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「ライターは自分のメディアを持つのが当たり前に」取材した情報をnoteで発信、竹中玲央奈さん

サッカー専門媒体の記者を経て、現在はスポーツビジネスを展開する企業ではたらく竹中玲央奈さんは、いまでも週末になると日本中を飛びまわり、サッカー育成年代を取材しています。

取材の成果はサッカー媒体に寄稿することもありますが、その多くは個人のnoteの有料記事を通じて直接サッカーファンにとどけられます。

竹中玲央奈さんが運営しているマガジン「国内サッカーの現場より。竹中玲央奈のここだけの話」は月額600円で購読できる。

自分のメディアを持つことで、より自由に発信でき、専門媒体で書くよりも多くの収入を得られるようになったといいます。そんな竹中玲央奈さんにスポーツライターの新しい生き方について聞きました。

自分の取材メモを発信できる場がほしかった

——竹中さんは会社役員であり、週末はスポーツライター。忙しい中でnoteをはじめられたきっかけは。

竹中玲央奈(以下、竹中):かなり前ですが、何かのテーマで調べものをしているときにnoteの記事を発見して、そこで初めてnoteというサービスがあることを知りました。

僕は昔からインターネットやガジェットが大好きで、それこそiPhoneが出たらすぐに飛びついたり、SNSも新しいものが出たらどんどんやっていくタイプでした。

自分が最初に読もうと思ったnoteの記事は有料記事だったんですが、1記事ごとに買える仕組みを見て、「これは自分の発信活動に役立つんじゃないか」「新しいサービスだからやってみよう」と思ってすぐに自分でもはじめました。

—— さっそく有料課金の記事を書かれていました。いまは「国内サッカーの現場より。竹中玲央奈のここだけの話」という定期購読マガジンを運営していますね。

竹中:2018年の頭くらいに定期購読マガジンに切り替えて本格的にnoteの発信と収益化をはじめました。

僕はこれまでJリーグや中学・高校・大学のサッカーを取材しつづけるなかで、試合に行って、選手のコメントをとって、チーム関係者と仲良くなって話を聞きながら、それらをすべてEvernoteにためています。

選手ごとにタグをつけて整理しているんですが、当然、けっこうな量になってきます。振り返ると、たとえばすごく有名になった三笘薫選手の高校時代に取材したコメントなども出てきたりします。

2017年、筑波大学の練習。当時大学2年生だった三笘薫選手にリフティングの技を見せてもらった

ただ、いわゆるサッカー専門紙に対して、「こういう原稿を書かせてくれませんか?」と売り込んだり、逆に依頼をもらってコラムを書いたりしても、それでもまだ1割くらいしか世に出せません。

自分のメモの中にたまり続けているネタを、もっとたくさんのサッカーファンにとどけるにはどうすればいいのか。そこで「noteを使えばお金を払って読んでくれる場所を自分でつくれるんじゃないか? 」という仮説を立てたんです。

僕はもともとJリーグの番記者をいくつかのチームでやらせてもらっていました。ありがたいことにそれぞれのチームのファンの方々がいまでもSNSでフォローしてくれています。担当チームが変わっても「竹中の記事だから」とずっと読んでくれる方もいたので、「自分の発信に興味をもってくれる人もいるんだ」と思えたのも大きかったです。

それなら思い切ってやってみようと、これまでの取材のネタを自分が主体になって発信するメディアとして「国内サッカーの現場より」をはじめました。

個人としてメディアと同じ土俵に立ちたい

——「国内サッカーの現場より」はすでに5年ほど運営されています。定期購読マガジンをはじめて、ご自身の中で手応えを感じた瞬間はありますか。

竹中:「これはいけるな」と思った波は何度かありました。まず初速でたくさんの人に集まっていただいたのはうれしかったです。当初からたぶん200〜300人くらいの方が定期購読マガジンを購読してくれました。

爆発的に大きかったのはやっぱり3年前に初めて書いた移籍情報のnoteだと思います。それ以前に、各クラブに加入する新加入選手の「トリセツ」的な記事を書いていました。「〇〇大学から新加入選手が来ました」という一報が流れたら、ファンの方はその選手のプレースタイルや経歴、特徴がめちゃくちゃ気になる。

その選手の解説やストーリーを書いたnoteを、加入発表と同時に出したらかなり多くの人に購入してもらえたんです。その経験からさらに一歩踏み込んで、僕が長年に渡って毎週末の現場で構築した関係者から得た移籍の情報をオフシーズンに発信しはじめたら、反響がもの凄かったんです。

