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能登國田鶴浜拝領伝~戦国一の鬼武者~

時は遡ること400年有余年…
倉部浜に並ぶ無数の首が晒されていた

孝恩寺宗顓「ここにあるわ我が長家一族郎党の首に間違いありませぬ
私と共に一族郎党の仇を討つべく
七尾城に向かいましょうぞ!」

声を枯らしながら血走った目、目の奥からは一族を殺された鬼のような殺気を放って叫ぶこの僧は孝恩寺宗顓という者である

この者こそ後に数々の戦で名を刻む長九郎左衛門連龍その人であった

連龍から安土にいる織田信長公に七尾城救援要請をし柴田勝家を筆頭に4万の織田軍が七尾城に行軍した
軍の構成は
総大将 柴田勝家
滝川一益
羽柴秀吉
丹羽長秀
斎藤利治
氏家直昌
安藤守就
不破光治
前田利家
佐々成政
原長頼
金森長近
長谷川秀一
徳山則秀
堀秀政
若狭衆

倉部浜に晒された長一族の無数の首を見つけたのはそんな行軍の最中であった

宗顓は首を見たその夜、羽柴陣営を尋ねた…
孝恩寺宗顓「羽柴殿、どうか一族の敵を取る為に私と共にこのまま七尾に行軍していただけませぬか!」

孝恩寺宗顓「羽柴殿、どうか一族の敵を取る為に私と共にこのまま七尾に行軍していただけませぬか!」

秀吉「承服しかねるのぉ…そもそも七尾城を拠点に謙信を討つというもの…その七尾城も畠山ものうなったなら〜
このまま行軍するんわ…お屋形様の命に背く事になりかねんからのぅ〜ワシじゃあ判断出来んのぉ〜
ワシャ、安土に帰るでぇ、おみゃあもとろくせゃあ事、言うとらんとチャと帰るがやぁ~」

こうして羽柴軍は安土へ帰り
孝恩寺宗顓も倉部浜に晒されていた一族の首をかき集め羽柴軍と共に一路、安土へ撤退した

その後、羽柴軍から遅れ軍の撤退が思うままに行かず柴田勝家率いる織田軍は手取川で謙信率いる上杉の強襲を受けた
世に言う手取川の戦いである
この戦いで織田軍は惨敗する
(上杉兵に翻弄されもがき苦しむ柴田勝家)
柴田勝家「うぉーあーー!撤退!撤退じゃ!」

安土に戻った羽柴軍は勝手な撤退の挽回をするべく……
秀吉「宗顓おみやぁ、ワシと共に毛利攻め手伝ってくれんきゃあ?」

宗顓「我が愛するべき妻、敬愛する父、兄…
長家一族郎党を根絶やしにした裏切り者 遊佐憎し謙信憎し憎悪ばかり増し他で功を立てたとて憎しみは晴れませぬ!」
秀吉「そういうと思ったわぁ〜笑
よーけぇ、頑張りゃ〜あよ!
又、会おまい笑」

宗顓は織田信長のいる天主へ向かった!
小姓「上様のおなーりー」
宗顓「恐れながら拙僧!一兵でも再び能登へ戻り例えたちまち骸になったとしても父、兄、一族の仇を討ちに行く事をお許しくだされませぬか!」

織田信長「うぬの突き抜けるような謙信や裏切り者達に対する強い怒りや憎しみよう分かった…
だがの、今は本願寺、武田、毛利、上杉にわしら織田軍は囲まれておる加えて中国攻めの真っ最中故に余分な兵は出せぬ
が其方一兵であれば能登へ敵討ちに行くのは許す!
これより先は北陸侵攻軍の柴田勝家を頼るが良い!
『且つ、長家復興の基を立つべくにおいては、僧体しかるべからず還俗あるべし』」(長家家譜の信長公が実際に発言した言葉から抜粋)

孝恩寺宗顓「ハッ!ありがとうございまする!」

能登に戻った宗顓は穴水にて兵を集め僅かな兵しか集まらなかったが穴水城を陥落させた
穴水城陥落後 環俗し長好連に穴水城の陥落の翌月に長九郎左衛門連龍と名を変えた
再び穴水の地に降り立った男はここから長きに渡る復讐の鬼武者となるのである
宗顓「皆の者はわし、これより長家を復興させるべく還俗し長九郎左衛門尉連龍と名乗る!」
長家復活の一筋の光が舞い降りた瞬間であった!

穴水で更に兵と船5艘、大船3艘を揃え
連龍が乗る船には昇り龍、降り龍の紋付旗が海風になびき次の戦場へ向かった

同族で謙信の直臣であった一族の裏切り者、長景連と正院川尻城で戦い長景連の勇猛果敢な戦いにより苦戦を強いられるが長連龍は長一族の仇として見事打ち取ることに成功する

が倒すべき相手はあの越後の龍、軍神、毘沙門天の化身と恐れられる上杉謙信である
事は上手く運ばない戦は一進一退を繰り返した…
それは柴田勝家が率いる援軍が駆けつけようと変わらなかった…
だが、連龍の何にも動じないこの長き戦いに光明が差し込んだ……

