的になり
見た目は同じなのに中の人が変わっているように感じる

サービス設計におけるラベリングの重要性

表題の件では、長谷川泰久さん(@yassy)のエントリーが非常に参考になります。いきなり世界観づくりの話をする前に、ビジネスとして最低限のm品質を考えるのも大切なことです。そのため、ラベルデザインいう作業に関しては目的に応じて大きく3つの項目に分けられます。

  • ビジネス指標や法規的な表記ルール

  • 利用者の行動を促す表記のスタイル

  • 世界観を表現する言葉を考える

ビジネス指標や法規的な表記ルールは、サービスにおける品質そのもので、ビジネスの指標として重要な単位が「会員数:◯名」→「会員数:◯人」、「商品名」やサービス内で利用される「用語」の表記ゆれがないようにし、ユーザーに対して誤解のないように設計するもので、一部は法規的な要素も含みます。サービスの品質の担保のために、デザインススタイルガイド以外にも副次的な成果物としてサービス用語集や、開発用語集などがあると便利でしょう。

次に利用者の行動を促す表記です、例えば「問い合わせ」や「購入」ボタンなどサービスでいうゴールに近い所で目にする要素ですが「問い合わせる」や「購入する」など、ちょっとした表現を変えるだけでユーザーに対して次のアクションを直感的に想起させることができ、結果的に成果が出やすくなるというものです。インターフェースデザインの分野ではユーザーがスムーズに目的を達成するための情報の認識を助ける配慮が必要なため、配色や形状
などの表現にこだわる以上に「言語」に配慮することが求められます。

さいごに世界観を表現する言葉は、なかなか難易度が高くなります。ライトな所では「正規会員」をあえて「プレミアムメンバー」といってみたり、サービスの「ファン」を「クルー」と呼んで統一するなど用語の取り扱いにとりいれてみたり、ときにはサービスで扱われるメッセージテキストをフレンドリーな口調で「〜ます。〜です。」など友達言葉で統一することなどが挙げられます。

しかし、世界観にこだわりすぎて私たちが普段使い慣れていない用語を新たに定義したり摩訶不思議な語尾をつけられても戸惑ってしまいますね。そのため、独自の言葉の定義は比喩や暗喩、慣用句のように、ある程度ユーザーが直感的に解釈できるものが望ましいでしょう。

具体的な事例としてAirbnb Japanではローカライズの観点でもその世界観が垣間見えるラベルデザインがされている良例といえます。若干の誤字脱字や翻訳がいびつなところは目をつむったとしても、ビジネスの姿勢としてて「口調」に配慮するデザイン投資がされていることは明確です。Airbnbのユーザーは「ゲスト(旅行者)」と「ホスト(宿所提供者)」が存在しますが、「お客様」や「オーナー」のようなヒエラルキーを感じさせる表現を避けています。

Airbnbアプリのラベリング良い例
参照 : https://yasuhisa.com/could/article/content-design-process-2/

世界観から紐解くサービス側の姿勢

私は家業で「ゲストハウス黒崎BASE」というワーケーションスペース兼ゲストハウスを経営しているので、プラットフォームとしてのAirbnbは、ゲストユーザーとしてもホストユーザーとしての両方の利用者側の目線で世界観の作り方は非常に納得感があり心地よいものとなっています。これによって自分もその世界の一員として支持しようという態度をとることができます。

またこれらの世界観づくりの背景には、Airbnbは国際的なバケーションレンタルサービスとして強固な「ブランドポリシー」を発信していることがわかります。例えばダイバーシティへの取り組みを多言語で明確に利用者やステークホルダーに提示したり、広報の面でも第三者やメディアの記者が間違った世界観を発してしまわないようにメディアキットの提供やガイドラインを設けています。

このようにブランドに由来する強固な理念を言葉に落とし込むことはボタンの形状や配色以上に直接的にユーザーに印象として伝わることとなります。

Airbnbのメディアキット
https://news.airbnb.com/ja/media-assets/

ラベルデザインを考える際の注意点

サービスの世界観や独自性をもたせることは、ビジネスのデザイン戦略上重要なことですが、先走ってあまり私たちの身の回りで馴染みのない用語が突然飛び出したり、急に距離を積められるとユーザーは驚いてしまいます。

まずはサービスの提供側がブランド設立の背景や事業十分に理解し、提供価値をメッセージとして翻訳すること。また、双方向的にサービスのファンとなるユーザーがその背景を認識していなければなりません。なかなか息の長い計画です。

ラベルデザインを考えるにあたってまずはビジネスのサービスの信頼性としてビジネス表記が整っていることを前提に、利用者の行動を促す表記を改め、ユーザーがサービスで達成したい目的にスムーズにたどり着けるボタンや機能的なインターフェースデザインの基本的なルールを設計する必要があります。

利用者と宿の提供者の2タイプのユーザーを
「ゲスト」「ホスト」と命名して"平等"に扱っている

私もデザインを初学する際はどうしても世界観づくりやディテールの印象に最初からこだわってしまうことが多かったですがここに来て改めてインターフェ−スの基本設計で要素分解と優先順位付けが大切だということを感じています。

そのためにも世の中のいろいろなサービスにおける良例を観察し、気づく力が大切なのだとおもいます。


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