見出し画像

コンサルタントの秘密:極私的読後感(33)

ジェラルド・ワインバーグ(Gerald Marvin Weinberg)は、その洒脱な文体での著作の数々で、一部の人には非常に有名なシステムエンジニアで、心理学者だ。

「一部の人」とは、システムエンジニアのみならず、コンサルティングに関わる人、また、経営層に近い人のことで、個人的にも、IT系の管理職の方はほぼ全員、何らかの彼の著作を読んでいた。

私も、仕事の絡みで知り合ったシステムエンジニアの方から紹介してもらって読んだのが最初だ。あれは20年以上前だろうか。で、久々に手に取ってパラパラと開いてみる。

コンサルタントの第一法則
依頼主がどういおうとも、問題は必ずある。
コンサルタントの第二法則
一見どう見えようとも、それはつねに人の問題である。
コンサルタントの第三法則
料金は時間に対して支払われるのであって、解答に対して支払われるのではない、ということを忘れてはならない。
(p.4)

私はコンサルタントではない。どちらかと言えば実務家だが、「そうなんですよ~」と膝を打つような警句が次々に出てくる。「第二法則」など、まさに「そのとおりでございます」だ。

我々は、何か問題が生じたときに、得てして仕組みや機械のせいにしてしまいがちで、モノやシステムを変えることで片付けたくなるのだが、実際は、人為的、つまり「人の問題」が真因である。

よく適応すればするほど、適応力を失いがちだ。(フィッシャーの基本定理)
(p.32)

これもまさにそうだ。「過剰適応」という言葉があるが、のめり込んでしまった時に陥りがちな状況への警句だ。

エネルギーや空気や水や食物は品切れになるかもしらんが、理由ばかりは決して品切れにならんもんだぞ。
(p.69)

理由、を"言い訳"に置き換えると、とても納得する。

言葉と音楽が合っていなかったら、そこに欠けた要素がある。
(p.93)

直感的に感じた違和感は、疎かにしてはならない。

1:安い種を使ってはいけない。
2:土の準備は庭作りの秘密である。
3:タイミングがきわめて大切である。
4:一番しっかり地面に根づくのは、自分の根で育った作物である。
5:水をやりすぎると、強くならないで弱くなる。
6:最善の努力。払っても、枯れる作物は枯れる。
(p.228-229)

ツボにはまる警句(法則)は、人ぞれぞれだろう。私は「4:」だ。私の理解は、自分で積み上げてきた基礎こそが、最後の最後は一番役に立つ、と理解している。

この本は、一度通読した上で、ふと気になったり迷いがある時に読むと、とてもスッキリする。

そういう使い方(読み方)が良い一冊だ。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?