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足首骨折(外果骨折)の再骨折リスクを力学的に考察してみる

 6月末に骨折をして手術でプレートとボルト固定を行い、最近はだんだんと運動も行えるようになってきました。さて、今日は本業のエンジニの知識を生かして、患部にどんな力が加わるとリスクがあるのかを力学的に考察してみたいと思います。概算でも具体的な数値と合わせてリスクのある行動がわかれば、今後の運動もある程度安全に行うことができるかもしれません。
 目的は、患部付近のどこにどれくらいの力が加わると再骨折のリスクがあるのかを明らかにすること。
 結論からいうと、骨が繋がるまでは患部に対して足の内側から外側に570N程度の力(58kg・f=58kg)が加わるとプレートの上端を支点に真ん中のねじが抜ける恐れがありそうです。

 ということで、以下の流れで考察内容を説明していきます。
  1.骨の強度の確認
  2.ねじの引き抜き強度の確認
  3.再骨折のパターン
  4.まとめ
  5.感想

 ※医学的に全くの素人が自身の怪我について自己責任で書いた文書です。特定の医療行為を進めるものではありません。

1.骨の強度の確認
 まずは骨の素材としての強度や特性について確認します。調査方法はネットで検索です。医学はさっぱりわからないので探索もそこそこに、こちらの論文を参考にしてみました。
Effect on the femur of a new hip fracture preventive system using dropped-weight impact testing
 1998年のJOURNAL OF BONE AND MINERAL RESEARCH掲載の論文で、大腿骨骨折をシリコンゲルで予防するといった内容の論文です。論文中では大腿骨の上側を両端を接地する形で固定し、重しを上から落とした際の骨の状態を評価しています。評価結果から、すべてのサンプルに同条件で衝撃を与えても、骨折の仕方は6パターンと一様ではないこと、骨密度と強度は比例することがわかります。
 このデータを今回の足首の腓骨外果骨折に無理やり当てはめてみます。
骨密度は測ったことはありませんが、健康な成人男性だとだいたい1.2g/cm^2くらいのようです。(https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web18_11_8/)論文の評価結果のグラフで一次近似線から対応を見ると、1.2g/cm^2の骨密度の大腿骨は4300Nくらいの加重で骨折することがわかります。
 あとは大腿骨→腓骨への変換の係数をいくつにするかなのですが、これは簡単には調べようがなさそうです。考え方としてはまずは骨の断面積の比を掛けるでいいと思うのですが、大腿骨も腓骨も断面積がわかりません。手元に模型でもあればすぐに切断してみるのですが、この手の医学模型はめちゃめちゃ高そうですね…。ということで、ネット上の写真で見た感じでもうざっくり75%かけくらいにしてみます。
 以上、見つけ出した論文と骨密度のデータ、それと適当な大腿骨→腓骨への変換係数より、私の腓骨は3225[N](4300[N]×75%)くらいで折れる、ということが類推できました。

2.ねじの引き抜き強度の確認
 再骨折パターンを見る前に、もう一つ、ねじの引き抜き強度も確認します。こちらは新潟大の論文が見つかりました。原先生がどうやらそのすじの有名な方みたいです。(ドリル下穴径が海綿骨用スクリューの固定強度に及ぼす影響)内容はタイトルの通りで、豚の大腿骨に骨用のねじを止める際に挿入トルク、下穴径、ねじ径を振って引き抜き強度に差が出るか、という実験が行われています。結果より豚の大腿骨の場合引き抜き強度は、ネジ長16mmで約900[N]、50mmで約1900[N]のようです。挿入される側の素材のムラ等も考える必要はありそうですが、基本的には一般的なねじ同様、引き抜き強度はねじ長に対すして比例と考えてよさそうです。
 さて、論文中は豚の骨が使われていましたが、これを人間の腓骨に適用していいのかはわかりません。まあ自分の体の話なので豚も同じ哺乳類とみてそのまま数値を持ってきます。50mm:1900[N]をとりねじ長x(mm)に対して、引き抜き強度[N]=38x[N]とします。(いないと思いますが、同様のことをされる場合はより適切なデータを参照されるようお願いします。)


3.再骨折のパターン
 骨の強度とねじの抜けやすさがわかったので、患部のレントゲン写真から再骨折のパターンを洗いだします。考えられるパターンを表にしました。

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 それぞれのパターンについて簡単に見ていきます。No.1はてこの原理で上端が折れる場合ですが、腕の長さが大体1:1なので、すでに折れている個所が折れたときと同じくらいの力で折れると予想できます。No.2は上側のねじが全て抜ける場合で、荷重で見て230kgくらいと無茶をしない限り大きなリスクはなさそうです。No.3が問題でくぎ抜きと同じ要領で、上側のねじが抜ける場合です。てこが効くため、計算上58kgと体重以下の加重でもねじが抜ける恐れがあります。備考欄に書いた通り、実際はもう少し強度があると思いますが、骨がつながるまでは足首固定のサポーターをつけて、横方向の加重も極力避ける必要がありそうです。No.4は足が外側にねじれるパターンです。計算は難しいですが、備考欄よりNo.1~3の方が先におきそうです。No.5はお医者さんに聞いたパターンで盲点でした。患部に外から力が加わるパターンで、下側のねじの短さの為に、比較的弱い力で下側の骨が内側に抜ける可能性があります。骨がつながるまではサッカーや格闘技は厳禁ですね。以上、No.3を中心に骨が繋がるは、横方向の加重にはシビアに気を付ける必要がありそうです。

4.まとめ
 スキー再開はおいておくとして、復帰までの運動もやはり気を付ける部分はあるようです。ただ、裏を返せば垂直方向の加重はあまり問題ではないということも推定できます。簡単なジョギングやトレーニングからリハビリに励んでいこうと思います。
 と、まとめましたがこれを書いている時点でほぼ繋がっていたりします。慣れない部分もあり、大分調査からまとめまで時間がかかってしまいました。この後、骨が繋がっている場合の再骨折パターンも記事にしたいと思います。

5.感想
 今回医学という専門ではない分野を調べるのは苦労しましたが、同時に新鮮で面白かったです。サンプル入手の難しさの為か、骨の強度のデータが見つかりづらかったり、実際の論文では本物をサンプルに使用していたり、ホルマリンってformalinって書くんだ、とか普段は受けない刺激がありました。まだまだ続き自身の今後のキャリアも考えて、今ある専門を軸に新しい分野触れることを積極的に行っていきたいです。
 今回の考察から、思った以上に目安としていい数値が得られたなと自分では感じています。今後運動するにあたっての不安を、ある程度具体的にイメージできる形で低減することができました。調べてみると、有限要素法を用いた3次元の骨強度モデリングソフトといったものもすでにでているようです。簡単な計算にしろ、ハイパワーな可視化ソフトにしろ、より一般的に、骨折に対して目安となる力とリスクがわかるようになれば、患者のQOLを上げることができるのかなと感じました。

 ここまで読んでくださりありがとうございます。(そんなもの好きな方いるんでしょうか?)次回は骨が繋がった後についてみていきたいと思います。では。



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