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【2018年版】一年を振り返る、今年の「beの肩書き」ワークショップの手引き

年の瀬に「今年の漢字」ならぬ「今年の"beの肩書き"」を振り返る。そんなミニワークのやり方を、昨年からさらにバージョンアップして、再びオープンソースとして公開してみます。

ちょうど『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』が発売されたばかりなので、そちらもよろしければ◎

〈ひとりで、じっくり編〉は60分コースとしていますが、それぞれの時間は目安なので、適宜ご調整くださいませ。インストラクションを読みながらとすれば、1.5倍くらいの時間を見込んでおいた方がよいかもしれません。


完成した2018年版「マウナケア曼荼羅」

最後に完成するのがマウナケア曼荼羅です。「マウナケア」の名はハワイ島にある世界有数の火山からいただきました。doを島に、beをマグマに見立てたものを、ドローンのように上から俯瞰で見てみたような図です。あなたならではの火山島を自由に描いてみてください。

みんなでワイワイやってみたい方のための〈みんなで、じっくり編〉は、簡単なレシピとして後半にまとめています。「チェックイン/アウト」や「ストーリーテリング」などの詳細は、ぜひ書籍版を参考にしてみてください。

→ 資料のダウンロードはこちら


ひとりで、じっくり(60分)

〈やり方〉
①各月のdoを箇条書きで書き出す(20分)
②ユーダイモニアなdoに印をつける(5分)
③今年のdoを「マウナケア曼荼羅」で整理する(5分)
④今年の「beの肩書き」候補を選ぶ(10分)
⑤自分宛てに「メッセージカード」を書く(10分)

⑥「マウナケア曼荼羅」を仕上げる(10分)


①各月のdoを箇条書きで書き出す(20分)

まずは思い出す作業から。日記やカレンダーを見直して、良いも悪いも含めて印象に残っている出来事を各月5つくらい、書き出してみます

〈例〉
●1月
・家族のことでいろいろあった正月だった
・久しぶりにgreen drinks Tokyoのゲスト出演。しかも教育がテーマ!嬉
・東京出張にあわせて国会図書館で調べ物をするように
ワコールスタディホール企画のインタビューがアップされた
・beの肩書きWS@ツクルバを開催
・2年目のソーシャルデザインプログラムが終了、ひきつづき試行錯誤
・ジョルジュ・ペレックから連珠へ...


ユーダイモニアなdoに印をつける(5分)

今年のdoのリストアップが終わったら、その中からユーダイモニアといえるエピソードに印をつけていきます

シンプルにいえば「自分の可能性が発揮されていたなあ」「もっとこんな時間が増えるといいなあ」と感じることです。複数あってもいいのですが、「格別にこれ!」といえるものをなるべく厳選してみてください。

古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが提唱した概念であるユーダイモニアとは、「個人的な充実のある活動を行なっているときに感じられる一連の経験」を意味します。それは私たちが秘めている可能性を最大限に発揮しているときに感じられるものであり、「これが本当の私だ」という感覚を生み出す、とされています。
兼松佳宏『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』p51
〈例〉
●1月
・家族のことでいろいろあった正月だった
・久しぶりにgreen drinks Tokyoのゲスト出演。しかも教育がテーマ!嬉
◎東京出張にあわせて国会図書館で調べ物をするように
ワコールスタディホール企画のインタビューがアップされた
◎beの肩書きWS@ツクルバを開催
◎2年目のソーシャルデザインプログラムが終了、ひきつづき試行錯誤
・ジョルジュ・ペレックから連珠へ...


③今年のdoを「マウナケア曼荼羅」で整理する(5分)

今年の代表的なdoを4つ選んで、「マウナケア曼荼羅」のdoの部分を埋めていきます。このとき主たる仕事、新たに始まりつつある仕事、家庭での役割、その他フリーテーマなど、いくつかバリエーションがあった方がいいかもしれません。

「4つに絞れない」という方は、6角形でもOK。ただ8角形にまでなってしまうとてんやわんやになるので、なるべくメタな視点に立って4つくらいに統合する方がよいのかも、と個人的には思います。

〈例〉
①研究者
(新たに始まりつつある仕事)
②お父さん(家庭での役割)
提唱者(新たに始まりつつある仕事)
教員(主たる仕事)


