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「正直、助かっています」電気グルーヴ・ピエール瀧さんに聞く、noteで有料記事を書く理由

テクノユニット「電気グルーヴ」のメンバーであり、俳優、声優などマルチな活躍で知られるピエール瀧さんは、2020年からnoteをはじめています。

noteでは「23時に23区をほっつき歩く」という内容の有料記事のシリーズを執筆。これはもともと書籍化を視野にスタートしており、2022年10月に『ピエール瀧の23区23時』として刊行されました。

ピエール瀧さんのnote

無料記事にとどまらないnoteの活用法、そして本の出版とnote連載の理想の関係について、 ピエール瀧さんに聞きました。

使ってみたら、意外に良かった

——瀧さんといえば、電気グルーヴの活動とは別に、2020年4月からYouTubeとnoteを開始されました。ネットでの発信を始めたきっかけは?

ピエール瀧さん(以下、瀧):YouTubeチャンネルのオリジナルコンテンツ『YOUR RECOMMENDATIONS(#ユアレコ)』は、”旅もの”で何かやりませんか、という依頼がきっかけですね。YouTubeなら手軽にできるので、じゃ、やろうかと。

noteはちょうどその頃、マネージャーが「ファンクラブ的な使い方ができるんじゃないか」とすすめてくれました。

——noteのことはご存知でしたか?

瀧:正直、知らなかった(苦笑)。だから最初はどんなことを書いたら読者が反応してくれるのか、手探り状態ではじめました。

でも、使ってみたら意外に良かった、という感想です。企画したものをコンパクトにまとめて誤解なく伝えられる場だなと思ったので、noteでは企画性や考えがあるものを配信しています。自分の媒体を持っていなくても、雑誌みたいに使えるのもいいですよね。

最初の投稿こそYouTubeチャンネルの告知ですが、あとはゲームの批評記事を書いたり、過去に雑誌に書いた原稿をあらためて掲載したり、深夜に街を散歩する「ピエール瀧の23区23時 セカンドシーズン」を連載したりしています。

noteの記事は、ディレクターズカット

——「ピエール瀧の23区23時」(以下、23区23時)はファーストシーズンが10年ほど前に書籍として刊行されました。noteでセカンドシーズンが始まった経緯は?

瀧:3年ほど前に、ファーストシーズンの担当編集者から第二弾をやらないかと提案を受けてはじまった企画です。なので、最終的に書籍化することは決定事項でした。

読者の反応をみたいという実験的な側面もあってnoteで有料記事として連載し、23区分がたまったので、昨年『ピエール瀧の23区23時 2020〜2022』として本になりました。

noteで記事を書くメリットのひとつに、最新バージョンを載せられることがありますね。公開した後でも編集できるので、勘違いや誤字脱字の修正だけでなく、過去に取材した場所の最新情報も入れられます。一番練り込まれた完全版の記事を読者に提供できるのがいい。

というのも、ファーストシーズンは取材から書籍化までに2年以上かかっているんですよ。一晩5〜6時間歩いて取材して、それを23区分なので。すると初期に取材した内容は古くなってしまうんですよね。

また、ページ数の関係上、載せられる分量に制限があるので、ここおもしろいんだよな、でも削んなきゃ、というところが出てくる。紙の書籍にしろ雑誌にしろ、一度アウトプット(刊行)してしまうと、修正できないんですよね。

——「23区23時」を有料noteにしたのには、どんな理由があるのでしょうか?

瀧:「23区23時」の制作には数人のスタッフも関わっているので、それなりにコストがかかっているんです。だから、ちょっとだけ有料にさせてもらって。それで全部を賄っているわけではないですが、正直、助かっています(笑)。

noteでの連載時は1記事350円という値段にしていましたが、出版後は150円に値下げしました。

noteでも書籍化を記念して大幅値下げを告知。
千代田区編と練馬区編は無料で最後まで読むことができる

先ほど言ったとおり、僕の中ではnoteの連載こそが完全版、いわば、ディレクターズカットなんです。もしかしたら書籍の3倍くらいの分量はある。

その完全版を版元の編集者が文章を削ったり、写真の配置を変えたりして、少し他人の意見が入ってできたものが書籍という感じなんですね。なので、書籍の内容を補完するという伝え方の部分も含めて150円に値下げしました。

書籍に興味はあるけど触りだけ読みたい、という人に向けた試し読みという側面もありますね。

——有料コンテンツをつくるときに心がけていることは?

瀧:有料にするなら、極私的なものではなくて、パブリックなものを届けようというマインドでつくっています。あと、価格に見合うだけの分量は提供しようかなと。noteを読む時って、みなさんスマホで読んでいると思うんですよ。なので暇つぶし的にダラダラと読めるボリュームを心がけています。

有料ラインの上のお試し部分も、なるべく多く読んでもらえるように設定しています。とはいえ、お試しでお腹いっぱいになられても困るので……。加減が難しいですね。

原稿は文字起こししてもらったものを、自分でブラッシュアップしています。昔から原稿仕事はやっているので、原稿を書くことは苦手ではないですね。「23区23時」の執筆は体感・経験したことを文字に落とし込む作業。

「これを喋っている時はこれを見ていたんだよな」と、読者がロケっぽい気分で読めるように写真を配置するなど工夫しています。

——記事の拡散はどうやっているんですか?

瀧:事務所のTwitterアカウントで拡散しています。本来なら自分のTwitterアカウントで広く周知すべきだとは思っているんですが、Twitterは情報収集が目的なので、一度も発信したことはないんです。

10万回再生されてすぐ消えるものより、10年残るものを

——noteは、瀧さんのメインの活動に対してどのような位置づけですか?

瀧:メインの活動とは関係なくやっていますね。電気グルーヴのプラットフォームとしては、InstagramやLINE、Twitterなどで活動報告とかライブ情報などを発信していますし、ピエール瀧のファン向けでは、Facebook、Instagramに日記のようなものを書いていて、ライブの告知とかもしています。

でもnoteに関しては、自分が読みたいものを発信しています。僕は他人の極私的な投稿には本当に興味がなくて、こういう発見があったとか、こういう体験をしてこう感じたとか、そういったものを知見として知りたいんですよ。

広い人たちに受け入れられやすいコンテンツってありますよね。でも受け入れられやすいということは、消費されやすいという意味も含まれていると思うんです。

YouTubeやTikTokとかの、10万回再生されるような、でも3分間で消費されておしまい、というコンテンツもいいんですけれども、僕はいま10万回再生されてすぐ消えるものよりは、10年残るものを作りたい。

「23区23時」はアーカイブで残っていますよね。これは写真も含めて2020年から22年くらいまでの東京の夜の様子の記録なので、例えば10年後に読み返すと、「そうか、コロナがあったんだよな」とか「この建物、もうないな」とかが記録としても残る。

noteは雑誌的な側面もあって、即時性のあるコンテンツを発信することもできるけれど、僕は時間を経て古くなるものよりは、いつ読んでも楽しめるコンテンツをつくりたいと思っています。

ピエール瀧さん
note:https://note.com/pierre_taki_00
Instagram:https://www.instagram.com/pierre_taki/

<今後の予定>

Netflixオリジナルシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」(江口カン監督)配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81144910

映画「福田村事件」(森達也監督)2023年公開
https://www.fukudamura1923.jp/

YouTube番組「YOUR RECOMMENDATIONS(#ユアレコ)」
6月から新シーズン配信開始
https://www.youtube.com/@yourrecommendations5864

電気グルーヴ ライブハウスツアー「CLOSER ~近いツアー~」
5/26(金)27(土)東京
https://www.denkigroove.com/information/346


参考記事

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