チーズ王国スイスの終焉にみる「アイデンティティ」こそ経済のドライバー。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:スイスがチーズ大国から転げ落ちた背景。チーズというスイス人のアイデンティティを深堀りする。ひるがえって日本人のアイデンティティを考える。
スイスの最新チーズ事情
近年よく聞く、アイデンティティという言葉。
辞書などでは自己証明とか、自己同一性などと訳されていますが、
僕はだいたい、「プライド」、「その人しか持ち得ない強み」と訳しています。
今日のテーマは、スイスのアイデンティティに学ぶ、日本のアイデンティティです。
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年8月6日号の記事A surprising shift in Switzerland's cheese import (スイスのチーズ輸入の驚くべき変化)という記事によると、スイス人のアイデンティティって「チーズ」なんだそうです。
スイス人が誇りを持っている存在、スイスしか持ち得ない強み、これがチーズだというのです。
記事のポイントはチーズの輸出国スイスが、輸入国になってしまったという嘆き、です。
スイス人のプライドそのものであるチーズは、世界がスイスから買い求め、賞味すべきものです。
それがあろうことか、そのチーズ王国がなぜ自国のチーズを食べず、外国の美味しくないチーズを食べなきゃならないのか。
これはスイス人のアイデンティティ崩壊の危機である、というのが記事の論調です。
スイスがチーズの輸入国になったわけ
それは、国産チーズの価格が高くなり、外国産チーズが増えたからです。
その理由は、3つです。
1.スイス国民が外国産チーズの味がわかるようになったから
それはスイス人のアイデンティティ喪失というより、外国産のチーズが美味しくなった、またスイス人のテイストがより洗練されたからです。
2.この25年でスイスの酪農農家が半減したから
したがって、スイスの酪農の規模が小さくなりました。
かつてスイスの酪農の規模は牛100頭が珍しくありませんでしたが、今は平均27頭です。
規模が小さくなり、チーズ製造の生産性が落ち、国内産チーズの価格が上がったというわけです。
3.2007年にチーズ市場が自由化したから
これでスイスはEU諸国との取引が増え、チーズも関税と割当量の制限がなくなり、スイスへのチーズの輸入が増えたのです。
記事は「スイスがチーズの輸入国になったからって、何も心配する必要はない。外国のチーズを受け入れつつも、それを参考にもっと美味しいチーズを作って、また輸出が増えるさ」と結んでいます。
アイデンティティというマーケティング
さて、きょう僕が皆様に申し上げたかったのは、チーズ大国スイスの危機、とかそういうことじゃないんですよ。
冒頭申し上げた、アイデンティティとマーケティングということなのです。
この記事を読むと、行間からにじみ出ている強い感情を感じるんです。
それは
読者の皆様は、「そんな感情は偏狭なナショナリズムであり、差別だ」とおっしゃるかもしれませんね。
ただ、僕はスイス人のただならぬチーズに関するこだわりは、わかる気がするんですよ。
これもナショナリズムだ、差別だと言われればそれまでかもしれませんが、例えば、この問題って、日本人に例えると、「おこめ」ではないでしょうか。
外国人に込めの本当のうまさがわかってたまるか、というたぐいのこだわり、です。
その他の例を上げると例えば空手です。
確かに身体能力とか、スピードは外国人にかないません。
でも僕は「それって空手かよ?」といつも思うんです。
なぜ、日本人の空手の老先生たちが、未だに尊敬されるのか。
外国人空手愛好者はこぞってこういうんです。
「そこに本当の空手があるから」。
おこめも空手も、日本人のアイデンティティ、なのです。
日本の強みに気づけば日本経済復興
外人だっておコメの旨さがわかるし、空手も理解できる。
正論、です。
でも、これは差別でも国粋主義でもないけれど、日本人には、他国の人々にない日本人の独特の感性や感覚というものがあり、その絶対性つまり唯一無二の強みに気がつかないと、日本経済はこれ以上成長しないと思うんですよ。
おコメや空手だけじゃありません、日本人のアイデンティティと言えるものは他にもあるはず。
結局マーケティングっていうのは、ライバルたちが逆立ちしたってかなわない製品やサービスを開発することに尽きるんですよ。
その核になるのが、日本人のアイデンティティを理解することなんです。
さもないと、西洋の競争原理「大が小に勝つ」を克服できないですよ。
日本のアイデンティティを正しく理解すれば、カネや先進テクノロジーをいくらぶっこんできても、泰然自若としていられると思うんですよ。
でもね、それに気がつくためには、外を向かないとならないんです。
海外視察をする、外国人労働者を雇う、社内英語研修を強化する・・・。
今こそ、そういう外向きの姿勢こそが、日本企業に真剣に求められていると確信する次第です。
野呂 一郎
清和大学教授
僕が今日読者の皆様に、言いたかったことは、このスイスの件は、これからの日本を暗示しているのでは、ということです。
スイスのチーズに当たるもの、つまり、日本人のアイデンティティは何でしょう。
そうおコメです。
補助金や高い関税で、国内のコメは守られていますが、自由貿易
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