プロレス&マーケティング第67戦 大学授業実況中継 女子プロレスの未来
この記事を読んで女子プロレスファンのあなたが得られるかもしれない利益:グローバリゼーションは日本の女子プロレスをどう変えたか、また変えつつあるか、を考察する。
女子プロレスとグローバリゼーション
この授業は国際経営がテーマだけれど、あらゆる事象がグローバルにつながっていることを考えてみたい。
経営学は、現在進行系の出来事を題材にしないと意味がない。
なぜならば、経営学とは「変化とは何か」を勉強する学問だからだ。
そんなことで、今日は僕のnoteの最新記事から、女子プロレス新団体マリーゴールドをとりあげることにするよ。
ポイントは以下の4点だ。
1.モチベーションとは何か
2.WWEの影響力
3.世界的な人材獲得競争の激化
4.日本という新たな価値観
モチベーションとは何か
結局ね、経営学って、モチベーションのことなんだ。
やる気さ。人を動かす根本がモチベーションなんだ。
経営とはなんのことはない、人をどう動かすか、つまり、いかにモチベーションを創るか、ってことなんだ。
その意味で、このマリーゴールドっていう新団体は意味深だよね。
つまり、この新団体に参加したジュリア、林下詩美以下13名の女子レスラーは、スターダムという団体のモチベーションに満足してなかった、っていうことだよね。
もちろん、これはグローバルな動きにも関係している。
カネにも、待遇にも、やりがいにもモチベーションは関係している。
金銭的なことは明らかになってないけれども、フツーに考えれば、選手たちはスターダムにいたほうが、経済的な安定は得れたはずだ。
なにせスターダムは、業界の盟主新日本プロレスの傘下だからだ。
その背後には、ブシロードという安定した企業がいる。
カネのためなら、なにを好き好んで、海のものとも山のものともわからない新団体に参加するものか。
彼女たちのモチベーションのありかは、「やりがい」ということになる。
事実、ジュリアや林下は、「スターダムでは闘いたい選手と戦えなかった」と漏らしている。
WWEの影響力
現在の日本プロレス界は、メジャーリーグと同じ構造だ。
つまり日本市場のプレイヤーが、世界の舞台で活躍したくて虎視眈々とその機会を狙い、メジャーリーグはジャパンマネーを目当てに、また勝利請負人として、日本人のスター選手を物色しているという構図だ。
オカダ・カズチカは年間数億円のスカウトマネーを、WWEの新たなライバルAEW(オール・エリート・レスリング)から提示されたと言われている。
ジュリアもWWEに行くのでは、と言われていたがマリーゴールドに参加を決めた。
WWEに魅力は感じたはずだが、マリーゴールドのモチベーションが勝ったということだ。
ジュリアの逡巡にはSareee(サリー。eは3つ)の影響があると見る。
2020年から2023年まで、SareeeはWWEで活躍した。
しかし、日本の女子プロレスとWWEではプロレスが違う、要するに価値観が異なる。
いい悪いでなくて、WWEは徹底したショービジネスなのだ。
Sareeeは心ならずも、セーラー服を着せられメガネ姿のアニメキャラクターに変更を余儀なくされ、リングネームもSARRAYにチェンジした。
この経験はSareeeのプロレス的視野を広げたことは間違いないが、同時に自分のやりたいプロレスとは何なのかを、彼女にはっきり自覚させたのだった。
答えは、言ってみればサリー流のストロングスタイル、つまり勝負本位のレスリングである。
ジュリアは、Sareeeのこの間の葛藤をよく知っているはずだ。
カネじゃなくやりがい、グローバリゼーション下の女子プロレスにおけるSareeeの問題提起はここにあった。
世界的な人材獲得競争の激化
メジャーリーグが人材を世界に求めているのは、目先の金儲けや勝利のためだけではない。
グローバルな市場で他のスポーツと戦って勝つため、だ。
メジャーリーグの人気に陰りが出ている。
アメリカの大手世論調査会社のギャラップは2024年2月、全米の人気スポーツの世論調査結果を公表した。 「最も人気なスポーツ」はアメリカンフットボール(41%)が首位であり、2位に野球(10%)、3位にバスケットボール(9%)、4位にサッカー(5%)が続いた。
メジャーリーグはNFLとの差を縮めるためには、野球の市場をよりグローバルに広げるしかない。
WWEも同じ理屈で、アメリカン・プロレスを世界に広めるしかなく、今後は日本のプロ野球のように、青田刈りつまり日本のプロレスデビューの前に、WWEで初マットなどという光景が必ず見られるはずだ。
しかしながら、日本のマット界はこうした才能豊かな人材を引き止めておくチカラはない。
日本という新たな価値観
WWEの対抗勢力AEW(All Elite Wrestling)は、創設者であるケニー・オメガの影響か、日本プロレスのエッセンスが色濃い。
私見をいうと、AEWのプロレスは日本のプロレスとWWEのハイブリッドだ。
新日本プロレスの有料配信システム、新日本プロレスワールドが世界発信されている影響もあって、世界に「日本のプロレス」という価値観がゆきわたり始めた。
今度は日本の女子プロレスの番だ。
日本の女子プロレスという価値観を世界に広げ、市場を大きくしたらどうなのか。
マリーゴールドには、それを期待したい。
世界戦略については、また別の機会で皆さんと考えましょう。
以上、グローバリゼーションにおける女子プロレスを考えてみたよ。
野呂 一郎
清和大学教授
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