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マガジン

  • 【小説:完結済】アンタイトルド

    企画「#やがて光となって散る」参加作品。 奇病の蔓延するいつか。わずらう二人は夢かうつつか幻か。生きる、意味と目的を賭けて問うて、散るまでに。SFファンタジー。 (20、30、40代代表作を転載中です。いずれかはご想像にお任せしますので、完結年は明記しません)

  • 【小説:完結済】魔法使いの右腕

    今や、持続可能な社会に欠かせぬエネルギーとして活用される魔法。 そんな未来の、新米魔女とその右腕(あいぼう)の物語。

  • 素人と庭

    以前、プランターで楽しんだ野菜作りを地植えで挑戦。 かんばらない、あり物でしのぐをモットーに、記録してゆきます。 いうまでもなく失敗したら即日終了です。

  • 【小説:連載中】腕を失くした僕たちは(仮)

    歴史にくさびが打たれて80年余り。 ピージーは優しい世界に生まれた。 たぶん長編SFファンタジー。

  • 【小説:完結済】SO WHAT ?!

    映画館でアルバイトのはずだった?! 謎のテロ組織を追ってデコボコバディが駆け抜ける。作り手と楽しむ人々へ愛を込めてお届けする、アクションあり恋愛ありの、エンタメ×サスペンス×コメディー。 (20、30、40代代表作を転載中です。いずれかはご想像にお任せしますので、完結年は明記しません)

最近の記事

虚実は揃い、白紙が残る 33

 うわっ、と叫んで身を反らせる。  怯む男の手から野津川はライターを叩き落とした。 「怖がるとでも思ったのかっ」  消えたライターの火に代わり、野津川の光がむしろ辺りを昼間と照らし出す。ならボクシングはまるでこの日のために続けてきたようなものだった。 「死ぬ気で上がってきたヤツをナメるなぁっ」  ハスに構えて脇をしめる。もう体は覚えており、持ち上げた拳を小さく踏み込むワンツーで、男の顔面めがけ叩き込んだ。打ち込んだ拳は素早く引き戻すが鉄則で、高さを維持してガードを忘れず。肩の

    • あたしと右腕の魔法 第4話

       とたんに、じりり。  地面が動く。  アルテミスシティの隅にくっつくありふれた町角に敷かれた道路は、ベルトコンベアみたくあたしたちの足をすくって町へ向かい流れ始めた。けれどそれは水平にじゃなくて途中から切れると、見る間に空へ反り上がってく。ならあたしたちの周りで空もまた押し出される背後へ落ち始めた。 「なっ、なんだぁっ」  まるで宙に放り出されたみたい。ダブルイが声を上げて、言い切らないうちに落ちた空はあたしたちの足元をすり抜け、ダブルイの背から再び頭の上へ昇ってく。止まる

      • あたしと右腕の魔法 第3話

         夕焼けの赤がドームの空からまた消される。  アルテミスシティは今夜もそうして宇宙に晒されようとしてた。  作り物だから頭上に家路を急ぐ魔法使いは一人も飛んでいない。でも時間帯はそんな頃合いで、静かすぎる辺りを紛らせロボの流すネットニュースがあたしの鼓膜を揺すっていた。  そこで淀みないアナウンサーは火星で起きた崩落事故の続報を読み上げてる。ボルシェブニク校長をはじめとするビリオンマルキュール級の魔法使いたちは、閉じ込められていた最後の一人もついに無事救出したみたいだった。そ

        • 再生

          素人と庭12 ~野菜はできるのか~

          あり物でしのぐ初めての地植え。 頑張らないがモットー。 なすとミニトマトの第二章、開始。

        虚実は揃い、白紙が残る 33

        マガジン

        • 【小説:完結済】アンタイトルド
          5本
        • 【小説:完結済】魔法使いの右腕
          4本
        • 素人と庭
          12本
        • 【小説:連載中】腕を失くした僕たちは(仮)
          2本
        • 【小説:完結済】SO WHAT ?!
          2本
        • 【小説:完結済】ハードボイルドワルツ有機体ブルース
          2本

