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生成AIは味付けであって、プロダクトの本丸じゃない

企業の日々のCO2削減量を見える化によって企業と個人の行動変容を誘発し脱炭素社会の実現を目指すアプリ、capture.xを展開してるbajjiの小林です。

脱炭素社会の実現。そんな大きな、個人からすると遠い問題を自分ごと化するべく、NFTの活用から始まったこのプロダクト。

次は生成AIを活用した新機能を出すんですが、この半年毎日生成AIと向き合っている中で感じたこと、それを書いてみたいと思います。

それは、初期スタートアップ(調達額で言うなら500億円未満)は、

生成AIは味付けであって、プロダクトの本丸にしてはいけない

ということです。

chatGPTに始まる生成AIは、今年ブレイクしたわけですが、その革新性は誰よりも痛感している1人です。

そして、そんな生成AIを自社プロダクトにも活用しようとしてます。そこで痛感したのが、味付けであって、本丸に据えては勝負にならないということです。

簡単な図でAIを活用したプロダクトのレイヤー図を書いてみます。

いま生成AIを活用した様々なプロダクト、スタートアップが出てきていますが、独自モデルや、独自の解析を謳うのはリスク。そこではほぼ差別化はできない。最近「独自モデルを使っている」というセリフやプレスリリースをよくみることから、強くそうした危機意識が芽生えてきました。

1兆、2兆の単位でそこへの開発投資がなされているレイヤーに戦いを挑むのはかなり無理筋。プロダクトの魅力がそこに左右される作りにしてはならない。

プロダクトの魅力は、結局はユーザー(Cであれ、Bであれ)の負の解決のポイントであり、それをアプリ化、プラットフォーム化できるかどうか。すでに世の中に広がっている他社アプリ(ビックプロダクト)と連携できるかどうか。または、AIに放り込むデータの作り込みのところで独自性が出せるかどうか。

こちらが本丸。

例えば、音声やテキスト、そしてテキストベースのファイルをインプットとした生成AIスタートアップの場合、勝負するのは、その解析部分ではなく、他が出来ないデータを持ってこれるかどうかが勝負どころ。

音声データを生成AIを活用し独自モデルを加えて解析しているので、精度が高く御社に役立ちます。

ではなく、

独自の連携、仕組み、取り組みで生成AIに渡しやすい音声データを作れる(あとの精度高い解析は世界最先端の生成AIがやってくれます)プロダクトなので、御社に役立ちます。

この転換が必要だと感じる。

なぜそう思うか?


現在の生成AIは、世界最大手のテック企業が初めから本丸で打ち出し、世界に向けて普及させてくれている。そして、どんな分野にもご存知の通り、すでにビッグプロダクトがある。

ビッグプロダクトは、すでに顧客接点を持ち、プラットフォームを持ち、CやBへの課題解決を進めている。そこに強力な味付けである生成AIが飛び込んできたのだ。

例えて言うなら、この塩をかければお肉がめっちゃ美味しくなる。

その塩が生成AIだ。

独自の生成AIモデルを組み込んだ新しい表計算クラウドアプリを作るという勝負はできない。

マイクロソフトがExcelクラウドに塩(AI)を加えたら終わりだからだ。

テキストにおける生成AIの味付け方

テキストインプットに生成AIを活用しようと思うなら、そのテキストインプットが流れてくる業務の必然プロセスを取りに行く必要がある。

音声における生成AIの味付け方

音声を生成AIで、テキスト化、要約化、議事録化。ここでは、その音声がスムーズに、必然と、自社に流れてくるルートをこそ取りに行く必要がある。

ちなみに、生成AIで会議のログを作るアプリはいくつか試しているが、あとから斜め読みで要約を見るので役立つ。人の「口語体」を正確にログを作る必要はない、逆に分かりにくいから。おおまかな要約の方がありがたいのだ。

また議事録化の場合、私はそれは人間の仕事だと考える。なぜなら、働き始めた新入社員や若手の最初の仕事が議事録の書記だったのではないだろうか?これは、社員の教育プロセスとして非常に重要な役割を果たしていたと思う。

さっきの発言はどういう意味だろう?
なぜこの人はこういうことを言ったのだろう?
新入社員がそれを簡潔に議事録化するプロセスにおいて、仕事を学び、考えねばならないことを気づいていくからだ。

ファイル(テキストベース)における生成AIの味付け方

もはや同じことになるが、ファイルのインプットに生成AIを活用しようと思うなら、そのファイルが流れてくる業務の必然プロセスを取りに行く必要がある。例えば、日本に流通しているほぼすべての会計ソフトへのデータ連携の維持管理テクニックを蓄積しているとか。制度、規制として必ず提出する場所が決まっているものだとか(行政に多い)。

AIに寄り添うよりも、ユーザーに寄り添う

この現実を受け入れた上で考えるべきは、当たり前ですが、自社の持つ独自性や強みを最大限に活かすことはなんなのだろうか?という原点を今一度見直すことなのかなと思います。

たとえば、capture.xでは、ユーザーが日々のCO2削減量を視覚的に捉え、意識改革の一助とすることを目指しています。これは、単なるデータ提供以上の価値があります。なぜなら、それは個人や企業が環境に対してポジティブな影響を与えるための行動変容を促すからです。

そこに生成AIという味付けを加えようと思っています。いまある魅力を高める「スパイス」として使うのです。もうすぐネイティブアプリをリリースしますが、良い味付け方だなと思ってもらえるようなものに仕上げていきたいと思います

生成AIは、自分たちのプロダクトをサポートするためのツールであり、魅力を高める「スパイス」としての役割を果たてくれると思います。しかし、私たちの提供する核となる価値や解決策がなければ、この「スパイス」も味わい深いものにはなりません。

ユーザーにとって真に価値あるものは何か、そしてそれを最も効果的に提供する方法は何か。この問いに対する答えが、自分たちのプロダクトの核となるべきです。AI技術を活用して、ユーザーの深層にあるニーズや願望に対応するための、新しい視点やアプローチを模索することが重要なのだと思います。

例えば、capture.xではこう考えています。企業の環境負荷をリアルタイムで可視化し、それに基づいて行動を促すためのインターフェースを考えたい。AIは、膨大なデータからパターンを見つけ出し、個々のユーザーに最適な提案を行うことができます。しかしこれは、ユーザーがその行動を変え、結果を実感するための一助となるに過ぎません。重要なのは、ユーザーが自らの意志で環境に優しい選択をすることを容易にし、そのプロセスをサポートすることです。私たちは技術を超えた場所に目を向ける必要があります。

生成AIをはじめとする技術の進歩は、間違いなく私たちのビジネスに新たな可能性をもたらします。しかし、その本質的な価値は、私たちがどのようにそれを利用し、ユーザーの生活や意識に寄り添うかによって決まるのです。

最高の味付けをして、最高に美味しいプロダクト開発を目指したいと思います。


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