TheBazaarExpress00、ぼくの見たアメリカ~14歳のホームステイ編(1974,09,01)

ぼくはこの夏、一カ月間アメリカへ行ってきました。といっても、観光旅行ではなく、田舎の農家にステイしたのです。今日はそこでぼくが感じたこと、経験したこと、などを話したいと思います。

ステイした場所ですが、ネブラスカ州という所です。その真ん中よりやや北によったブリュースターという人口900人の小さな街です。私の家には、同年齢の男の子とその両親の3人家族で、牛の放牧をやっていました。その面積は4000エーカー、約160ヘクタールです。ものすごい広さです。家の外にでるのでさえ、車で3~4分かかるのです。それに自分の家の郵便受けまででさえ1キロメートル。そんな所ですから、本当に見渡す限りの大草原。その中に、至る所に井戸が掘ってあり、その周りに牛が何十頭かづつ生活しているのです。総数は約2000頭とか―――。とにかくそんな日本では考えられないようなスケールのどでかい所で3週間過ごしてきました。

そんな広いところですから、隣の家までも4キロメートルもあるのです。しかし、交流が少ないかといえばそうでもありません。彼らはたまに、みんなでサンドイッチやジュースなどを持ち寄って、ハイキングに出かけます。また、むこうは16歳で免許が取れ、中学と高校が同じ学校であるため、子供たちでプールに行ったり、映画を観に行ったりしました。そうするとたいてい帰ってくるのは12時近く。あるいは過ぎたりして―――。

しかし親は怒りません。カーニバルなどに行っても、遊ぶときは子供同士で遊ばせてくれます。たとえそれが夜の10時であろうと―――。その辺は日本と違って、理解があるなぁと思いました。そして、どこへ行ってもいろいろ声をかけてくれるのです。みんなとっても親切だし、温かい感じのする人たちでした。

さて、彼らの学校ですが、約50キロメートル離れたとなり町にあります。通学にはスクールバスを使うのです。また高校まで義務教育になっていて、12年まであるのです。そして田舎ですから、1学年1クラスだそうです。そして何よりも羨ましいのは、夏休みが3カ月もあることです。それにクリスマスと感謝祭が一週間程度休みがもらえるのです。もちろんその間中宿題なんていうものはありませんし、彼の机の上には教科書や参考書などは全くみかけませんでした。

では彼らは3カ月間、ずっと遊んでいるのかというと、そうでもないのです。我々がいわゆる勉強をするためにさく時間以上に、彼らは別のことをやっています。それは労働です。彼らはよく働きます。男女を問わず、農家の子は親を手伝うのです。手伝うといっても、我々の受ける感じ以上で、もう本当に一人前に近いくらいです。彼は8歳から自動車の運転をやり始めたそうです。そしていまでは自由自在。しかし、家の敷地内なのですから悪いことではありません。それに自動車でなければ一日かけても牧場を一周できないのです。だからしかたないといえば言えるでしょう。彼は毎日牛にえさをやりに行くのです。それにオートバイ(12歳でOK)を使ってのお手伝い、自分の牛の手入れ、その他雑用。本当に一日5~6時間働いていると思われるくらいです。もちろんおやじはもっと働きますが―――。

その中で、彼のもっとも大切な仕事は、自分の牛の管理です。彼は、家から小遣いをもらっていません。これは友だちになったすべての人達がそうです。10歳の子供もそうだと言っていました。彼らは働くのです。そして彼の場合は牛を売って、また他の子供たちはそれなりの方法でお金を得るのです。だから、なまけていて牛が死ねば、それで一年パーです。確かに彼らには、それなりの休みがあり、12歳からバイクも乗れます。しかし、どれも、遊びのためのものではなく、いわゆる勉強のためでもなく、仕事のためなのです。働くためなのです。そしてまた、それが彼らにとって二つとない重要な勉強なのでしょう。

むこうにいたら、なんだか恥ずかしくなりました。我々は日頃考えたり言うことはしますが、実行するということを全くといっていいほどしていないと思うのです。学校に限らず、家においてでもろくに手伝いもしていません。また、アルバイトなどをはじめれば、そんなことよりも勉強を、という声がかかってきます。大学を卒業するまでスネかじりで、机にかじりついている我々。はたしてこれでいいのかなぁと感じたりしました。

そんなことを感じながらすごした三週間でしたが、本当にすばらしい時間だったと思います。アメリカに行ったというよりも、彼らの生活に入れたというほうがぼくにはうれしく思えるし、またすばらしいことだったと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?