森見登美彦と電気ブラン

「夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話大系」などの小説の作者である森見登美彦さん。
小説の中で、よくお酒の席の描写が出てくるのですが、「夜は短し歩けよ乙女」の中でこんな一説があります。

偽電気ブランという幻の名酒があってね。電気ブランは大正時代に浅草の老舗酒場で生まれた歴史あるカクテルで今でこそコンビニでも売っているメジャーな酒になったが、その製法は長い間秘密とされていた。しかしある時京都中央電話局の職員が何とかその味を作り出そうと企てて試行錯誤の袋小路のドン図まりで奇跡のように発明されたのが生み出されたのが偽電気ブランってわけだ。味も香りも電気ブランとは全然違うんだがこれが実に神秘的な風味で今でもまだどこかでこっそり作られては夜の街に運び出されている。(『夜は短し歩けよ乙女』より)

これを数年前に読んで以来、機会があったら電気ブランを飲んでみたいな、という想いが頭の片隅にずっとありました。
そしてついに、こないだたまたま入ったお店で電気ブランを見つけたのです。

クセがあるから、個人的には好きでしたが好きじゃない人のほうが多いかもしれないと思いつつ、そんな自分も味を楽しんでいるというよりも、小説からの文脈を楽しんでいるという感じ。
その時思いました。おそらく森見登美彦さんは電気ブランが好きで、その森見さんにまんまとやられたなと、、笑

感覚器官を絞ると想像力がかきたてられる

電気ブランの一件で思ったのは、感覚器官を絞って情報を伝達すると、受け手の好みに合わせて想像力が作用して、良いイメージが形成されるんだなあということです。

文字面でしか電気ブランを知らなかったので、電気ブランが頭の中で自分好みのものに改変されて、記憶に残ってたんじゃないかなと。
映像で触れていたらまた違うかったでしょうし、横の人が飲んでたとかだったらまた全然違う、というかもはや飲まなかったかもしれません。

同じようなことは、ラジオにもなんか応用できる気もして、タレントさんがテレビのグルメ番組でお店を紹介するより、ラジオで説明してくれたほうがなんか行きたくなりません?
そう考えると、ラジオで時々やってる、北海道の〇〇さ~ん、と言って現地の人とつないで商品を紹介するのも、それなりに論理的には正しいのかもしれないですね。

ちなみに、電気ブランを生みだした創業者が開いた神谷バーのHPによると、電気ブランの由来は、

電気がめずらしい明治の頃、目新しいものというと"電気○○○"などと呼ばれ、舶来のハイカラ品と人々の関心を集めていました。
さらにデンキブランはたいそう強いお酒で、当時はアルコール45度。
それがまた電気とイメージがダブって、この名がぴったりだったのです。
(『神谷バー 公式HP』より)

ということです。



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