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スペインで学んだ最先端のサッカー理論を日本に広める、サッカー指導者・坂本圭さん

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、サッカー指導者の坂本圭さんにお話を聞きました。

高校教員としてサッカーの顧問を13年務めたのち、スペインに留学し、スペインのプロクラブのコーチができるスペインサッカーライセンス・レベル3を取得した坂本さん。現在は、埼玉県川越市のクラブチーム COEDO KAWAGOE F.Cの監督を務めています。

noteでは、6年かけてスペインで学んだサッカー理論を展開。有料マガジンでは、チームでの戦い方のベースとなる「ゲームモデル」の作り方について、基礎編と応用編に分けてまとめています。

チームとしてどう戦うかの設計図「ゲームモデル」を指導者に伝えたい

坂本さんが、noteをはじめたのは2017年12月。スペインでサッカーライセンスを取得するため、コーチングスクールで卒業論文を書いている頃でした。

「サッカーの指導者のライセンスを取得するために6年間バルセロナにいました。2年間は語学を学んで、4年間サッカー指導者のライセンスを取るためにコーチングスクールに通って。次第に、そこで学んだことを発信したいと思うようになったんです。サッカーに関するブログは10年くらい前から書いていたんですが、閉鎖になってしまったので新しいところを探していて。スペインでは広告ではないかたちでブログで収入を得ているひともいたので、日本でもできないかなあとネットサーフィンしていたらnoteを見つけました。スペイン人がバルで真面目な話も軽やかにするときのような洒落た雰囲気、押し付けがましくない洗練された美しさがnoteからは感じられたんですよね」

坂本さんは、noteのマガジン機能をつかって、スペインで学んだことや卒業論文の内容に独自の視点を掛け合わせた「ゲームモデルの作り方」を体型的に発信。

「高校教員時代にサッカー部の顧問をしていた頃、我流でゲームモデルをつくっていました。留学する前はサッカーのことをわかっていると思っていたけど、スペインでは素人レベルだった。当時の自分はサッカーを知らないことを知らなかったんです。

チームとして試合でどう戦うのか。ゲームモデルはいわば設計図。設計図がないのに家がつくれますか?という話なんです。家のつくり方の基本を学ばずに設計図を書いても、土台のない崩れやすい家になってしまう。かつての僕と同じように我流で組み立てている指導者に、ゲームモデルの基本を伝えたいと思ったんです」

坂本さんの「ゲームモデルの作り方」は基礎編・応用編合わせて25本に及びます。

「1本の記事ではなく、本のようにまとめて読んでもらいたいと思ったのでマガジン機能を活用しました。いきなり有料にしても届かないので、一番読んでもらいたい記事を無料にして、届けることを優先しました。まずはマガジンの存在を多くのひとに知ってもらった上で、コーチや監督、本当に必要としているひとには有料で深く届けられたらと思っています」

指導者の視点が変われば、子どもたちのサッカーが変わる

坂本さんが有料マガジン「ゲームモデルの作り方」を一番届けたいのは、子どもたちを教える指導者。

「実際に読んでくれているのは、中学生や高校生のサッカーチームのコーチや部活の顧問が多いです。有料マガジンを購入してくれたひとには、ゲームモデルの実践動画やエクセルで作成したフレームワークも個別にお送りしているんです。文章だけだとわかりにくいこともあると思うので、より理解を深めて、実践で活用してもらえたらと」

社会人クラブチームの監督をしながら、坂本さんがnoteで発信を続ける理由は?

「自分自身の勉強になるという側面もありますが、日本の子どもたちに生涯スポーツとしてサッカーを好きになってもらいたいし、集団プレーとしてのサッカーを知り、プレーをたのしんでもらいたい。スペインも日本も子どもの素質自体は変わらないと思うんですが、練習方法や環境が違って、サッカーを続けられるか好きになるかが枝分かれする。

たとえば、日本ではドリブルやリフティングはひたすら技術の練習をしますよね。スペインでは、ドリブルをいつ使うかの練習をするんです。相手を何人も抜いてシュートを決めても、ゴール前にフリーな選手がいるのにパスをしないとそれは悪いプレーになる。リフティングはほとんど練習しません。

鍛えるときは鍛えて、戦うときは戦って、休むときは休む。コーチはじめ教える立場の意識が変わって、戦術と技術を共に学ばないと、日本の子どもたちはサッカーをすることがたのしくなくなって離れてしまう。せっかくスペインで学んだので、その視点を指導者に届けたいんです」

