コロナ鎖国で失った国家100年の計
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ニューヨーク・タイムズが日本のコロナ鎖国を批判した裏にあるもの。国益を損なう最たるものは、信頼を失うこと。
GWの空景気
GW、観光客でごった返す浅草、仲見世通り。しかし店の人の反応ははかばかしくありません。
「それでも例年の3割くらいかな」
「私たちはインバウンド(外人観光客)頼みだから、関係ないわ」。
こうした観光ビジネスにたずさわる人々の嘆きの声こそ、コロナで失った国益を象徴しています。
ニューヨーク・タイムズ4月17日号(Weekly版)は、この問題に関して我々の代弁をしてくれているようです。
記事のタイトルは「外人観光客お断り?でも日本的にはそれでまったく問題なしNo foreign tourists? That's just fine with Japan」と、ど真ん中を攻めてきました。
観光立国はどこへ行った
外国人観光客を呼び込もうと、日本政府観光局はウェブサイトを刷新、各地の絶景とおもてなしを味わってほしいと猛アピールを開始しました。
しかし、この国はパンデミック初期から国境を封鎖、最近になってやっと一部の留学生と外国人ビジネスパーソンに、再入国を認めたばかりです。
これは中国以外のほとんどのアジア諸国が、外国人の入国規制を緩和してきた動きとは、正反対です。
ニューヨーク・タイムズが指摘するのは、日本のリーダーたちの保身です。
ニューヨーク・タイムズは、国内の観光産業へのダメージも心配します。
日本アルプスのスキーリゾート、九州の温泉街、離島が特に経済的ダメージを受けていると指摘し、経済をシャットダウンした損失は、2020年だけで900億ドル(約9兆300億円)に上ると試算しています。
一方でニューヨーク・タイムズは、観光客の傍若無人なふるまいが社会問題化している京都なども取材し、コロナで一時の安息を得た観光地の複雑な事情もレポートしています。
声を上げない国民と意見を聞かない政治家
コロナで強制時短を余儀なくされたと思ったら、いきなり解除。
解除かと思えばまた時短。
ロックダウンこそありませんでしたが、この2年、政府は国民の安全と経済のバランスを取ることに関して、迷走につぐ迷走をしてきました。
その原因はニューヨーク・タイムズの指摘どおり、政治家の保身に違いないと思いますが、もう一つの原因があると思うんです。
それは、日本人が国のリーダーに甘い、ということです。
リーダーとは説明責任をはたす人のことです。
説明責任とは、事実に基づく見解と数字をもとに論理的に説明し、国民を納得させる責任のことです。
散々言われてきたことですが、このコロナ禍の2年余、日本のリーダーたちはビジネスの規制をする理由を論理的に説明し、国民を納得させることはありませんでした。
外人観光客の入国規制も観光事業者にとって死活問題だったのに、飲食業の窮状におおわらわを装い、国のリーダー達はほぼ何の説明もしませんでした。
「感染を広げない」が錦の御旗のようになっていたことも、政治家たちの説明責任を曖昧にしたことは否めません。
国の将来は信頼の積み重ねにある
今回、問答無用の国境閉鎖で日本は、親日的な方々も含めて多くの諸外国の人々の信頼を失ったと思います。
それはあいまいな入国禁止基準、コロナ感染に関する定見のなさ、諸外国への説明責任の放棄が原因です。それが”差別”ととられたら目も当てられませんが、実際そういう声も起こっています。
僕は外国に対してやみくもに入国規制を緩めろと言っているわけではありません。
外国に対して「日本は日本のルールがある」と言いたいならば、そのことを論理的に説明できればいいのです。
その説明ができない、しない、リーダーたちの国際感覚を心配しているのです。
理不尽な対応をされて、離日を余儀なくされた留学生、仕事で日本に関わるビジネスパーソン。
きょう、GWの真っ只中、「インバウンドが命綱」とつぶやいた、仲見世通りのお煎餅屋さんのおかみさんに同情します。
いつまで観光をストップさせるつもりなのか。
しかし、国益損失の最たるものは、ビジネスの貿易収支の巨額な損失よりも、外国人の日本に対しての信頼なのではないでしょうか。
カネは取り戻せても、信頼は取り戻せないからです。
国家100年の計は信頼にあり、それを失ったかもしれない日本は、
この2年を振り返り反省すべきだと思います。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
またあした、お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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