2019年。現・日本代表の板倉滉選手にオランダまで会いに行った

そういった新しい試みをつづけるうちに、「これはnoteだけで十分にやっていけるな」と感じました。

もともと自分がnoteやSNSでサッカーの発信をはじめた背景として、TwitterをはじめとしたSNSが流行したことで、いわゆるメディア企業や媒体に対して個人が戦えるフィールドが整ったことが挙げられます。「一個人として、特にサッカーでスポーツメディアと同じ土俵に立てるのではないか」と考えるようになり、それを実践してみようと思ったんです。

リアルな話をすると、スポーツライターが媒体の原稿料だけで生きていくのはそれなりに大変です。

スポーツの情報発信をするにはお金がかかります。現場に行って素材を集めようとしたらなおさらです。特にサッカーの場合はわりと辺鄙なところにグラウンドがありますし、若い年代の試合を見に行こうとするとさらに遠い。移動をするためにはお金と物理的な時間がかかってきます。

(週末に静岡まで移動し、U-15世代の試合を取材する竹中さん)

じゃあそこで得られる原稿料がどうかというと、そんなに高くはありません。しかも雑誌やWeb媒体が不調になってきて原稿料がさらに下がってくると、たぶん、取材のための遠征費が捻出できないという負のサイクルに陥ってしまいます。

ただ、それがいまはnoteで記事を書いたり、YouTubeで発信したり、読者の方に直接情報を届けることで、だんだんとサッカーの専門媒体で書くよりも多くの収入を得られるようになってきました。

自分しか持っていない情報があることをファンの方々に示すことができれば、個人のスポーツライターでも自分のメディアで活動していける。それを確信したのがここ2,3年で、これは大きな手応えでした。

ライターが自分のメディアを持つのが当たり前になる

——個人メディアのブランディングについてはどうでしょうか。新しいファンを増やしていく方法は考えていますか。

竹中:いまnoteと同時にYouTubeチャンネル「レオナチャンネル」も運営しています。YouTubeではさらにマニアックな中学サッカーのことを中心に発信していて、たとえば中学生の注目選手とか、地方の試合の振り返りとか、年間ベストイレブンを考える、みたいな内容です。

なぜYouTubeかというと、中学生は記事をほとんど読みません。そもそもTwitterのタイムラインに流れてきたリンク先に飛ぶという行為もあまりしないことがわかってきました。

僕らのような30代前後の世代はインターネットに触れたときに情報の受発信をする際の手段はテキストがメインだったと思うのですが、彼ら彼女らは動画がスタンダードなんです。ブロガーの情報を見て育った世代とYouTuberを見て育った世代の違い、という感じでしょうか。

なので、この年代にとどくようにInstagramのストーリーにYouTubeのリンクを貼っています。中学生はInstagramでのコミュニケーションがかなり多いことも、この発信をしていてわかったことなんです。それでちゃんと反響があります。

とどけたい層に合わせてnoteとYouTubeの両方で発信をしつつ、あとはTwitterで細かい情報をアップデートする。これで自分のブランディングにしっかりとつながっていきます。

自分のオリジナルの媒体で発信しつづけることが自身の価値を高め、そのまま信頼の蓄積となります。ましてや収益的にも良いとなると、今後はフリーのライターは自分のメディアを持つのが当たり前になっていくのでは。

もちろん専門媒体などに書くことも信用度を高めるという点で大事だと思います。特に最初にキャリアを作るためには必須です。ただ、あるていど個人の媒体のパワーを持つと変わってくるかな、と。

最近はそこにばかり時間を割いてしまうことでnoteやYouTubeの更新が鈍くなり、直接自分の情報を欲して待っている読者・視聴者と距離が開いてしまうリスクもある、と思うようになりました。

いまはいろいろなツールやサービスを使うことで個人の発信力でマネタイズができる時代ですし、noteのように直接的にコンテンツを販売しなくとも、多くのファンに支持されていれば、そのコミュニティに対する拡散力を買ってくれる企業さんもいます。

そういう意味では、僕らスポーツライターはもっとITリテラシーやビジネス感覚を養ったほうがいいと思います。まだまだ、昔ながらの“記者”タイプの人が多く、他のメディア業界と比べて遅れているところが多いなと感じます。

既存の仕組みだけに依存せず、これまでとは違うマネタイズ方法も持った上で活動していく必要があるのではないでしょうか。

竹中玲央奈さん
note:https://note.com/reona32/
YouTube:https://www.youtube.com/@reonachannel32



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