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エッセイ 芥川と大正時代

 芥川が活躍したのは大正時代。大正デモクラシーと言われた時代だ。その大正時代の影響を芥川がいかに受けたか、それが作品にいかに表われているかを考えてみたい。
 大正時代は個人の自由が、明治時代と比較して大きく発展した時代である。しかし、その「自由」が芥川には気になった。「自由」とは何か。特に日本人にとっての「自由」とは何か。日本人は「自由」と「エゴイズム」をはき違えているのではないか。「自由」であるためには個人が「アイデンティティ」を持っていなければならない。市民革命を経ずに上からの近代化を推し進めてきた日本の国民にアイデンティティが根付いているとは思われない。そんな人間が個人の「自由」を主張した場合、それは「自由」ではなく、「エゴイズム」の発露になってしまう。
 この「自由」と「エゴイズム」の間で揺れ動く人間の心理を冷静な目で芥川は見つめ続けた。自分自身も含めて。


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