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ただならぬ他人事感/引き際のゴタゴタ/『悔しみノート』を読む

2021年1月10日

年末年始も新型コロナの拡大がとどまらず、首都圏の1都3県に再び緊急事態宣言が発動された。飲食店を中心とした時短営業やイベントの縮小などが、この先1ヶ月を目安に要請されることになった。

補償や罰則を含め「もっと厳しい対応をー」という声(世間の?)に対し、今一つおよび腰に見える政府の対応。ここにきて菅総理のリーダーシップを問題視する見方も強くなっている。

昼間のワイドショーではドイツのメルケル首相を引き合いに、「もっと国民感情に訴えるメッセージを出さんかい!」 みたいな意見が目立つ。が、菅さんはもともとそういう人ではない。ホントかどうかはわからんが、首相にはなりたくなかった人だとも。首相になったからといって、強いリーダーシップを発揮するタイプじゃないことはわかっていたはず。わかっていたけれど想像以上に頼りなかった。

なんといっても「他人事感」がすごい。官房長官時代もそうだったけれど、アレは官房長官というポジションがそうさせるものだと思っていた。が、そうじゃない。アレは天性のもの。首相になってさらにパワーアップしてしまった人をイラつかせる能力「他人事感」なのだ。おそるべし。


一方、海の向こうでは「やる気」がなくならず、暴走して引き際を見失っているリーダーが。
大統領選の正式な敗北が決まったトランプ大統領。その支持者が連邦議会議事堂に乱入し死者まで出る騒動を引き起こした。20日の大統領就任式を前に、トランプ氏の罷免や弾劾を求める動きも出ている。

さらにトランプ氏の最大の武器であったTwitterのアカウントも凍結された。これまでにも何度か期限付きの凍結はされてきたが、今回は永久凍結だそうな。おやおや。早めの映画化希望。


これら一国のリーダーに限らず人の感情とは厄介なもの。できるだけ穏やかに過ごしたいと思ってはいるけれど、かといって怒りや憎しみ、苦しみといった「負の感情」をなくすことはできないのも事実。私、出家しても無理かもしれない。

ジェーン・スー氏のラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』のお悩み相談室から生まれた本『悔しみノート』(梨うまい著)には、「嫉妬」や「悔しみ」という負の感情が思いっきり吐き出されている。

この本はTwitterでも随分話題になっていて、当時は「赤裸々な自分語りや人の苦悶を興味本位で読むのもな......」と思っていた。が、興味本位で読んでみたらぜんぜん違っていてビックリ。映画やアニメ、本などのエンタメに対し「自分もこんな映画や本が作りたかった、演じたかったのに」という悔しみを綴った新種のレビュー本だった。

私もコソコソと映画や本のレビューをブログに書き続けているけれど、「解説」や「考察」ばかりで自分の「感情」を書けないことがしばしばある。読まれるのは解説や考察であって個人の、ましてや素人の感想なんてー、と思うこともある。

が、この本はそこを180度ひっくり返してきた。「悔しい!」「羨ましい!」という感情を起爆剤にしたレビューが、見た映画に関しては「そうそう! 私もそう思った」とか「おーっ! そうとったのか」と感嘆させ(『カメラを止めるな!』とかドラマ『獣になれない私たち』とか)、見ていない映画(『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』とか)は見てみたいな、と思わせるのだ。

感情だけが突っ走っている文章とは明らかに違う。見たものや読んだものから得たものをあらわすために感情が機能している。そんな感じ。「悔しみ」や「嫉妬」という負の感情ってスゴイな。下手にフタをするもんじゃない。

著者の梨うまいさんは「分かり合えない」と書いているウディ・アレンの映画なんて、悔しみや嫉妬がなければ成立しない。(ウディ・アレンのくだりの章「CMにもむかつく」もオモシロい!)

私もこんなレビュー書きてぇよ! くっそーっ!


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