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コンテスト大賞をきっかけに、はじめての絵本を出版 イラストレーター・おおたわたるさん

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、noteで開催された「#土屋鞄の絵本コンテスト」でグランプリを受賞したKashikoiさん(以下、本名のおおたわたる)さんにお話を聞きました。

2019年の春、土屋鞄製造所とnoteで、絵本の投稿コンテストを開催しました。テーマは「長く大切にしたいもの」。155の投稿作品の中から、グランプリに選ばれたのが、おおたわたるさんの『よるのひみつ』です。

そして2020年の秋、ついに絵本『よるのひみつ』が完成。現在、土屋鞄のWEBサイトと実店舗で販売されています。


初めて一枚絵を描いて、未完成のまま投稿した作品

おおたさんが絵を描き始めたのは、大学3年生の頃。休学して台湾に留学中、スマホで切り絵風の絵を描いて、インターネット経由で販売をしていたそう。

「お金がなかったので少しでも足しになったらと思い、絵を描いてインターネットで売っていました。台湾にいたので中国古来の切り絵のテイストにすれば少しは箔が付くかなあと。見よう見まねで描いていましたね」

帰国して就職先が決まった大学4年生の終わり、おおたさんはnoteで絵本コンテストが開催されることを知ります。

「もともとnoteは、別のアカウントで投稿していたんです。絵を真面目にやるなら新しいアカウントがいいな、と絵本コンテストの応募用につくって。一枚絵は描いたことがなかったんですが、描いてみたら満足するものができたので、思い切って応募してみました」

おおたさんが最初に描いたのは、応募投稿のサムネイルになっている、大きなクジラと小さな男の子が向き合っている絵。この一枚から、少しずつ物語の発想を膨らませていったそう。

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投稿した当初は、まだ「未完成」だったと言います。

「絵本コンテストに応募したときはちょうど、大学があった北海道から入社する会社がある東京への引っ越しがあったんです。2日くらいでざっと描いて、どんどん手を加えていこうと考えていたんですが、実際にできたのは1週間くらいで、僕の中では未完成のままでした」

クリエイターにチャンスをくれる頼もしい場所

「未完成」であっても、絵本コンテストに応募してみようと思えたのは、noteだったから、と振り返ります。

「応募要件だけを見て郵送するようなコンテストはハードルは高いけれど、noteのコンテストはネットでできて、リアルタイムで他の応募作品も見られる。いろんな方が応募されていて、僕も挑戦してみようと背中を押されました。投稿してから更新ができるのも、応募のハードルが低かったです」

とはいえ、投稿してからは、他の応募作品の一覧を見ながら気を揉んでいたそう。

「僕は全く新しいアカウントでフォロワーもいないし、人気もなくて。投稿してから特に反響があったわけではないので。プロの方が描いているものや人気のあるもの、他の応募作品を見ながら、僕が受賞できるわけないな、とあきらめていました」

ところが、新卒で入社した会社で慣れない仕事に慌ただしくしていた2019年の6月。noteからグランプリ受賞の連絡が届きます。

「忙しい時期だったので、受賞のメールに気づかず、二度ご連絡をもらいました。いやあ、嬉しかったですね。まさか自分がグランプリをもらえるなんて、思ってもみなかったです」

「自分がグランプリを受賞して、noteは等しくクリエイターに門戸が開かれた場所なんだなあと思いました。チャンスがある、頼もしいプラットフォームだと。土屋鞄さんも、有名だから、人気だからではなく、フォロワー数やスキ数も少ない無名の僕を選んでくれた。ちゃんと見てもらえて、見つけてもらえて、よかったです」

noteに投稿したひとつの物語が絵本になるまで

受賞発表後、書籍化に向けて動き出したおおたさん。日中は会社で働き、帰宅後に、iPadでラフを描き絵や台詞を修正する毎日。2週間に一度のペースで、20時頃から編集を担当したnote代表の加藤とディレクターの三原とともに、編集会議も開きました。

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「加藤さんから、『色が暗い』『台詞が長い』とフィードバックを受けたことが印象的です。絵本を描くことは初めてだったので、何枚もの絵に一貫性を持たせるのにも苦労しました。構図もキャラクターたちの表情も変わっていって。深夜に何度も描き直しました」

取材をしたその日、「苦労の跡ですね」と、描き直しを重ねた原稿を見せてくれました。

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「土屋鞄さんにもたくさんフィードバックをいただいて。1年くらい何度も描き直して、正直自分では見飽きていましたが、本になると全然見え方が違う。手にしたときは感動しました」

「読み聞かせのイベントなどはコロナ禍でできなくなってしまったんですが、代わりに土屋鞄さんがオリジナルの『革の宝箱入れ』がつくれるキットを付けた特別版も販売してくれています」


これからも絵を描き続ける自信が持てた

絵本が完成した今、おおたさんはこれからどんなことをやってみたいと思っているのでしょうか。

「ひとつ実績ができたので、絵の仕事もしていきたいなあと思っています。今回、働きながら絵本作成に取り組んでみて、なんとかできるし、会社とは別の居場所があることもよかったなあと。会社でうまくいかなくても、絵本をがんばろうと思うことで乗り越えられたこともありました。いい会社なのでやめたくないですし、副業的にやっていくつもりです」

そんなおおたさんには、憧れの人がいます。イラストレーターとして活躍する木内達朗さんです。

「木内さんの絵がすごく好きで。絵本を描くときも、背景のタッチなど木内さんの絵を意識することもありました。木内さんが開いている講座もあるので、絵をもっと勉強したいです」

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コンテストに応募してから絵本を出版するまでを振り返っておおたさんは「自信が持てた」と話します。

「これまで公の場に自分の絵を発表したことがなかったので。表に出てみて、認知度がないところから評価をしていただいて、絵本を出版できた。真面目にやっていればちゃんと見つけてくれる人がいる。描き上げることができたことも含め、自信になりました。これからも描き続けていきたいです」

おおたさんが初めて描いた絵本『よるのひみつ』、ぜひ手に取ってみてください。

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■クリエイターファイル
kashikoi

中国切り絵風の絵を描いています。最近はiPadで違う画風にも挑戦しています。noteで開催された「土屋鞄の絵本コンテスト」でグランプリを受賞し、絵本『よるのひみつ』を出版。
note:@kashikoi

text by 徳 瑠里香 photo by 小島瑳莉


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