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WWE、最大のネックは取締役会

この記事を読んでプロレスファンのあなたが得られるかもしれない利益:WWEのネックはボード取締役会。ファミリー経営の意外な盲点はボード。新日本プロレスも世界進出するなら他山の石にすべきもろもろ。

ピンチに立たされたWWE

昨日、WWEの内部問題に絡んで、KUSHIDAがワリを食ったのではないかと論じました。

最初はそんなことを書くつもりなんて全然なかったんですよ。でも、何か降りてきたんです(笑)

インスピレーションか、潜在意識か、シンクロニシティか、いずれにせよ、いいことです。なぜならば、いい記事とは(我田引水ですが)書き手が、「そんなもの書くつもりはなかった」の感をいだくものだと思うからです。

さて、今回の記事のきっかけになった、The Wall Street Journal2022年6月17日号は、WWEが内部の不倫問題でCEOのビンス・マクマホンJr氏が責任を問われていることを報じています。

不倫疑惑でWWEを去るある社員に関して、秘密の和解金300万ドルを支払った件で、WWEのボード取締役会がCEOのマクマホン氏と、タレント・リレーション(talent relation労務管理)担当のジョン・ローリナイティス氏(John Laurinaitis)の不正な関与がなかったか、現在調査中だというのです。

僕はこの事実に、WWEの組織としての最大の弱点があるのでは、と見ているんです。

それは、ボード取締役会です。

お手盛り感ぬぐえぬボードメンバー

図式はこうなんですよ、今この問題に関してWWEのボード(取締役会board of directors)が調査中だというのです。

しかし、WWEのボードの組成を見ると、創業者のマクマホン・ファミリーばっかりです。

http://ventilatorblues-sway.blogspot.com/2016/03/wwe-1187.html

見てみましょう、ボードの総数は12名。

会長のビンス・マクマホン氏、マクマホン氏の娘のステファニー・マクマホン氏、ステファニーさんの旦那の”トリプルH”ことポール・レベスク(Paul Levesque)氏、WWE社長のニック・カーン氏(Nick Khan)、前ソニー・ピクチャーズ・ホームエンタテイメントのエクゼクティブ、ジット・シン(Jit Singh)氏らが、中心メンバーです。

トリプルH夫妻。https://qr.quel.jp/pv.php?b=3bZJpeo

調査を担当するのは、ジット・シンだということです。

ビンス・マクマホン氏は疑いがかかっているため、会長の座を降り、その間臨時会長代行として、ステファニー氏が会長につきます。

ステファニー氏は、WWEのチーフ・ブランド・オフィサーを務めていましたが、それを降りてトップの座に一時的とはいえ就任するわけです。

チーフ・ブランドオフィサーというのは、ベタに考えればWWEの命とも言えるブランドを維持し、強固にする役割です。ステファニー氏はブランド・マネジメントのプロではないはずで、内部のものを無理やり要職に就かせた感は拭えません。

さて、幹部の顔ぶれは、マクマホンファミリー中心で、そのボードがボードの中心人物の悪事を暴こうとする図式は、お手盛り感満載といえます。

しかし、ボードメンバーは、株主が年次株主総会で選ぶことになっており、株主の総意であれば問題はありません。

取締役会の役割とは

さて、ここで取締役会(ボード)というのが、そもそもどういう役割を持つべきかを見てみましょう。

1.ガバナンス
ガバナンスとは取締役会の構造、運営、意思決定のやり方を決めることです。そのためのプロセス、ルール、システム、責任のあり方を整えます。

2.戦略的方向性
成長の方向性を決める、少なくともアドバイスをする役割です。

3.アカウンタビリティ
説明責任のことです。組織を監督し、組織の活動について説明を行う法的責任があります。組織の資産と資源を守るために活動します。

以上教科書的なボードの役割をお示したのですが、要するにボードは攻めというよりも、守りが大事なんです。

組織を防衛するためには、法や倫理に触れないこと、そして説明責任をしっかり負うことです。

しかし、今回の問題についてWWEは、The Wall Street Journalの取材から逃げ回っています。

はっきりさせないことも多々あり、もちろん調査結果については後で報告があるでしょうが、こんなファミリーが支配しているボードの組成をみても、とても説明責任を果たしているとはいえません。

プロレスは日米を問わず、どうしてもロッカールーム政治みたいな、透明性とは程遠い文化があるので、ボードが意図しているある種のオープンさ、正々堂々さがないのかな。

WWEは、リング外では正々堂々のクリーンファイトを見せるべきです。

そのためには、まず、ボードを入れ替えるべきです。

それでは、また明日お目にかかりましょう。

                           野呂 一郎
             清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


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