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最後の作品として描きはじめたマンガ『きつねとたぬきといいなずけ』で、自分の適性を見つけた。漫画家・トキワセイイチさん #noteクリエイターファイル

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、漫画家のトキワセイイチさんにお話をお聞きしました。

2018年4月より、noteで漫画『きつねとたぬきといいなずけ』を連載し始め、その年の春の「第二回クリエイターコンテスト」でnote賞を受賞。

一人の青年のもとに、いいなずけだとやってきた言葉を喋るきつねとたぬき。人間と動物の不思議なふれあいが描かれるファンタジーでありながらも、ほっこりかわいいだけじゃない、闇夜を照らす月明かりを見ているような物語です。

また、マウスコンピューター×note「#描くようになったきっかけ 投稿コンテスト」にて描いた作品「それはまるで呪いのよう」は、Twitter上で18000リツイートを超えるほどの反響が!

他にも、ほぼ日の #生活のたのしみ展 やキリンビールの #あの夏に乾杯 など、noteのコンテストやお題企画にも参加してくれています。

読者と編集者との出会いをくれたnote

10年前に関西から上京し、漫画家のアシスタントとして働き始めたトキワさん。アシスタントとして日々忙しく漫画を描いているものの、なかなか自分の作品を描く機会は訪れなかったそう。

「10年経って、このまま続けていていいのかなあと身の振り方を考えたときに、最後に何か作品を残しておこうと思ったんです。描き切ったらやめるつもりで、描き始めたのが『きつねとたぬきといいなずけ』だったんですね」

2018年1月1日にTwitterアカウントを開設して、漫画を投稿。当時のフォロワーは7人程。なかなか反応がない中、見てもらうための方法を探っていたところ、noteと出会い、連載を始めます。

「ただ作品を載せただけなのに、すぐにスキやコメントが来て、驚きました。そのうちにnote編集部がピックアップしてくれて、その数が増えていって。自分の作品を見てくれている人がいること、声をかけてくれることが何より嬉しかったですね」

noteで漫画を連載するようになってから、1年が経つ頃、noteを読んでいた編集者からの依頼で講談社「マネー現代」で『3時のとらちゃん』の連載がスタート。

「漫画を載せるような媒体ではないですけど、編集者さんが漫画好きということもあり、二人三脚で、自由に描かせてもらっています」

ほかにもnote経由で編集者から直接連絡があり、打ち合わせをして仕事につながっていくことも増えているのだとか。

「通常の漫画デビューは、賞に応募して編集担当がついて、という流れなので、編集者が自分の作品を好きでないケースもあると思うんです。でも、noteに連載をしていると、僕の漫画が好きだと思ってくれた編集者が直接声ををかけてくれるので、かなり友好的な出会いにつながるなと感じています」

大人も子どもも楽しめる物語を描きたい

現在、『きつねとたぬきといいなずけ』は100話を超えて、4冊の本にもなっています。

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この物語はどんなふうに生まれたのでしょうか。

「アシスタント時代に、仕事仲間が漫画家としてデビューすることになって、作品のタイトルを当てるクイズをやっていたんです。その時になぜか僕は『きつねとたぬきといいなずけ』と答えていて、的外れだったんですけど、そのタイトルがずっと心に残っていて。1年後くらいに、キャラクターを描いてみたのが始まりですね」

当時は青年誌でのデビューを目指し、今のタッチとは異なるリアルな描写に憧れ、ファンタジーを描くことは全く想定外だったと言います。

「むしろこういう、かわいいキャラクターがわちゃわちゃする世界観は好きじゃなかったんです。でも実際に描いてみたら、スラスラ描けて、こういうタッチの物語を描くことが得意なんだと自分の適正に気づいて、驚きました」

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それでも、きつねとたぬきというキャラクターを描こうと思ったのには理由がありました。

「大人だけでなく子どもにも読んでもらいたいと思ったんです。甥っ子姪っ子ができて、彼らとふれあうようになって、近い将来、彼らに読んでもらえるものを描きたいなと。子どもがキャラクターで楽しめて、大人が物語で楽しめるような。時代性に合ったものよりも、普遍的なものを描きたいと思ったんです」

描き続けるために課したマイルール

トキワさんは、インターネット上で漫画を描き始めた当初、「1日1ページのネーム、1週間に1ページ以上は必ず仕上げる」というマイルールを自分に課していました。

「クオリティとしては、100%までいかなくても90%くらいで丁寧に描いたものを掲載することも意識していました。時間がないからとラフ的なものをあげることはしない。1年くらい続けたんですが、今振り返ると、ルールを設けて、描き続けられるペースと環境をつくることは大事だと思いますね」

トキワさんの漫画は基本的に7コマ。これも描き続けるためのルールの一つでもあるようです。

「描き続けることを考えたら、自分に一番適したスタイルが7コマ漫画だったんです。7コマあるうち、間の4コマくらいは微動だにしないキャラクターがいても成り立つ、というか、最後にオチがあればその空間が活きてくる。そういう自由度が自分に合っているなと。

一方で、ストーリー漫画のように、コマを大きくできない不自由さはあるんです。7コマ漫画を描く中で芽生える『ここでコマを大きくしたい!』という感情は、次にストーリー漫画を描く時に活かされそうです」

商業出版を目指して、描き続ける

最後に作品を残しておこうとインターネット上で描き始めた『きつねとたぬきといいなずけ』は、トキワさんを思わぬ場所へ連れて行きます。

「『きつねとたぬきといいなずけ』を描く前は、自分から描きたいと思う気持ちがなかったんです。アシスタントを続けるうちにプレッシャーにもなって描けなくなるというか。振り切って自分が好きなように描いたことで、ぽこぽこと描いてみたいテーマが浮かんできました。他の作品も含めて、描き続けたいと思えたことは、自分にとっての変化でしたね」

トキワさんは今、『きつねとたぬきといいなずけ』を個人的な作品としてnoteで育てながらも、他の作品も含めて、商業出版を目指していると言います。青年漫画に挑戦する予定もあるのだとか。

「喉から手が出るほど求めていたのものが、気づいたら間近にあって。自分がこれまで、手を動かし続けてきたからこそだと思うので、これからも描き続けていきたいと思います」

■クリエイターファイル
トキワセイイチ

漫画を描いています。Twitter →@seiichitokiwa 連絡先→ seiichitokiwa0101@gmail.com  通販→https://seiichitokiwa.booth.pm/
note: @seiichitokiwa/magazines


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