見出し画像

「おうち時間がたのしくなるように」と発信し続けたレシピが書籍化 料理ユニット・and recipeさん

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、料理ユニットand recipeの山田英季さんと小池花恵さんにお話を聞きました。

おいしいものと旅をテーマに、レシピ開発やケータリング、飲食店のプロデュースやコンテンツ制作を行うand recipeのおふたり。

noteでは、日々の暮らしの「何をつくろっか?」をたのしくするレシピを、「Reizoko ni ALMONDE -冷蔵庫であるもんで-」というアカウント名で届けています。

定番の家庭料理から世界の屋台まで。食卓の情景が浮かぶタイトルと文章、つくる工程もおいしそうな料理の写真、遊び心が弾ける完成の一皿。心が踊ってお腹が空き、自分でつくって食べてみたくなる。そんなレシピが満載です。

そして2021年2月、noteの連載『Reizoko ni ALMONDE -冷蔵庫であるもんで-』は本になりました。

おうち時間が少しでもたのしくなるように、おいしいレシピを

and recipeが結成されたのは2015年。それまで、山田さんは新宿でもつ焼き屋を経営し、複数の雑誌連載を持つ料理家としても活躍、小池さんは吉本興業を経て糸井重里さんのマネージャーを務めていました。

「40歳になる前に、自分で何かやりたいなあと思っていて、山田と一緒に会社を立ち上げることにしました。その頃はふたりともよく海外へ旅に出ていたので、旅と食べ物をテーマに、人と人をつないでいくような活動をしていこうと、and recipeを始めたんです」(小池さん)

直近では、東日本大震災から10年の節目を前に陸前高田に新しくオープンした発酵パーク「CAMOCY」のプロデュースや、写真家・幡野広志さんのマネジメントを手がけています。

noteを始めたのは2020年3月、コロナ禍に伴う自粛生活がスタートした頃でした。

「みんな家にいる時間が増えるから、少しでもたのしく過ごせるようにand recipeとしてできることはないかを考えたときに、レシピを無償で届けることができるね、と。自社のHPに公開することもできるけれど、届かないと意味がないので、すでに人が集まっているnoteで更新することにしました。

僕は、つくるプロセスがおいしそうだったら最終的に料理は絶対おいしくなると思っているので、つくる工程も写真でおいしそうに見せたい。初めて料理をする人もいるだろうから、写真と文章で、丁寧にわかりやすく伝えたい。それができるのは、noteしかないと思いました」(山田さん)

画像1

無限にレシピを生む発想法と、noteの書き方

レシピ考案から撮影、原稿執筆まで、なかなか手間がかかる料理コンテンツを質も頻度も高く更新し続けているand recipeさん。noteはどんな流れで制作しているのでしょうか。まずはレシピを考えるところから。

「自分の中にレシピを生む方法はたくさんあるので、無数に出てきます。季節の食材カレンダーを見て旬の食材から考えることもあるし、過去に行った旅先の写真を見返してインスピレーションを得ることも。味や成分や香りを食材や調味料ごとに頭の中で整理して、代用できるものと組み替えていくこともあります。

たとえば、味噌汁の出汁を煮干しでとることがあります。煮干しの原料はカタクチイワシで、アンチョビと同じなんですね。そこから、アンチョビと味噌の組み合わせで何かできないか、と考えたり。肉じゃがの人参をブロッコリーに代えるだけでも新しいレシピが生まれます。もし自分が女性だったら、あの俳優さんだったら、と違う人格になって考えることも。着想の原点を変えれば枝葉はいくらでもあるので、行き詰まることはないですね」(山田さん)

山田さんのスマホには、新しい食材の組み合わせや料理名など、レシピのもとになるメモがたくさんあるそう。

「そのメモの中からnoteで書くものをピックアップして、まず原稿を書きます。それを小池に共有して、準備をして、調理をして、RAWデータ(※デジタルカメラの記録形式のひとつ)で撮影してPCで編集作業もして。原稿の手直しをして、リード文を書いて、小池に渡す。かかる時間は、原稿を書くのに1時間半、撮影に4時間、原稿の修正や写真の調整に2時間くらいですかね」(山田さん)

「始めた頃は1日1つずつ撮影して毎日更新していましたが、今は更新頻度を落としたこともあって、1日でその週に更新する3〜4本分の撮影をしています」(小池さん)