僕の場合でいうと興味深かったのは、去年からの変化でした。「著述家」として「書く」ことが柱であることは変わらないのだけど、その上位概念として「提唱者」であることを意識したり。あるいは「モデレーター」が消えて「研究者」が浮上してきたり、「教員」の位置がちょっとズレたり。うーん、やっぱり毎年続けていくのは何だかよさそうですね。


④今年の「beの肩書き」候補を選ぶ(10分)

ここからの流れは2017年版と少し違います。

2017年版は、①今年の出来事を思い出し、②「○○な人」という強みのステートメントを言語化し、③それにあてはまりそうな肩書きを考えてみる、という流れでした。すると「○○な人」まではいけても、それを象徴するいい肩書きが思いつきにくい、という声をいただくようになりました。

そこで2018年版では、①今年の出来事を思い出し、②先に今年を象徴しそうな「beの肩書き」候補を直観的に選び、③メタファーとしてそれが意味していそうなことを振り返りながら、「○○な人」という強みのステートメントを言語化していく、という流れにしてみました。

先に言葉を選んでおいて、それを頼りに探求していくか、あとから自由に言葉にしていくか、どちらのやり方も一長一短あるので、しっくりくる方を選んでみてください。

次の⑤では自分宛に「メッセージカード」を書くことになりますが、上の図版が仕上がりのサンプルです。

「○○する●●のような人」=「どんな?」を形容する文章「○○」+職業名「●●」+ような人が基本形となります。●●には、②でユーダイモニアとして選んだエピソードを象徴する職業を4つ選んでください。

〈例〉
◎東京出張にあわせて国会図書館で調べ物をするように
 ↓
①勉強家...?

◎プレゼンでちょいちょい笑ってもらえた
 ↓
②喜劇俳優...?

◎ウリポの手法をいかした言葉遊びワークショップに手応え
 ↓
③ことば活動家...?

◎自分が考えたキーワードが誰かのボキャブラリーになる
 ↓
④哲学者...?

僕が実際には「喜劇俳優」や「哲学者」として活動していないように、あくまでメタファーなので、必ずしもその道のプロである必要はありません

「友人の相談に乗っているときが何だか占い師“ 的” だった」というふうに、それ“ 的” な経験について語れることがあれば何でもOKです。直接的にというよりはむしろ、その職業が象徴していそうな本質的な価値の方を大切にしてみてください。

パッと思いつかない場合は、下の「肩書きリスト」(『新 13歳のハローワーク』より抜粋させていただきました)からピンときたものを選びましょう。まずはすべてを目で追ってみて、気になった職業にいくつでも印をつけています。そして二周目で、②でユーダイモニアとして選んだエピソードを象徴していそうな職業を選んでみてください。


⑤自分宛てに「メッセージカード」を書く(10分)

象徴する肩書きが見つかったら、メッセージカードを用意します。いよいよ beの肩書きとして、「○○する●●のような人」を言葉にする時間です。

例えば「言葉で元気を届ける占い師のような人」はいかがでしょう? それとも「ひとの不安にまっさきに気づいて寄り添う占い師のような人」の方がしっくりくるでしょうか。メモをもとに言葉をこねこねしながら「○○な感じ」を探っていきましょう。

〈例〉
◎東京出張にあわせて国会図書館で調べ物をするように
 ↓
勉強家...?
 ↓
①断片的な知識が統合されていくことにワクワクする「勉強家」のような人!


⑥「マウナケア曼荼羅」を仕上げる(10分)

③で整理したdoの下に、beを書き込んでいきます。パッと見でdoとつながりが弱そうでも、意外としっくりはまることもあると思います。

とはいえbeは点線になっているように、本来beの部分は融け合っているように思います。「これはここかな?」と探り探り進めながら、「哲学者としてのお父さん?」「喜劇俳優としての研究者?」という不思議な可能性が開かれるのを楽しんでみてください。


ふたたび僕の場合でいうと、昨年から大きな変化がありました。「ことばの人」が「ことば活動家」としてしっかり言葉にできたのは嬉しかったですし、「哲学者」が急浮上してきたのは次の10年のための重要な布石となりそうです。



ここまで完成したら、その感想をぜひ「#be の肩書き」というハッシュタグをつけてSNSでつぶやいてみてください。もちろんプライベートなことでもあるので、無理のない範囲でOKです。意外なところからの意外な反応が、あなたを次の一歩へと導いてくれるかもしれません。

おつかれさまでした!


