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マウンテンデュー新製品(来年発売)の売れ行きを占う

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:アメリカ飲料業界の最新地図、マウンテンデューというブランドの意味、ハードセルツァーとは何か、ドリンク戦国時代に勝つヒント。

マウンテンデューの日米における立ち位置の違い

皆さんは、“マウンテンデュー”を飲んだことがありますか。僕は大昔に飲んだっきりです。一体何の味なんだ、という違和感がその当時あり、正直好みの味ではなく、リピートしてません。でもまだペプシコから販売されているんですね。

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それなりのファンがいるそのドリンクの現在地を知るべく、ウィキペディアを見ると、日本では1997年にサントリーから発売されているんですね。レモンライムフレーバーの弱炭酸飲料とあります。CMもみたことないし、特定ファンに向けてひっそりと売られている感じです。

しかし、これがアメリカとなるとガラッと変わるんです。1990年くらいのことですから、もう30年以上も前の僕の留学時代ですが、マウンテンデューは人気飲料だったのです。えー、随分日本と違うんだな、それが僕の印象でした。

あたり前のことなのですが、日本とアメリカでは、消費者のテイストが違うわけです。いや、そもそも、個人でもジェネレーションでも味覚の差はあるわけです。

新発売・ハード・マウンテンデューの全貌

さて、そのマウンテンデューを発売するペプシコが、最近記者会見を行い、マウンテンデューの新製品を発表しました。それは、マウンテンデューのアルコール入りバージョンで名前もハード・マウンテンデューです。これはボストン・ビールというアルコールメーカーとのタイアップで開発された新製品です。

ボストン・ビールは1985年に設立された、同社いわく本格的なクラフトビールをアメリカに紹介した、ビール会社です。香り高く、バランスの良い、複雑で、厳選された原料で蒸留されたクラフトビールが自慢です。ボストンラガーが自慢です。

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新製品ハード・マウンテンデューの特徴

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・フレーバーはオリジナル、ブラックチェリー、ウォーターメロンの三種
・アルコール5%
・ノーシュガー
・カフェインゼロ

新製品発売の背景

1.ハードセルツァーの大ブーム

セルツァーとは炭酸水のことです。ハードセルツァーとはアルコール入り炭酸水のことで、サトウキビ由来の糖分で発酵で生み出されたアルコールを使っているのが特徴です。グルテンフリーで低カロリー、ヘルシーで、西海岸を中心に2019年から大ブームなんです。
写真はエンドレス・サマーというブランドのハードセルツァーです。

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ボストン・ビールはTrulyというブランドで、12フレーバーのハードセルツァーを展開しています。ちょっと映像を見てみましょう。若者向けなのがわかりますね。

2. ボストンビールの誤算

しかし、先月、ボストンビール箱と次第に四半期の、ハードセルツァーの売れ行きが予想通りに行かず、このカテゴリーを過大評価していたと発表しました。調査会社ニールセンIQ(Nielsen IQ)によると、ハードセルツァーの売れ行きはやや下降傾向です。

3. コカコーラ、ペプシコらのヘルシー飲料志向

ドリンクメーカー各社はよりヘルシーで糖分を抑えた飲料開発に血眼で、コカコーラを始めとするメーカーはダイエット・ソーダ、フレーバー付き炭酸水、ボトル入りミネラルウォーターのラインアップを強化しています。

ペプシコは今年、エナジードリンクのカテゴリーに進出し、マウンテンデュー・ライズ(Moutain Dew Rise)を市場に出しています。

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考えてみたい点

1. 味覚は進化するのか
ボストンビールCEOのウィッカー(Wickr)さんは「我々は大人のドリンカーのテイストは進化しているのを知っている」と言っています。

まあこれは普通に考えると、時代によって消費者のテイストは変化する、という普遍的な事実を言ったに過ぎないということですよね。

今のソフトドリンクを飲む人たちは、調査データが示すように、確かにシュガリー(砂糖たっぷり)飲料は好かれなくなっているのはわかります。低カロリー、ヘルシーがその答えなのか、というとハードセルツァーが先行き不透明だったりして、よくわかりませんね。

2. ドリンク市場で頭一つ抜けるにはどうすればいいか

市場調査、消費者グループインタビューなどの正攻法で、今のテイストを見つけるのはみんなやっていることでしょう。

日本のビール業界最大のブレイクスルーである、アサヒ・スーパードライの成功物語をレビューするのは有効かと思います。それでもダメなら、一昨日のタイガーマスクかなあ。


3. マウンテンデューというブランドの威光は別カテゴリーで生きるのか

ペプシコ・ノースアメリカの責任者カーク・ターナー(Kirk Tanner)さんは、自社のブランドに育て上げたマウンテンデューについて、こんなふうに語っています。

「マウンテンデューは80年間現場にチャレンジしてきて、勇敢なフレーバーを作り出し、考えられないイノベーションを繰り広げ、何百万のファンをつかんだ」。

一見不変の伝統に見えて、常に改良の努力を惜しんでこなかったということでしょうか。さて、そのマウンテンデューがボストンビールと組んで満を持して発売するハード・マウンテンデュー。マウンテンデューの威光はどの程度通じるのでしょうか。

ペプシコによれば、この新製品は別会社を作って売る、ということなので、新製品そのものよりも、ペプシコのマーケティング技術がものをいうかも知れません。

さて、マーケティングの講義みたいになる前に、今日はこのへんで終わりにしましょう。

また明日お目にかかりましょう。

                                                                                                         野呂  一郎

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