大事態である……
あの越後の龍、上杉謙信が急死したのである!
謙信が亡くなる事により戦況は一変……
越中、能登に侵攻滞在していた上杉全軍が越後に撤退したのである。
上杉からの支援を受けられなくなった裏切り者、遊佐と元畠山家老らは長連龍と織田軍の軍事力にあっさり屈服し七尾城城代、鯵坂長実を追放…七尾城譲渡を餌に織田につくのであった……

遊佐続光「織田様、この度は配下に加えていただき誠にありがとうございまする
これよりこの遊佐、三宅、温井共々、織田様に従います故…所領安堵の方、何卒、よろしくお願い申し上げまする笑」(いやらしい笑顔を満面に浮かべいかにもこの先、何か不都合あれば即、裏切るような商人のイメージで
気持ち悪い下衆のような思わず引くような笑うイメージとしてゲッヘェゲヘゲッヘェヘッヘッ笑の様な人に目一杯嫌がられる悪党というより小悪党程度のイメージ、冷静に見る信長役を思わず少し遠ざけるような気持ち悪さで仕草はゴマスリのように自分の上に両手を重ねてスリスリしている)
連龍「ならん!ならんぞ!お屋形様!今こそ仇討ちをお許しくだされ!某にこの者らを殺させてくだされ!」(主人を前に冷静さを少し保ちながら、刀を抜き遊佐らに立ち塞がるイメージ、目が血走るようなクッ!この野朗!と!怒り狂った感じで遊佐らににじり寄る)
信長「ならぬ!戦を早う終わらせる好機よ
連龍!ここはおれよ!」
連龍「いや!我慢なりませぬ!(刀を一気に振り上げる)」
信長「口説い!(連龍を蹴って倒す所作をする
直ぐに刀を抜いて切先を腰をついて倒れた連龍役の喉元に向ける)ワシの命が聞けぬというか!」
連龍「ここでお屋形様に斬られようと某、悲願を成し遂げたいのです!
ただ、某を斬る前に今暫し待たれ目の前にいる裏切り者らを殺した後にしてくれませぬか!」
信長「……強情な奴め………あい!わかった!
これまでのうぬの功を認め能登の一部、鹿島半郡{かしまはんごおり}をくれてやる!
それで仇討ちは無しじゃ!話はしまいじゃ!
去ね!」
連龍「うっうっ……クッ!(悔し泣きしている)有難う御座いまする……」

天正8年9月1日、長連龍は織田信長から田鶴浜を本拠地とした鹿島半郡{かしまはんごおり}を拝領し新たな能登国主、前田又左衛門利家の与力大名に取り立てられた。

その後、憎しみの消えない連龍は柴田勝家と密かに会合し……
柴田勝家「長よ、お屋形様はああは言うておられたが憎かろう……
お屋形様はワシが抑え、ワシも利家も手伝ってやる故、悲願を果たすがよい!」
連龍「有難う御座いまする!必ずや!」

長連龍、柴田勝家、前田利家が密かに遊佐らのいる七尾城麓に進軍。
ついに裏切り者、遊佐らを追い詰め遊佐の喉元に連龍の愛刀、長左文字が遊佐の嫡男、遊佐盛光を一刀元に斬り伏せると遊佐続光の喉元に向けられる。

遊佐「まぁ、待て!我ら同じ織田家臣ではないか、家臣の間で騒動を起こせば其方も無事ではすまぬぞ!」
連龍「元より覚悟の上じゃ!父も兄も遊佐!貴様を信用たる者と信頼を寄せておったのに
裏切り殺したのは何故か?!死を持って償いとせよ!」
この遊佐続光という男は長連龍の父、足利幕府奉公衆 長続連の妹婿であった続連も続光も共に足利幕府三管領の一家畠山家の重臣であり時には暗愚となった主、畠山家を国外追放することをしながら手を携え平穏に能登を治めていた………それだけにこの男が連龍にとって憎かったのである。

連龍が逃げる同じ裏切り者の三宅、温井の逃げていく様を目で追ったその瞬間、遊佐が立ち上がり刀を抜き…連龍に斬りかかった…
遊佐「こなくそ!貴様を殺してワシはどこまでも生きて甘い汁をすすってやる!
死ね!死ね!死ね…!これで長一族は完全に滅びのぅ〜!」
とっさに連龍が遊佐の刀を握る腕を斬り腹を蹴り倒す!
遊佐「ぐはっ!グッ…クッ、ゲホゲホ…
ガッ!(連龍役が遊佐役の肩を踏み切先を下に刀を上げる)あわわ…や、、やめ…」
連龍「貴様の罪を数えろ!」
遊佐「ぐぬ!」(連龍役、刀の切先を下に遊佐を刺す所作をする)
長「……」
遊佐一族は滅び、逃げた温井、三宅は本能寺の変直後に再び能登を襲うが又、それは別の話…
長連龍「能登はこれで平定した。この田鶴浜に尾張国から腕利きの建具職人を呼び安土城下に負けぬ劣らぬ海上貿易の都にして見せようぞ」
そして、その後、長連龍は能登、越中、越前の国主となった前田利家の元で加賀八家、三万三千石の家老に取り立てられる。
前田利長、前田利常の元、小田原攻め、関ヶ原の戦い、大坂城の2度の大戦、中でも真田丸の戦いでは先鋒を務め、真田信繁率いる真田軍と渡り合った…
連龍は生涯尽きるまで41回の戦に出陣し華々しい戦果を上げることになるのであった…

                           完

#創作大賞2023

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