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第二十回 名推理

「怖かったか…本当は安堵したのではないのかな?隠し事が露呈する前に事件が起こった事に…。」三姉妹の表情が怖ばる。
「これ推論だが蓋托塔晁は、なんらかの理由で、ある現象に対し強い嫌悪感を抱いていた。その事を貴女等は知っていたが、劉唐音は出部の悪さから知らなかった。」
学究が続ける「ある日、劉唐音は何の前触れもなく蓋托塔晁が嫌悪している現象に自分が遭遇した事を暴露した。あの性格だ。蓋托塔晁がどの様な反応をするかなぞ考えもしなかっただろう。」
「待って、がっきゅん…それって…。」呉羽が何かに気がつく。
「そして劉唐音は、選抜から外され理由もわからず、ますます出部の機会を失い幽霊部員となった。」学究の言葉に呉羽の予想が確信になる。
「…大会の直前、貴女らにも同じ現象が起きた。」学究が一息呑み、真相を語ると

「亜人化」

と学究と呉羽の言葉が重なり、阮小三姉妹がギクリと青ざめる。
「この国では、妖や獣、悪魔になった人を亜人と呼ぶらしいな。まぁ諸説ある様だが…主にふぁんたじぃ?とか言う御伽話に登場する事が多いようだ。」三姉妹のウチ、特に次女の五六八が露骨に反応する。「原因は不明だが、自分たちの憑依霊が亜人化した事は明らか。そして亜人化を暴露した劉唐音は選抜から外された。この事実を貴女らは蓋托塔晁に告げる勇気がないまま大会の日を迎えた。」
「スゴイ。何で分かったの?」
「ナナ!黙って!」思わず心の声を漏らす三女ナナを次女の五六八が静止した。
「…話をまとめよう。貴女らとしては、自分の番が回ってきた時は、後の祭り。蓋托塔晁とて、華撃の途中で水を差す事はすまい。後で真摯に詫びれば良いと覚悟を決めていた矢先に例の事件が起こり、秘め事は有耶無耶になり、そのまま華道部を去る事とした。どうだ?当たらずも遠からずだろう?」ジリジリと説き伏せる予定が、三女がさっさと本音を漏らした事から、一気に真相に迫る学究。

しばしの沈黙があったが「…二葉姉、正直に話さない?もぅバレバレだし…。」生真面目な長女、平和主義の次女、天真爛漫な三女の性格よろしく、次女の五六八が長女の二葉を説得し、平和的解決も求める。

「…ハァ。ここは人が多いわ。いくら憑依霊が憑代にしか見えないとは言え、誰が素養を持っているか分からない。場所を変えましょう。」

三姉妹の秘め事は如何なものか?

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