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猫を飼えば

ひとりぼっちはさみしいから
みんな簡単に猫飼えば…っていうけれど

昔々従姉がね
猫が欲しいと飼ったのよ
自分で世話をするからと
ペットショップで買ってきた
値段は二千円

ところが飼えないからとすぐに投げ出して
うちに持ってきた
「ともちゃん、飼って」と押しつけた
(トモちゃんは母の呼び名)

仕方がないから家で飼うことに

生後2ヶ月

キジトラ、雑種のオス猫
しっぽの先がくいっと九十度曲がってた

名前はファンシー、名付け親は父

ファンシーは勝手気ままな猫だった
家と外を行ったり来たり
去勢もせずに(本当はすべきだったけど)
周りにはファンシーの子供がね
いっぱいいたらしい

わたしが病で、病院の治療で死にかかって帰ってきた時にはファンシーは家に寄りつかず

数ヶ月も家出した

死んでしまったのかと思っていたら
ひょっこりと
ある日「にゃ~」とないて
帰って来た

何かを感じるのか不思議な猫

家出はその時の一回だけ

ノミをつけて帰って来れば
家の中はノミがぴょんぴょん飛び回る

あげくだしもする

雀を捕まえて来たこともある

あまりにも泥だらけだとシャワーを浴びせる
猫は水が嫌いだから
ぎゃん泣きする

かわいいけれど
あまりしつこくすると怒る
放って置いてくれと言わんばかりに
噛みついてくる

洗濯する前の父の臭い靴下やワキガの臭いが染み付いた下着がお気に入り

好きな食べ物は鳥の手羽先
よく茹でてもらって、バリバリと骨まで食べていた

十年位生きたかな

わたしもあまり家にいなくて
ファンシーの晩年は記憶が薄い

亡くなる少し前までちょくちょく出歩いていた

最期はガクンと体力が落ちて
こたつの中で母からビスケットをもらって食べていた
母がビスケットを自分の口で柔らかくして、上げていた
やさしい母に見送られて良かったね

ファンシーは毛布にくるまれ、燃やされた
柔らかかった体はカチカチになり
あの世に還って行った

ふっと思い出す

生き物は飼えない
いつか死んでしまうから

飼いたくない、飼いたくない

喜びもかなしみも共有できるかもしれないが

最期に泣くのはいやだから

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