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noteをはじめて3年半。指導者により広く深く届けるために、書き方も試行錯誤を繰り返していると言います。

「最初はスペインで学んでいる最中だったんで、勉強したことを翻訳してそのまま書いていましたね。そこからスペインサッカーコーチングコースの卒業論文を書きはじめて、自分の意見よりも文献を調べて成功事例を引用することを叩き込まれました。文章はまだまだで、よりわかりやすく伝えたいと思っているので、noteでよく読まれているひとたちの文章を分析して、真似したりしています」

noteをきっかけに、ライター参画、監督就任へと活動の場が広がった

コーチをしているひとや指導者を目指すひとから、noteを読んで直接メッセージが届くこともあるそう。でも、反響の広がりはそれだけではありません。

2020年2月からはnoteのつながりで、現役フィジカルコーチらがサッカーに活かせる筋力トレーニングなどを発信するマガジン PITTOCK ROOMのライターに参画しています。

「PITTOCK ROOMで週刊連載している大森FCのフィジカルコーチのSunnyさんがnoteを読んでくれていて、Twitter経由で声をかけてくれました。noteを書いていて、PITTOCK ROOMのライター陣など、サッカー、スポーツ関連の発信をしているひととのつながりが増えましたね」

2020年9月には川越市の社会人クラブチーム「COEDO KAWAGOE F.C」の監督に就任。そのきっかけは、取締役である中島涼輔さんとnoteを通じで出会ったことでした。

「スペインから日本に戻ってきて、6年間かけて学んできた自分のゲームモデルが実践できるクラブチームを探していました。でも、日本とスペインのサッカー環境は大きく違い、思ったようにできる場所はなかなか見つからなくて。そんな中、中島さんのnoteを読んで、彼が経営する新しいチームであれば、生涯スポーツにできるようなたのしいサッカーができるんじゃないか、と思ったんです。連絡をしてお会いして、監督をやらせてもらうことになりました。お互いのnoteを読んでいたので話が早かったのかもしれません」

あのとき自分がほしかった情報を、指導者や子どもたちに伝え続ける

今年6月、坂本さんがスペインで書いた卒業論文を改稿した書籍『ダイヤモンドオフェンス ~サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法~』が発売されます。

「高校の教員をしているときから僕は攻撃方法を知りたかった。でも日本にはあまり情報がなくて。当時、マイケル・ジョーダンが所属していたチームが実践していたバスケの攻撃方法『トライアングル・オフェンス』を独学で学んだんですが、よくわからなかった。でもスペインで学んだあとは、それがどういうことかがわかったんです。そこで、『トライアングル・オフェンス』を応用してサッカーの攻撃方法を生み出したのが、『ダイヤモンドオフェンス』です。卒業論文を再編集して書籍にまとめました」

noteでは今後、本を書いた経緯や背景にある想いをつづっていきたいと話します。

「本はより実践的に使ってもらえるように概念や具体的な戦術に絞ったので、私の個人的な想いの部分はこれからnoteに書いていきます。それが本を届けるきっかけにもなると思うので」

noteの有料マガジン「ゲームモデルの作り方」が完結し、書籍『ダイヤモンドオフェンス』を書き上げた今、これからやっていきたいことは?

「僕がnoteや本に書いていることはまだ難しく、中高生などある程度、成長したチームの指導者向けだと思うので、小学生チームの指導者に向けたものも書いてみたいです。スペインで学んだことをチームで実践している最中なので、これからより実践に基づく分析が書けるようになると思います。

FCバルセロナのトップチームで長年フィジカルコーチを務めてきた、フランシスコ・セイルーロという人物がいます。彼が考案した集団スポーツのトレーニング方法『構造化トレーニング』を、彼の論文から理解を深めて、日本の指導者に伝えたいですね」

日々のトレーニング方法から、チームで試合に勝つ戦術まで。日本のサッカーの未来を見つめる坂本さんにはまだまだ、サッカーを学びたい小学生、子どもたちを教える指導者に向けて、伝えたいことがたくさんあります。

■クリエイターファイル
坂本 圭 フットボール進化大学

スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。慶應義塾体育会ソッカー部女子(試合分析権コーチ2020年7月〜12月)COEDO KAWAGOE F.C監督2020年〜
note:@sakamotokei68
Twitter:@ideailista

text by 徳 瑠里香

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