        記事

          虚実は揃い、白紙が残る 32

          「お前ら何してるっ」  文倉の声が響き渡る。唐突さにも、差し込んだ光にも弾かれ男女は振り返っていた。遅れてツン、としたニオイが野津川の鼻先をかすめる。  灯油だ。 「ざまぁみろ。身のほどを思い知れっ」  同時に男がカラになったポリタンクを投げ捨てていた。乾いた音を立てながらポリタンクは斜面を転がり落ちて行き、空いた手で男は歪むほどと上着のポケットをまさぐってみせる。抜き出せば手の中でジッ、と石を擦る音はした。小さな炎は凶器と互いの間に立ち上がる。 「オマエ何をしているのか分か

          虚実は揃い、白紙が残る 32

          虚実は揃い、白紙が残る 31

           ジリリ、太陽が照り付けていた。  眼下には発射を控えたロケットが延々果てまで並んでいる。下に敷き詰められた耐火タイルは映像で見た通り水玉模様を大地に描き、受けた日の光を強く反射させてそれぞれの中央に、刃物さながらつややかと光るロケットを立てていた。  そのひとつが、ふたつが、遠く近くで支えていた発射台をゆう、と倒してゆく。直後に猛烈な白煙は噴き出して、やがて重たげとロケットは地上から尻を浮き上がらせていった。  次第に加速してゆく姿が空の青に冴える。  見送れば轟音は遅れて

          虚実は揃い、白紙が残る 31

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           誰だろうとお断りだったが、中でもキララにはとうてい見せられない。頭の回転の速さで何を言い出すやら恐ろしすぎた。やっと制限解除の許可が下り、保安局という心配事からも解放されたばかりだというのに、それだけは御免だった。  持ち帰った教科書をクラバチルの自分の部屋で再び開く。ラクガキが鉛筆描きだったことには胸をなでおろすしかないだろう。消しておこうとピージーは消しゴムを取り出す。ラクガキへ押し付けた。  だがどうにも思い切れない。  雨合羽の何者かとしばし睨み合う。  やがて消し

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          素人と庭11 ~野菜はできるのか~

          以前、プランターで楽しんだ野菜作りを地植えで挑戦。 かんばらない、あり物でしのぐをモットーに、記録してゆきます。 ゴールデンウィークスペシャルで長め。 中途退場になることなく、第1章完結。 次回から少しだけリニューアルで第2章へ。

          素人と庭11 ~野菜はできるのか~

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          あたしと右腕の魔法 第2話

           ザルをめちゃくちゃにしたドラゴンを生け捕りにする。  嘘はないと思う。  あたしが再びあのビーチを訪れたのは、お仕事へ向かう魔法使いや持たない人たちがアルテミスシティにあふれだす時間帯で、そんな時間に空からでなく地面から、縞の体操着で現れたあたしに先輩はずいぶん驚いた顔を向けていた。けれどあたしのことはしっかり覚えていてくれて、話へもしっかりちゃんと耳を傾けてくれている。しかも「フフフ」なんて魅力的な笑みを浮かべた先輩はと言えば、あたしの申し出に協力の約束さえしてくれた。

          あたしと右腕の魔法 第2話

          あたしと右腕の魔法 第1話

           ふわりふわり、とした歩調にもずいぶん慣れてしまってる。それもこれも魔法が使えなくなってしまったからで、ハイヤーエリアのホテルで振り絞って以来、ピリピリしていた指先からそうした感覚も消えてなくなると、いつしかあたしの手はただの手に戻ってしまっていた。  集積所でノートの切れ端を探している時からもう気づいてる。それはどうしても嫌な予感を囁いてならなくて、だからあたしは知らないふりを続けてた。  キャンプラボの自動ドアはちょっと感度が悪い。開いて表へ出ればそこはもう、魔法を持たな