と、ここでワークはほとんど終わりなのですが、もし余裕があれば、4つのbeの肩書きをより深く統合するような、大文字の「BEの肩書き」も考えてみてください。それは例えば、僕にとっての「沙門」というものです。

ここで大文字のBEとしたのは、「大きい私」という意味をこめたかったからです。僕が好きな密教の言葉に「大我」というものがあるのですが、それは「狭い見解や執着から離れた自由自在の悟りの境地」を意味しています。(...)be の肩書きを通じていざ自分と向き合おうとするとき、どこかのタイミングで「大きな私」と出会うときが訪れるのではないかと予感しているのです。このことを直観したのは、後に登場いただくSIONEブランドデザイナー・河原尚子さんにとってのbeの肩書きである「10,000 代目」という言葉を聞いたときでした。その詩的な響きには「やらされている」から「やりたいことをする」という段階へと歩みを進め、さらにその次元をも超越した、「なるがままに、導かれるままに、ただ目の前のするべきことをする」という段階へと至る、まさに大我の境地を感じたのです。
兼松佳宏『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』p23

doからbeへ、そしてbeからBEへ。

beの肩書きのワークが、「本来の自分」と向き合うひとつの手引きとなることを願っています。


最後に

せっかくなので、何かひとつ布石を打ってみませんか?

安心できる友人に例えてもらう
自分一人で考えるよりも、自分のことをよく知ってくれている誰かに聞いてみるだけで、本質的なところがシンプルに浮かび上がってくることもあります

ユーダイモニアな瞬間の写真を撮る
「自分らしい」とはどういうことかを知るには、それなりにアンテナを立てないと難しいのかもしれません。「いま、ユーダイモニアだなあ」と感じたら、そのときの気持ちを思い出せるように、その瞬間の写真を撮影してみてください

be の肩書きである自分とデートする
beの肩書きである自分は、ときとしてdoの肩書きである自分に打ち負かされてしまうことがあります。そこで自分のbeが喜ぶような時間を、週に一度はもってみてください。床屋さんに行って「勉強家っぽい髪型にしてください」とオーダーするのもいいでしょうし、デパートに行って「喜劇俳優」っぽい眼鏡や上着を探すのも楽しそうですね。

be の肩書きである自分が喜びそうな勉強をはじめる
これもデートのひとつですが、beに根ざした何らかの問いや仮説は、きっとすぐには解決できない、何年もかけて掘り下げていきたいものなのだと思います。ぜひ人生を彩るテーマとして、探究をはじめてみてください。

「beの肩書き」を更新する
「doの肩書き」が他者に名乗るためのものだとすれば、「beの肩書き」は自分に向かって唱えるもの、といえるかもしれません。自分にとってしっくりくるように、言葉をアップデートしてみてください

「beの肩書き」ワークショップを開く
「ひとりで編」はやってみたけど、もう少し掘り下げてみたいと思った方は、ぜひあなたの大切な人たちに声をかけて、みんなでワークショップを開いてみるのはいかがでしょうか。ふたりペアでも3人でも十分ですし、会社の同期やクラスメイトなどを招いて10人前後で開いてみても面白いと思います。

ちなみに以下は「みんなで、じっくり」編の一例です。「チェックイン/アウト」や「ストーリーテリング」などの詳細は、12月に発売したばかりの『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレセントしよう』をぜひお手にとっていただけると嬉しいです◎

みんなで、じっくり(3人、120分)

〈やり方〉
①チェックイン(5分)
②各月の「do」を箇条書きで書き出す(20分)
③ユーダイモニアなdoに印をつける(5分)
④ユーダイモニアのシェアリング(5分×3人)

⑤今年の「do」を「マウナケア曼荼羅」で整理する(5分)
⑥今年の「beの肩書き」候補を選ぶ(10分)
⑦ストーリーテリング(10分×3人)
⑧「メッセージカード」を贈り合う(10分)
⑨「マウナケア曼荼羅」を仕上げる(10分)
⑩チェックアウト(10分)


はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