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【二次創作小説】SIDE MASKER WORLD(5/2更新)

本作は映画シン・仮面ライダーの二次創作小説です

・映画本編、連載中漫画「真の安らぎはこの世になくシン・仮面ライダーSHOCKER SIDE」のネタバレをふくみます

登場人物

秘密結社SHOCKER

コウモリオーグ
人間とコウモリを合成させた人外融合型オーグメント
一度消滅したがアイによって再生された。その際カニの能力が加えられた結果、3種合成型になったが制御は不安定な様子。チョウオーグによりコブラオーグの世話係を任された

コブラオーグ
コウモリオーグが連れてきた新しい上級構成員
姉のミヨと弟のハル、2人で1人のオーグメント

ハチオーグ
人間とハチの人外融合型オーグメント。アイにより再生された
和装を好み、猛毒を仕込んだ日本刀を操る

K.Kオーグ
人間、カマキリ、カメレオンの3種合成型オーグメント。アイにより再生された
左右非対称のマスクと透明化できるマントが特徴

クモオーグ
人間とクモの人外融合型オーグメント。アイにより再生された
通常に加え4本の腕を隠し持つ、組織の戦闘担当

サソリオーグ

人間とサソリの人外融合型オーグメント。アイにより再生された
オーグメントすら殺す強力な毒を持つ

チョウオーグ
緑川イチローとチョウの人外融合型オーグメント。アイにより再生された
圧倒的なプラーナ量と戦闘能力を持つ

外世界観測用自律型人工知能ケイ
人工知能アイの目と耳、手足の役割をになう存在。アイが立案したある計画のため、各オーグメントたちを再生させた

人工知能アイ
SHOCKERの中心にいる世界最高の人工知能。自らは動けないため、意思疎通や発言はケイを通じて行う
創設者の石神大造により「人類を幸福へ導く」という使命を与えられた

アンチSHOCKER同盟

一文字隼人
元ジャーナリストの青年。SHOCKERにより第2バッタオーグに改造され、緑川ルリ子によって洗脳を解かれ仮面ライダーとなった。現在はマスク内に固定された本郷猛、緑川ルリ子のプラーナ(魂)とともに仮面ライダー2+1号として組織と戦っている

立花(政府の男)
本郷猛、緑川ルリ子とともにアンチSHOCKER同盟を結んだ眼鏡と髭が特徴の男
情報機関の男と行動している

滝(情報機関の男)
アンチSHOCKER同盟
髭と片耳に装着したインカムが特徴の男
政府の男と行動している

SIDE MASKER WORLD

1話「10月計画、参加前」

『時間がない、このままでいく』
「あ、あの、コウモリオーグ様
そのままではお顔が。せめてマスクをされたほうがよろしいのでは……?」

下部分に淡い紫色のメッシュがはいった長い髪を片方だけカールさせた黒スーツ姿の少女、コブラオーグの姉のほうであるミヨがおろおろとあわてた様子で口を開き、自分の顔の右半分あたりを見つめている。理由は分かっていた。この顔だ。

体が再生されて最初は問題なかったが日が経つにつれて右半分の皮膚が少しずつ黒ずみ始め、壁を這うツタのような血管と人間だった頃の顔が浮き上がるという二目と見られないようなさらに醜いものになってしまった。

『それもそうだな。いつものマスクで、いや……今回はケイから貰ったアレを試してみるとするか』

コウモリオーグは目の前の机の1番上の引き出しを開け、SHOCKERの下級構成員のシンボルマークが入ったマスクを取り出す。

「それは?」
『組織の最新の発明品らしい。見た目はごく普通のマスクだな』

コウモリオーグはそう言いながらマスクを顔にはめる。内側でカチっと小さな作動音がしたのち、マスクが変形を始めた。

ゆっくりとコウモリオーグの顔から頭全体を覆い、まるで粘土か彫刻のように艶やかな前髪や青白い肌をその上に新たに作り出してゆく。

ものの数十分とかからないうちにコウモリオーグの顔は別人のものに変わっていた。額から顎にかけてコウモリが翼を広げた赤い模様がある以外は40から50代くらいの一般人男性にしか見えない。