          あたしと右腕の魔法 第1話

          虚実は揃い、白紙が残る 30

           変だった。  出来上がった小説をまことへ送信した夕暮れの、のしかかるような倦怠感のその奥に、野津川は悪寒にも似た震えを感じて手を擦り合わせる。また熱でも出してしまったのか。額へとあてがった。えっ、と気づいて目を向ける。だが強すぎる発光のせいで判然としないならもう一度だ。右と左を擦り合わせ、絡めた指の感覚をひたすら手繰った。  ウソだ。  果てに自分へ吐きつける。  感覚も輪郭もだ。  ない。  つい先ほどまで何千かの文字をタイピングしたばかりの、まことへメールを送信してエン

          虚実は揃い、白紙が残る 30

          虚実は揃い、白紙が残る 29

          「デカいヤマ、って何を」  政府のシステムへハッキングすることをやめてからしばしば衛生局のサービスを利用した。  もう、おれんじがとやかく言うことはない。動作の保障されていないジャックを片耳ずつ分けて一晩、試したことさえある。そのせいでか臨場感の薄れた夢は狭い視界のモノローグへ様子を変えると、続きを投影しておれんじへも見てきた全てを明かしていた。目覚めたおれんじはといえば、大長編の映画でも見終えたかのような具合だ。ベッドの上で背伸びすると、はまぐりかと腹の上へどうんと乗って、

          虚実は揃い、白紙が残る 29

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          素人と庭10 ~野菜はできるのか~

          以前、プランターで楽しんだ野菜作りを地植えで挑戦。 かんばらない、あり物でしのぐをモットーに、記録してゆきます。 いうまでもなく失敗したら即日終了です。 初めてボカシを入れる。ってそこかい。 思いがけない再会もあり。

          素人と庭10 ~野菜はできるのか~

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          第30話 case4# COMING SOON!

           レフに問答無用と引っ張り込まれたのはほかでもない、重火器保管庫、そこに併設された射撃練習場だった。  勤務中、匿われたものと同じ物を携帯するレフだからこそ立ち入りは許可されているのか。入ったところの棚からイヤーマフを掴み出すと百々へ押しつけ、放っておけずついてきたストラヴィンスキーもろとも隣り合う薄暗い射撃レーンへ移動している。薄暗がりのはるか向こう、ターゲットはブロックに囲われ亡霊よろしく浮かんでおり、前にして銃を抜いたレフは軽く引いた後ろ足へ重心を預けるが早いか、引き金

          第30話 case4# COMING SOON!

          第29話 case4# COMING SOON!

          「ならこの爆発はそんな榊が万が一に備え証拠隠滅に仕掛けたものだ、と理解していいってことですよね。消防の方では一番焼け方の激しかったデスクの……」  今一度、写真へ身を乗り出し目を泳がせ、机に焦げ付いた黒いシミを指で押さえた。 「コレですね。飛び散った破片からパソコンが置かれていたってことですが、コレが発火元だと言っています。例の玉については現在も捜索中。ただ榊の部屋は六階なうえ、周囲は住宅街ってこともあって外へ飛び出してしまったなら見つけ出すにはまだ時間がかかりそうです」  

          第29話 case4# COMING SOON!

          ACTion 29 『ギルド商人を続けるには』

           上がったコクピットで通信機器へ飛びついていた。  サスは仕事が忙しいらしく連絡がない、とネオンは話しているが、忙しいのは仕事でないことくらいアルトが一番よく知っている。約束通り『ラウア』語店員探しに没頭しているのだ。だからこそ一刻も早く手を引かせなければ、と気は焦っていた。  陳腐なもので調べを託したはずが、辿ったその先に何があるのかを熟知しているのはアルト自身だ。地球へ送りつけられたホロレターを手にしたあの時から妙に落ち着かなかったわけも、サスが調査をかってでたとき思わず

          ACTion 29 『ギルド商人を続けるには』