ワークショップを開催する理由①

「ニューヨークの会議通訳者が教える英語」のワークショップが始まったのは、数えてみると5年以上前のことです。最初は日本まで教えに行く予定などまるでなく、ニューヨークで通訳や翻訳の仕事に興味を持っている人たちのために、週末に講習会を開いたのがきっかけでした。

何度か回を重ねるうちに、通訳や翻訳よりも「英語の勉強をしたい」という希望を多く聞くようになりました。みんなそれまでに語学学校や大学に通って勉強してきたものの、それでもわからないことがたくさんあったからです。「学校で教えてもらえないことは、いつまで経ってもわからないままになっている」。アメリカに来たての人から10年以上住んでいる人まで、みんな共通の課題を抱えていたのです。

私も講座を続けるうちに考えが変わってきました。翻訳、通訳の一定の需要はこれからもあるでしょう。でも将来の「英語屋」を増やすより、「英語ができる日本人」を増やすことを考えるべきではないか。自分で英語を使って意思疎通や情報収集ができる人は世界中に大勢いて、その数はアジアでもどんどん増えているのだから、日本だけ通訳や翻訳が必要な人が多すぎる現状は変わるべきではないか。

日本人だけ語学力があまり伸びていない」という実感は、1980年代からニューヨークで暮らし、通訳者として過去30年間、たくさんの国際会議や学会に参加して得られたものなので、大きな間違いではないはずです。

アジア人はアメリカ中に大勢います。かつては英語が苦手でもできる仕事に従事する人が大部分でしたが、今は違います。中国で育った研究者がケンブリッジでバイオテク企業を立ち上げ、韓国で育った弁護士がニューヨークの法廷で活躍し、GoogleのCEOも大学を出るまでインドで育っています(インド英語とアメリカ英語はかなり違います)。アメリカの一流大学の優等生は、どこへ行っても日本人を除くアジア人だらけ。各地の一流病院でも、アメリカで経験を積んだアジア人の医師が、アメリカ生まれの若手医師の訓練をしています。グローバル企業のアジア部門を統率している人たちも、英語と自国語と日本語を自在に話せる人が大勢います。彼らを見ていたら、「ネイティブじゃないから英語が上達しない」はずがないことは明らかです(実際に見たことがない人は信じられないかもしれませんが、誇張ではありません。アメリカに知り合いがいる人は聞いてみてください)。

それに対して日本人だけが、何十年も前に海外駐在や出張をしていた人たちから「英語はそこそこで充分」「発音は気にするな」「日本語の方が大事」「日本人は文法はよくできる」などと言われて、その状態に留まっています。これを見ていると本当に危機感を覚えます。数も水準も、他国との差は開く一方ですから。

アメリカの語学学校の先生たちの中には「日本人は意欲がない」と思っている人もいます。「試験の勉強だけして、他の国の学生のように自分から話そうとしない」というのが理由です。でも実は、日本人は「話そうとしても上手に話せない」のです。「もっと話せるようになりたい」とは思っているのですが、どうしたら良いのかわからないので「帰国子女じゃないから仕方ない」などという諦めの方向に向かってしまうのです。その本当の理由は、今までの勉強方法が大幅に間違っていたせいです。

私一人で日本の英語教育を変えることはできませんが、もっと英語が上手になりたい人たちの手助けはできます。長年のアメリカ生活、会議通訳者としてのさまざまな実地経験に加え、TOEFL準備講座の講師、留学生の家庭教師、塾講師としての実績はあるので、これまでに蓄積してきた勉強方法を効果的に教えられる自信は開始した当時からありました。

ワークショップ開催の第一の目的は「英語ができる日本人を増やすこと」です。

付記:Pronunciation Iが既に満席になってしまったので、初回参加者でもListeningから始めやすいよう、内容を工夫しました。発音も聞き取りも必要な基礎知識は同じですから、初参加の方も安心してListening講座から開始してください。

NY、大阪、東京ワークショップ
ニューヨークの通訳者が教える英語

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