見出し画像

エッセイ こころ優しき摩擦人間たちへ

 文学者は変人です。変人なるがゆえに、この世に生きていく上で、いろんな摩擦が生じます。ザラザラ、ガリガリと音を立て、時には血も出ます。その血を、心の血を、インクとして作品を書くのが文学者という人間なのです。摩擦解消のために。
 そんなものにどんな価値があるのかって本人は思ってしまいますが、それが、案外価値があるのです。摩擦は本当は誰にでも起きるものなんです。普通の人はそれを我慢しているか、あるいは鈍感過ぎて気が付かないだけなのです。
 そういう人が文学作品に触れることによって、「ああ、そう言われれば、自分も感じたことがある」とか「そうか、こういう感じ方、考え方もあるのか、自分は何も感じずに、きょうまで生きてきてしまったなあ」と気づかされるのです。それによって、その人の人生は豊かになるのです。
 読まなければ読まないで、そのまま過ぎていってしまうんでしょうが、それを読むことによって、心の襞が一枚ずつ増えて、それだけ豊かな人生を送ることができるようになる、それが文学だと、私は思います。
 こころ弱き摩擦人間たちよ、心のペンを持て!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?