読者からのコメントが、緊急事態宣言下の自分たちの心を支えてくれた

一度目の緊急事態宣言下だったこともあり、noteにレシピを公開してからすぐに反響が。おふたりのもとには読者からのコメントもたくさん届きました。

「最初は試し試しだったんですが、『まるでチーズケーキ』にびっくりするほど反応があって。『つくってみます』『つくりました』『料理教室に通ってみるみたい』。みなさんのコメントが嬉しくて、やってよかったなあと思いました。

コロナ禍でリアルな現場に行く仕事が止まっちゃって、この先どうしていこうか考えていた不安な時期でした。noteを始めたことで、毎日やることがあって、ちゃんと誰かに届いている実感が得られて、心を落ち着かせることができました。noteの存在がありがたかったです」(小池さん)

Twitterやコメント欄だけでなく、noteで感想が届くことも。

「noteで感想を書いてくださった方は印象に残っています。緊急事態宣言のときに、実家に戻って『Reizoko ni ALMONDE』を見て、お母さんと一緒に楽しく料理をする機会が増えたそうで。リアルな日常も垣間見られて、嬉しかったですね」(山田さん)

note連載開始3ヶ月後に書籍化が決定。自分たちの想像を超える本に

初投稿から毎日更新を続けた3ヶ月後には、出版社から書籍化のオファーがありました。

「早い段階で何社さんかにご依頼をいただいて、最初にご連絡をいただいた幻冬舎さんとご一緒させていただくことにしました。もともと、自費出版でも書籍にしたいね、と話していて自分たちのECサイトの準備も進めていたんです」(小池さん)

「noteにアップした時点で、自分たちが伝えたいことや世界観はかたちになっていたので、書籍に関しては、編集者の袖山(満一子)さんとデザイナーの名久井(直子)さんにお任せしました。どう感じてどう表現してくれるか。託したことで、自分たちの想像を超える本ができたと思います」(山田さん)

できあがったのは、noteで掲載したものに、書籍限定の15の料理が加わった91のレシピ集。つるっと汚れにくい表紙に、ぱかっと開ける製本、食材から引ける索引、買い物時に便利なスマホ写真に収まる材料帖……。使いやすく、料理をたのしくするためのこだわりが細部にまであふれています。

世界に1ミリでもおいしい瞬間を増やすために、伝え続ける

and recipeさんの活動において、noteはコミュニケーションツールであり、社会実験の場であると言います。

「noteを始めてから、イベントなどリアルな場で顔を見て声をかけてくださる方がいて、交流が増えました。BtoBのお仕事とは違って、読んでくれた方やつくってくれた方の声を直接聞けるので、いいコミュニケーションツールになっています」(小池さん)

「僕らは、世界に1ミリでもおいしい瞬間が増えたら最高だね、と思っているので、noteでそのための社会実験をしているような感覚です。仕事も忙しいしNetflixも観たいし、プロの僕でも料理はめんどくさいときはめんどくさい。だからこそ、どうアプローチをしたら料理をたのしんでもらえるのか、世界においしい瞬間が増えていくのか、考え試し続けたいんですね」(山田さん)

世界においしい瞬間を増やしていくために、noteでレシピ以外のコンテンツの発信も企んでいるのだとか。

「20年以上、“おいしい”について考え続けてきて、僕なりの答えがあるので、noteを使ってレシピとは違う文脈で伝えるコンテンツをつくってみたいですね。たとえば、写真は1枚で、半分ノンフィクション、半分フィクションのエッセイのような小説のような文章を書いてみるとか。リアルだけがあふれてもおもしろくないと思うから、読む人の自由を奪わない曖昧なものを。ゆくゆくは雑誌のようなかたちで、いろんな角度からnoteで“おいしい”を伝え続けていきたいです」(山田さん)

料理や食べることが好きな人も、ちょっとめんどうに感じている人も。ぜひand recipeさんのnoteを訪ねみてください。

■クリエイターファイル
Reizoko ni ALMONDE -冷蔵庫にあるもんで-

料理と旅をテーマに活動しているand recipeと申します。お家時間を少しでも楽しく過ごしていただけるよう、「冷蔵庫にあるもんで」レシピを更新しています。(最近不定期更新となってしまっておりますが、2021年はもっとたくさん更新していけたらいいなと思っております。)
note:@andrecipe1102

text by 徳 瑠里香


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!