ペプシの炭酸が効いたケチャップはどう?
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:アメリカに限らないかもだが、ケチャップ、マスタード、ドレッシングなどの香辛料、ソースは隠れたニーズが存在する。日本の食品関連企業はこの宝の山にまだ気がついていない。今日のはなしは単なるマーケティングではなく、世界に変化が起きてる、という重大事だ。
米国を分裂させてるのはトランプだけじゃない
それはランチ(ranch)と呼ばれる、アメリカ人の大好きなドレッシングです。
サワークリームにマヨネーズ、にんにく、玉ねぎなどを混ぜたものですが、最近これにケチャップを混ぜた新製品“Ketchup and Seemingly Ranch(見たとこランチなケチャップ)”が発売され、アメリカの家庭内で従来のランチ・ドレッシングにこだわる守旧派と、ランチ・ドレッシング風ケチャップを支持する改革派の対立を生んでいるのです!
ソースやドレッシングにこだわるアメリカ人のエピソードは、目新しいものではありませんが、SNSの発達により、大きな話題や論争そしてビジネスチャンスを生んでいます。
バイデンを支持しているとされる、アメリカの新・歌姫テイラー・スィフトが、フットボール観戦中チキンにこの”ランチ・ドレッシング風ケチャップ”をつけて食べてる写真がアップされると、がぜんこの香辛料が注目を集めています。
シカゴに住む50歳の店員は、マクドナルドからホットマスタードソースが消えたのに抗議してフェイスブックで、“Bring Back Hot Mustard Sauce McDonald’s.”(マクドナルドにホットマスタードソースを復活させろ!)というコミニュティを作って、300人のフォロワーがついています。
タコベルのチキンナゲットに塗りつけるスプレッド(Chick-fil-A’s Honey Roasted BBQ spread)は一部のファンにウケ、オンラインで商品化運動がおこり、瓶詰めが発売されることになりました。
香辛料マーケティング最前線
The Wall Street Journal2024年3月4日号の記事、America’s Condiment Invasion Is Dividing Households: ‘I Want My Fridge Back.’(アメリカの家庭に香辛料メーカーが急襲、私の冷蔵庫を返して)は、非常にマーケティングの勉強になりましたよ。
例によって俺流解釈で紹介しますね。
1.主役はメインの食べ物じゃない、香辛料だ
タコベルっていうペプシコが経営する、タコスなどのメキシコ料理を提供するファストフードのマーケティング部門トップ(Taco Bell’s chief marketing officer)のテイラー・モントゴメリー(Taylor Montgomery,)さんは、こんな驚くべきこと言ってるんです。
よーするに、チキンナゲットを売っているけれど、それはあくまでソースを開発して売るため、そういうんですね。
なるほど主客逆転という、マーケティングですね!
これはソース香辛料のポテンシャルを大胆に宣言した、マーケティングの名言ではないでしょうか。
2.客に香辛料を作らせろ
香辛料メーカーハインツは“Heinz Remix”という、お客さんがタッチパネルで自分だけのオリジナルの香辛料を作れるしくみを開発しました。
お客さんは基本のケチャップ、マスタードに加え300種類もの香辛料のラインアップから好きなものを足して、オリジナルソースを作ることができます。
このお客さんのオリジナルソースレシピは、デジタルで自動で本社に送られ、ハインツはこれをヒントに新製品ソースを開発するというわけです。
3.意外性を追求せよ
アメリカ人も味の冒険をするようになったのか、韓国のコチュジャンとか、メキシコのタジン(Tajin)などの香辛料がレストランで使われるようになってきました。
日本でもファンが多い、ビッグマックのあのソース、アメリカにもファンが多く、ビッグマックソースを売り出す業者があらわれています。
ポパイズ(Popeye’s)は、主力製品のチキンサンドイッチに、高級食材トリュフを使ったマヨのソースをかけ、高価格帯に挑戦しています。
香辛料やソースのたぐいは、安物という常識がくつがえりつつあります。
ペプシコはPepsi Colachup(ペプシ・コーラチャップ)なる、究極の香辛料を発売しました。
まんま、です(笑)
ケチャップにコーラの刺激があるとか・・しらんけど・・
脇役が主役を凌駕する時代だ
思うにソースという脇役が主役にのし上がる時代じゃないでしょうか。
少し前に、マスクトニーズというお話をしました。
タイガーマスクとかUWFは、マスクトニーズ、つまり実際はあったのだけれど、企業側が気がつかなかったニーズだったのです。
企業はあまりにもデータや数字に頼ってきたために、隠されたニーズに気がつかなかったのです。
しかし、食品業界に限りませんが、製品が溢れ、競争はますます激化し、香辛料という小さい存在にも脚光があたってきたのです。
それは、マニアと呼ばれる、いままでマーケティング的に無視されてきた人々にもスポットライトが当たり始めたことを意味します。
マイノリティそしてマイノリティがこよなく愛する、変なテイスト。
これがメジャーになりつつある時代なのです。
今日のはなしは単なる新マーケティング、じゃなくて、変化の兆し、そう考えるのです。
野呂 一郎
清和大学教授
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