大学授業実況中継 寿司職人として海外で成功するには。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:寿司職人として海外で大成功、という事例が最近数多く報告されている。決め手は技術か、経営の才か、それとも語学か。
グローバリゼーションのジレンマ
この講義は、グローバル化と日本がテーマだ。
にわかに沸き起こってきた反グローバリゼーションは、コロナと戦争がもたらした結末だ。
コロナでグローバルなサプライチェーンが途絶えた。
中国やベトナムといった製造拠点から、世界中に物資が送られる流れが、感染症のまんえんで完全に途絶えたのだ。
海外からのエネルギー、食料供給は、ロシアや中国といった国々に依存している。
日本だけではない、ヨーロッパの国々の多くが石油、天然ガスをロシアに依存している。
いくら経済制裁をロシアに課しても、基幹エネルギーをロシアに頼っている限り、効果は限定的だ。
しかし、グローバリゼーションは、もう後戻りはできないのだ。
下の図のような要因があって、必然的にグローバリゼーションが起こったからだ。
世界の人、モノ、サービスはますます国境を超えて、飛び交う。
スシも、年々世界に広がり、寿司職人は高給で雇われる。
今日は、キミが寿司職人として海外で成功する絵を描いてみよう。
3ヶ月で海外でスシが握れる時代
寿司職人と言えば、寿司を握るまで10年かかる、と言われてきた。
米を研ぐのに3年、厨房の清掃に3年、出前で得意客の顔を覚えるのに3年賭けて、やっと魚のさばき方を教わるのだ。
徒弟制度の封建主義といえばそれまでだが、「そこには時間をかけて現場を理解するという合理性が隠されているのだ」、との考え方もある種、説得力がある。
しかし、これを馬鹿げた悪弊と考える人もおり、また折しも日本食ブームで寿司職人が足りないこともあり、「寿司職人養成3ヶ月講座」が誕生した。
まずはこのビデオを見てもらおう。
寿司職人で稼ぐのは腕じゃないという事実
このビデオで、すしアカデミーの社長が言った言葉に注目してほしい。
コミュ力、そうコミュニケーション能力のことだ。
海外で客に支持される職人になるためには、板前としての実力より、客あしらいのうまさのほうがよっぽど重要だ、というのだ。
ネタを英語で面白おかしく説明したり、スシの歴史を話したり、美味しい食べ方を教えたり、コミュニケーション能力さえあれば、お客さんを楽しませることができる。
あくまで一般論だが、海外では程度の差はあっても、一人で食事を黙々と味あうなんていう客は少ない。
スシは新鮮さが命なので、カウンター越しに板前と相対するかたちになり、そこではシェフは美味しい寿司だけではなく、面白いトークも提供しなくてはならないのだ。
武道もコミュ力が必須の時代
日本ブームの一端を担っているのが、武道界だ。
柔道、空手、剣道、合気道もワールドワイドにますます広がっている。
しかし、実技だけでなく、トークで武道の奥義に触れ、外国人の武道好きの好奇心を満たすような人材は圧倒的に不足している。
考えてみれば、それはスシや武道だけではないのだ、日本の政治、ビジネス、社会構造、ありとあらゆる事象を言葉で説明して、理解させる人材がほとんどいないのだ。
ここ10年、政府はアニメはじめ、日本のサブカル普及に力を入れてきた。
しかし、はかばかしい成果をあげてないのは、語り部がいないからだ。
僕はそう断言する。
これは単に、日本語を英語に直す能力の問題ではない。
結局、外国人は最後は本質に迫ってくる。
なぜ、スシをこう握るのか、なぜ、こうスシを並べると日本人はきれいに感じるのか、などだ。
武道ならば、どうしてこの動きが必要なのか、なぜ稽古では反復を執拗にやらせるのか、などだ。
その答えは、例えば空手ならば、その発祥が土地の支配者の圧政に苦しむ農民が、武器を持たずに立ち上がった歴史に触れるのがいいだろう。
反復して身体に刷り込ますことで、潜在意識にも通じるようになり、考えなくても身体が反応するようになる、こういった説明が必要だ。
英語のみならず、知識や教養、そしてその応用力こそが問われるのだ。
相互理解こそがグローバリゼーションの成功
偉そうに、究極のそのチカラとは何かを示そう。
例えば、岸田さんが、ついせんだって米議会で演説したよね。
あれはコミュ力とは言わないんだって。
もし岸田さんが演説が終わって、「any questions?何か質問は?」と言って自由に質問させて、それをうまくあしらってはじめて、彼ら彼女らの尊崇をうけることができるんだ。
それをさ、誰かが書いた出来合いのあんな抽象的な原稿を読み上げて、拍手をもらっていい気になってるなんて、恥ずかしいよ日本国民として。
グローバリゼーションには段階があり、まずは製品やサービスを通じて、その国に親しみを持ってもらうことだ。
次の段階は、製品やサービスの背後にある考えや、哲学をしらしめることさ。
しかし、この段階が全くできてないんだって。
結局グローバリゼーションでも、どんなビジネスでも、最も重要なことは、信頼を築くことなんだよ。
そのためには相互理解が欠かせない。
それができてないんだって。
野呂 一郎
清和大学教授
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