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「神田阿久鯉・春風亭一之輔二人会」感想

落語界と講談界それぞれの実力派名人が二人揃って名古屋で会を行われるということでとても楽しみにしていました。

チラシに記載があったのですが、お二人は実は同じ大学の先輩後輩なのだそう。
そういう知識があまりないので知ることができて嬉しいです。

当日のパンフレットにもお二人のつながりや大須の商店街や演芸場へのコメントがあり主催者さんの心配りがまた嬉しい。
合わせて、プロフィール紹介の欄で一之輔さんに10月付で五番弟子の「らいち」さんが入門されたことを知りました。
おめでとうございます!

前座は神田梅之丞さん。
梅之丞さんは2022年4月23日長野の北野文芸座で初めて聴くことができてから早いもので一年半ぶり、名古屋にいるとなかなか機会がないのでとても嬉しい。
初めて聞いた時は、声もはっきり通っていて話の盛り上がりやスピードもあり、まだ入門してそこまでたっていないのに!
と、とても驚きました。
ずっと、その時の印象が強烈に残っています。

演目は「海賊退治」
よく通る声は以前の印象通りで、表情もにこやか。
太刀のやり取りの場面では身振りも大きく、以前よりも師匠の姿を彷彿とさせる場面が多かったです。

釈台を片付ける手間などもあるかと思い、阿久鯉→一之輔→仲入り→一之輔→阿久鯉(敬称略)の順かと思っていましたが、次は一之輔さんでした。

演目は「反対俥」
NHK新人落語大賞での林家つる子さんやこしらの集いで立川こしらさんで聴いていた演目だったので、一之輔さんの反対俥を聴けて嬉しい。
大変面白かったのだけど結構アレンジされた話でした。
まるで演目「うどん屋」の酔っぱらい客みたいに自分語りが止まらない車屋のおじいちゃん。
いつ速い車屋に乗り換えるんだろうと思ってたら、まさかの乗り換えないままオチになるという衝撃展開でした。
一之輔さんの落語は思わず吹き出してしまうような体から湧き上がる笑いでオチのあとしばらく笑い声がおさまりませんでした。

次の阿久鯉さん、演目は「天保六花撰 河内山と上州屋」
なんと中入り後の一席と続き読みにしてくださるとのこと!
じっくり二席続き読みで講談が聴ける喜びで会場中から拍手が鳴る。

一度で意味を聞き取ることが難しいところなどに解説も挟みつつしっかりと読み聴かせるという語りで知識不足の私にも河内山宗俊という坊主の人物像がわかりやすく浮かんできました。
連続ドラマの1話を見終わったような内容の濃さと次のお話につながる期待感のままで仲入りでした。

仲入り後、阿久鯉さん「天保六花撰 松江侯玄関先」
この話は松鯉先生のを聴いたことがあるなと確認したら
2023年3月21日「松鯉・松麻呂親子会」(上野広小路亭)のトリで松鯉先生がかけていらっしゃったのを聴いていました。
実は、初めて聞いた時は事件の解決編の下りがきちんと理解できていなかったので今回はリベンジです。
「上野宮家の使僧道海」が面会を求めてきた。(実際はもっと違う言い方だったと思います。聴いただけだと覚えているのが難しい)
ということがどういうことなのかを丁寧に説明してくださったので状況把握。
北村大膳が槍で宗俊に詰め寄る場面は躍動的で大膳と宗俊の相対する姿がはっきりと浮かんできました。
また場面が盛り上がるにつれて張り扇の音が強くなり音が心地いいですが
ふと思ったのが、対決の場面を迎えるまでの今までの話の中で張り扇の音に気を取られることがなかったなということに気がつきました。
もちろん張り扇を鳴らしていないわけがないのでそれほど話に夢中になっていたんだなと実感。

以前聴いた松鯉先生の回では「山の印の法被」がとても印象的でしたのでまた聴いてみたいです。
何度か聴いて話を理解した上で、また聴きたくなるのが講談の魅力ですね。

阿久鯉さんが登壇された際「待ってました」の掛け声がかかったのと、二席読み終わり後の拍手喝采で阿久鯉さんの話をもっと名古屋は聞きたがっています!という観客の気持ちが届いていたら嬉しいです。

トリは、一之輔さん「居残り佐平次」
おこわの枕から「わー!居残り佐平次が聞けるんだ!」とワクワク。
一之輔さんはどっさりなどでも頻繁に名古屋にいらしていると思うんですが、今までほぼネタ被りがないくらいいろんな噺をかけてくださるので芸達者で素晴らしいな!と感嘆します。

居残り佐平次も面白かった!
一之輔さんの落語では、話の中で怒る人でも怖い怒り方をする人が少なくて
「怒る」というより「呆れて叱る」という感じ、優しい世界。
でも、ピリッとした空気が少し流れると少し顔をしかめただけでもしっかり怖い。
愛嬌のある登場人物とご本人の人相とのギャップもあるので持ち味を理解して活かしていらっしゃるのが名人だなと思いました。

今回は大須演芸場での開催で2階席も満員、座席の増設もしていたので
もし、次回があるのなら別の会場になるみたいです。
でも、大須演芸場での雰囲気がとても良かったのでまた次回も大須演芸場だと嬉しいな。
2回目からはホール開催になるのなら第1回の今回は貴重な機会になるかもしれませんね。

大須演芸場名物自販機の白くま
今回は斜めの演目の張り出しでこれまた珍しい

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