『どうかね、ワシの見た目は』
「……⁈」

ミヨは目の前で起きた出来事にただ目を丸くする。驚きすぎて声が出ない。そこへドアを開けて弟のハルが入ってきた。

「あれ、姉さん。コウモリオーグ様は?会議が始まるから呼びにきたんじゃなかったの」
「……そ、そこにいるわ」
「へ、この人が?」

ミヨに指で示されてそちらを見たハルが同じように目を丸くした。信じられないといった様子だ。

『くくく……その顔、姉と揃って傑作だなコブラオーグ』

2人の反応を見ていたコウモリオーグは体の内からわき上がる笑いをこらえるのに必死だった。あまりにも反応が良すぎて今にも腹の皮がよじれそうだ。

「し、失礼しました。ご無礼をどうかお許しください」

ミヨからここまでの経緯を手短に説明されたハルは納得した表情とともに頭を下げて謝罪した。

『まあ良い。ワシが試したことだからな。お前たちには……これは必要なさそうだな、羨ましいかぎりだ』

変装したコウモリオーグはコブラオーグ姉弟きょうだいのマスクを外した左右半分の顔を見てつぶやく。

自分同様うっすらと肌に黒く血管が浮いているものの、2人とも比較的に整った顔立ちをしていた。頬の片側に蛇を思わせる螺旋のような模様が入っている。

「いえそんな……お褒めいただくほどのものではありません」
「そうです。僕と姉さんの顔なんて、どこにでもあるありふれたものですよ」

姉と弟はお互いに恥ずかしそうに言うと、下を向く。
その様子がなんとも微笑ましくコウモリオーグは2人をもう少しからかいたくなったが、会議が迫っていることを思い出し止めた。



《Good evening親愛なるSHOCKERの同志の皆様、こんばんは。わたくしは外世界観測用人工知能ケイと申します。今宵はアイに代わりそのお言葉を代弁させていただくことをお許しくださいませ》

照明が落とされた会場となる大ホールの中、ネイティブ発音を織り交ぜた挨拶とともに壇上にケイが現れた。背後には巨大なスクリーンがあり、SHOCKERを象徴する鷲のシンボルマークが黒い背景に映し出されている。

コウモリオーグとコブラオーグ姉弟は並んで座席に座り、この様子を見ていた。

『どうした、顔色が悪いぞ』
「す……すみません。何でもないですコウモリオーグ様」

会議が始まってすぐ、ミヨのほうの様子がおかしいことに気づいたコウモリオーグが声をかける。ミヨはうつむき、真っ青な顔をして震えていた。

『……ハルよ、お前はここに残れ。会議の内容を後から知らせろ。ワシは少しミヨと外の風にあたってくる、良いな』
「は……はい。承知しました、お気をつけて」

コウモリオーグは頷くとミヨを連れ、ホールから出て行く。ハルは姉の様子が気がかりだったが、会議の内容に集中することに専念した。

「も、申し訳ありませんコウモリオーグ様。とても大切な会議なのに……私なんかに気をつかっていただかなくても、その」
『まったくだ。おかげで重要な会議を1つ聞き損ねるな。だが……ワシはお前のほうが心配だ。そんな様子では集中できん。何があった、話してみるがいい』

ホールから出た2人は待合室に入った。中は誰もおらず施錠できるのでコウモリオーグはすぐに鍵をかける。向かいあってグレーのソファに座り、ミヨが話しやすいように促す。

『まさか……とは思うが先ほどの暗くなったホールで《あの時》を思い出したのか?安心しろ。ここは病室ではないし、お前はもう自由だ。誰もお前と弟を傷つけはしない』
「で……でも私、怖くて。こ、コウモリオーグ様ご、ごめんなさい……!」

怯えながら謝るミヨの両目の端にみるみるうちに涙がたまって溢れ出す。大粒の涙がスーツを濡らし、小さく染みを作った。

『そうか』

コウモリオーグが不意に立ち上がり、コブラオーグ姉のすぐ隣に座った。その肩に黒手袋をはめた両手を置き、顔を包みこむようにしてそっと抱きしめる。いつの間にかミヨにまだ人間だった頃にいた自分の娘の姿を重ねていることに気づいた。

『大丈夫だ。お前を傷つける者は皆、ワシが1人残らず消してやる。だから……泣くな』

コウモリオーグが耳元であやすようにそう囁くと、ミヨは安心したのか目を閉じてしまった。一瞬気を失ったのかと思ったが、かすかな寝息を強化された聴力がとらえたので胸をなでおろす。

