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「地獄でなぜ悪い」を聴きながら

 アーティスト、俳優、文筆家として活躍している星野源さんの曲に「地獄でなぜ悪い」という曲がある。

 たしかもともとは同名の映画「地獄でなぜ悪い」の主題歌として書き下ろされたものだったように思う。しかし、わたしはこの映画を見ていないので、ここで云う「地獄でなぜ悪い」は星野源さんの曲のことである。

 わたしはこの曲に非常に強い思い入れがある。
 基本的に、あまり運の良い人生を歩んでこなかったわたしだ。「なんで自分だけがこんな目に遭うんだ」と人生を呪ったことを1度や2度ではない。しかしちょうど下の記事に書いたパワハラに遭っているときに、この曲に出会った。

 
 曲自体は非常に楽しげなポップな曲であるが、歌詞は非常に痛みや辛さに満ちている。できれば、この記事のトップ付近に貼り付けた曲を聴いてほしいが、以下にも歌詞を貼っておく。

無駄だ ここは元から楽しい地獄だ 生まれ落ちた時から 出口はないんだ
星野源「地獄でなぜ悪い」歌詞より
嘘でなにが悪いか 目の前を染めて広がる ただ地獄を進むものが 悲しい記憶に勝つ
星野源「地獄でなぜ悪い」歌詞より

 この中で特にわたしが好きな言葉は、「ただ地獄を進むものが」である。
 ーーああ。そういう気分で生きている人がわたしだけではないんだと、寂しさや苦しさが消えていく感覚を覚えたのだ。星野源も若い頃は不遇で全然売れておらず、さらに売れ始めたころに、くも膜下出血を経験し、地獄をみている。この曲はそのくも膜下出血の経験をもとに書かれたということだ。地獄を感じているのはわたしだけではない。(程度の差はそれぞれであろうが)

 そういえば、ライターのマフィア梶田氏も、「星野さんではこの曲が1番好きだ」と言っていた。彼も不遇な思春期時代を過ごしたことで知られている。もしかしたら、地獄を感じた人で、この曲に共感できる人は多いのかもしれない。

 ずっと先まで真っ暗な人生という地獄を、ただただ歩く。進む。その結果として、悲しい記憶に勝つのかどうかはわたしはわからない。というか、曲を聴いている印象として、星野源もきっと知らないと思う。どちらかというと、この部分は「最終的には勝ってほしい」というささやかな希望を歌っているように聞こえるのだ。それよりも、前の「ただ地獄を進むもの」の方に共感してほしいのではないか。

 わたしはたまにこの曲を聴き、踊る。といっても、わたしは踊ることなんてできない。踊ろうとする、という表現の方が正しい。が、踊ろうとする曲は、ただ唯一この曲だけである。

 もしこれを読んでいる人も、地獄にいると感じているのなら、ぜひこの曲を聴いてみてほしい。あなたが地獄にいるというのなら、わたしも同じ地獄にいる。

同じ地獄で待つ 同じ地獄で待つ
星野源「地獄でなぜ悪い」歌詞より

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