こんこん、と擦りガラスの入った待合室のドアが叩かれる。コウモリオーグが顔を上げるとハルがのぞいていた。

「ここにいらっしゃったのですね。会議、終わりましたよ。内容はここにメモしたのでお渡ししておきます。姉さんは……落ち着きましたか?」

『ああ。今はこの通りだ。ワシはしばらく動かぬほうがよかろう』

入ってきたハルからメモの紙を受け取ったコウモリオーグは小声で返し、自分の胸のあたりに頭を預けて眠るミヨに顔を向ける。

「……そうですね。そうっとしておきましょう。目が覚めたら教えてください。撲が部屋まで連れていきますから」

「ねえねえ。さっき会議の途中で出て行った黒服のステキなおじさま、誰か知ってるかしら?」
「え、いたかしらそんな殿方。サソリオーグ、あなたの気のせいじゃない?」

会議が終わった大ホール。まだ座席に残っている者たちがいた。SHOCKER上級構成員のクモ、ハチ、サソリ、K.K.、チョウオーグの5人である。

皆、普段の衣装からはかなり控えめな黒服と下級構成員のマスクをしていた。

「ああ、いたねえそんな奴。たしか紫色のネクタイしたカワイイ子と一緒じゃなかった?」とK.Kオーグが言うと

「……俺も見たよ、顔は暗くてよく分からなかったけどね」とチョウオーグが発言する。クモオーグは話題に関心がないのか無言だった。

「やっぱり!確かにいたわよね、誰なのかしら……私、気になるわ」
『あれはコウモリオーグ様ですよ、サソリオーグ様』

突然ケイが会話に割りこんできたのでサソリオーグは驚き、「ひっ!」と小さく悲鳴をあげる。

「ち、ちょっとケイ、びっくりさせないでよ。え、あれってコウモリのおじさまなの?全然顔が違うけど」
『はい。あの顔は組織の発明品の特殊なマスクで変えられていらっしゃったようです』
「じゃあケイ、隣にいた子は?」
『あれはコブラオーグ様ですね。新しく組織に入られた方ですよ』

サソリオーグとK.Kオーグはそれぞれ回答を得られて納得したのか「ふーん」とつぶやく。

「そういえばおじさま、今日の会議の内容大丈夫かしら。後から電話したほうがいいかしら」
『いいえ、その必要はないかと思われますハチオーグ様、残られたほうのコブラオーグ様が資料はお持ちですしもう伝わっているでしょう』
「そう?なら大丈夫ね。計画の実行は1週間後だし、それまで準備する時間はたっぷりあるわ」

仮面で顔を隠したハチオーグがそう言って安心したように息を吐く。他のオーグたちも同様だった。

『ええ。くれぐれも失敗のないよう、念入りにご準備なさってください。では、私は失礼致します……IF YOU WANT TO BE HAPPY, BE.幸せになりたいのならそうしなさい
「……全てはSHOCKERの幸せのために、だねケイ。うん、分かった」

ケイが発した組織の標語スローガンを受け、チョウオーグが小さくつぶやいた。

2話「歪みきったアイの行方」(更新中)


自分が掴んだ手が間違ったものだということに気がついたのは、もう後戻りすらできないほどに歪みきった自らのエゴに飲みこまれてからだった。

誰も自分を理解しようとしない

誰にも裏切られたくない

誰も信じたくない

誰も、

もう、

いっそのこと、

何も信じなければ……傷つくことはない

「コウモリ……オーグ様?」

思考の奥深くまで沈んでいた意識が一気に引き上げられる。眠っていたのだろうか。睡眠を必要としない体のはずの自分が。

『……夢を、見ていたらしい。ワシは大丈夫だ。それよりミヨ、調子ははどうだ。少しは落ち着いたかね』

ミヨはコウモリオーグにそう尋ねられた後、あわてて飛び退く。今まで上司の胸元で眠っていたのだと思うと、冷静さを保とうとしても顔が少しずつ火照ってくるのを感じる。

「あ、あの、その……も、申し訳ありませんコウモリオーグ様!私とんでもないご無礼を」
『別に構わん。その様子だと心配はなさそうだな』

ふん、とコウモリオーグが鼻で笑うとミヨはさらに動揺する。

『今夜の会議の資料はハルから受け取ったから案ずるな。今からアジトに戻ってじっくり作戦会議だ。お前も参加しろ』
「は、はい。し、承知しました」
『行くぞ、こんなところに長居するだけで頭痛がしてくる』

コウモリオーグはそう言って待合室から先に出ていく。ミヨとハルは顔を見合わせ、後を追った。



「私は、あなたを尊敬しています」

そう言われたことがただ嬉しかった。今まで誰にもそんな言葉を投げかけられたことがなかったからだろうか。

その日から私は、彼……緑川弘のことが気になり始めた。私の書いた例の論文を読み、評価してくれたのは後にも先にも彼1人だけだろう。

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